本日(2020年11月4日)、厚生労働省で第3回「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」が午前10時から開催。議題は「テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(人材育成、人事評価、費用負担等)」「テレワークの際の労働時間管理の在り方について」、「テレワークの際の作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルスについて」他。
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」検討の視点
・今回の新型コロナウイルス感染症対策として、これまでにない規模でテレワークが実施されることとなった。今回の経験からは、働き方の観点から、テレワークの際の労働時間管理の在り方や社 内コミュニケーションの不足への対応などの課題があるところである。
・ポストコロナにおいては、労働者が働き続けられる環境を整えるためにも、時間や場所を有効に活用できるテレワークの活用が重要。とりわけ、ポストコロナにおけるテレワークの推進にあたっては、適正な労務管理下における良質なテレワークの導入・定着させていくことが重要である。
・このため、労使で十分に話しあって、使用者が適切に労務管理を行うとともに、労働者も安心して働くことのできる良質なテレワークの導入・実施を進めていくことができるよう、適切な労務管理を含め、必要な環境整備に向けた検討を進める。」(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」論点
第2回(前回)
「テレワークの対象者を選定する際の課題について」
第3回(今回)
「テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(人材育成、人事評価、費用負担等)
「テレワークの際の労働時間管理の在り方について」
「テレワークの際の作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルスについて」等
1 テレワークの実施に際しての労務管理上の課題 (人事評価)
論点 (人事評価)
・テレワークは非対面の働き方であることから、対面での働き方と比較し、労働者個々人の業務遂行状況を把握しにくいという側面がある(成果物作成に当たって非常に煩雑な調整が必要となった場合なども評価者には見えにくい。)。
・個々人の業務状況の把握のしづらさから、業務を遂行する中で発揮される理解力や調整能力、業務への取り組み姿勢 等を含めた評価が困難になる可能性がある。
・成果のみで判断してしまいやすく、人事評価を行う側にも訓練が必要という声がある。
・(出社している者とテレワークしている者が同様の成果を上げている場合について)出社している者を、出社してくれているというだけの理由で、高く評価する者がいる。 (第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
企業ヒアリングでの主な意見(人事評価)
・人事評価の影響は、在宅勤務により高くなる・低くなる等はないが、効率の低さは明らかになりやすい。(A社)
・評価されることがモチベーションにつながるが、在宅勤務ではなかなか困難であり、在宅勤務が続くと効率や生産性が低下するため、出社と在宅勤務を組みあわせて実施すべき。(A社)
・人事評価についてはプロセスが見えないので、成果で判断するしかなく、人事部としても評価訓練が求められる。(E社)
・在宅勤務における人事評価は、自律的に仕事をするように言っており、在宅でやる以上は成果がきちんと出てこないと当然給料も上がらないし、ボーナスも出せない。(F社)
・人事評価の方法はこれまでと同じ。(G社)
・人事評価については、働きぶりを見える化する必要があると考えており、コミュニケーションボードに1日の業務のToDoを書き出すようにしている。(H社)
・人事評価システムを用いつつ、四半期で数値目標、行動目標を設定、PDCAを回し、 毎月の面談を実施。この結果をもとに、半期に1度絶対評価で賃金に反映。(I社)(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
2 テレワークの実施に際しての労務管理上の課題 (費用負担)
論点(費用負担)
・テレワークを自宅で実施するためには、机や椅子、PC等の設備のほか、光熱費やWi-Fiルーターに係る通信費等が発生するが、これをどちらがどのように負担するか。
・企業側が「テレワーク手当」等を創設し、別途支給しているケースもあるが、一方で企業側がテレワークに係る費用を特段負担していない場合もある。
・サテライトオフィスやカフェ、コワーキングスペースでテレワークを実施する場合には、そこまでの移動費用や利用 料等が発生するが、これをどちらがどのように負担するか。
・「テレワーク手当」について現在実費相当分を上回る場合は課税されているが、これについて非課税化すべきではないかという声がある。(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
企業ヒアリングでの主な意見(費用負担)
・iPadの追加配布、Wi-Fiルーターの貸与などを行っている。通信費のための手当は支給していない。(A社)
・6月から9月まで全社員を対象にコロナ関連の補助手当を支給。(在宅勤務にかかる通信費や光熱費、出勤時 のマスクや消毒液分の補填。)(B社)
・4月から感染リスクが高い環境で従事する職員を対象に1日500円から1000円支給。(B社)
・テレワークについて、会社がPCおよびWi-Fiを貸与しており、それ以外の補助は実施せず(D社)
・テレワークが可能な人とそうでない人の処遇に違いが出てくることについては労働組合とも協議しており、手当等は検討中。通信費は検討中で、在宅勤務手当はないが、自宅に仕事環境が十分でない方もいるため備品のレンタルを開始。
・基本的にWi-Fiルーターの貸し出しを実施。携帯電話を提供し、テザリングを使うなど本人の負担軽減を進め ている。(E社)
・通信費については、Wi-Fi環境が家庭にあれば費用はかからないので、負担していない。環境がない人は会社 のルーターを貸し出し対応。電気代は今、月額1万円ほど手当を出している。(F社)
・椅子や机、ネットワーク環境等の働く環境整備の名目で全員一律三万円を支給した。以降在宅環境整備の費用 として月2500円支給。9月より5000円に変更している。(G社)
・テレワークの準備金やテレワーク手当を毎月支給し始めた。一時金については7月上旬に、在宅勤務の備品購 入に活用するよう支給。(購入例:ルーターの補強、イヤホンマイク、椅子の買い換え等)(H社)
・100%テレワークの社員は、定期代を支給せず、月に6000円の在宅勤務手当を支給。その他の社員は、在宅 勤務手当を支給せず、定期代を支給。(I社)(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
3 テレワークの実施に際しての労務管理上の課題 (人材育成)
論点(人材育成)
・特に新入社員、中途採用及び異動直後の社員等(以下「新入社員等」)に対して、対面でのOJTを行わずにオンラインによる方法のみで必要な研修・教育を行うことは困難であるという声がある。
・業種によっては、オンラインによるOJTも可能との声もあるが、新入社員等に対してはどのような育成方法が適切か。
・テレワークでは、対面の場合と比較してコミュニケーションが取りづらく、特に新入社員等のわからないことが多く上司や部下、同僚に色々と聞きたい状況にある者にとっては不安が大きいという声がある。
・テレワークを実施する際には、会社で作業を行う場合とは異なる新たな機器(例.トークン)や、オンライン会議ツール等を使用する場合があり、一定のITスキルを習得していることが求められることもある。
・会社の管理職層には、ITにアレルギーのある者や、相談する際には資料を紙で持ってこないとだめという考え方の者もおり、そういったことがテレワークを導入する際の障壁となっている場合もある。
・自律的に業務を遂行できる人材の育成が必要。積極的・自律的に情報収集・課題把握・課題解決が出来る者、自分で適切に時間 管理が出来る者の育成が必要。
・テレワークを実施する際に、適切な業務指示、マネジメントができる管理職の育成が必要。(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
企業ヒアリングでの主な意見(人材育成)
・新入社員に対する研修は、WEBと対面を組みあわせて実施した。(J社)
・研修は全てWebで実施するようになった。4月の研修のコンテンツはサブスクリプションサービスを 利用。(A社)
・新入社員の研修や、子会社からの出向者のケアは、テレワークの場合非常に困難。(A社)
・階層別の研修については、人数を制限した研修を再開する一方、効率の観点からWEB参加と併用。(B社)
・在宅勤務におけるマネジメント方法の教育ニーズが高いので、外部委託で9月からWEB提供できるよう手配しているところ。(B社)
・2020年度の新入社員向け集合研修は中止し、在宅での研修を実施(紙資料を送付し、オンライン は最低限)(D社)
・新入社員と中途入社の社員は不安が大きい。特に即戦力が求められている自覚のある中途入社の社員は気軽に質問しにくい、成果物が公開される環境下で小さなミスが見えてしまう等により特に不安が大きいケースがある。その他、テキストコミュニケーションでは相手の反応がわかりにくい等の不安がある。(G社)
・バーチャルオフィスでは、やり方を見せながら教える事はできないので、全ての業務はやり方がわかるように手順書を作成しており、業務の明文化が重要。属人化を防ぐこともでき、業務の見える化を整備した上で、研修やレクチャーも行っている。(H社)
・全業務がオンラインで可能であるため、オンラインの育成でもOJTという観点では問題発生していない。各業務を録画し、オンラインで見ることによって研修を実施。(I社)(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
4 テレワークの際の労働時間管理の在り方について
論点(労働時間管理)
・テレワークを実施する際には労働関係法令は出社時と同様に適用されることとなるのか。就業の場所など、労働条件の明示はどのように行う必要があるか。
・テレワークの際の労働時間の把握について、どのような方法が考えられるか。(現認、ログ管理、自己申告等)
・家庭の事情等により中抜けや、途中休憩が発生した場合についてどのように取り扱うか。
・テレワークにおける事業場外みなし労働時間制はどのような場合に適用できるのか。
・フレックスタイム制、裁量労働制、変形労働時間制など様々な労働時間制度があるが、テレワークにはどのような労働 時間制度が有効か。
・時間単位年休についてテレワークの際にどのように活用できるか。
・テレワークを実施する際は、長時間労働になりやすいというデータがある(その一方で時間外労働は減ったという声もある)。
・長時間労働を防ぐには、どのような対応が必要か。また、子育て等のニーズに対応するための深夜のテレワークについてどのように考えるか。(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
企業ヒアリングでの主な意見(労働時間管理)
・裁量労働制はとっておらず、在宅勤務をしているときは、勤務の実態に即して労働時間を申告し、パソコンのログイン・ロ グオフを参照して上司が承認。
・オンライン会議システムで、テレワークの開始とその日やることの報告、終了の報告を実施。
・パソコンのオンオフで始業時刻、終業時刻を管理し、1日の労働時間を把握しており、自己申告に15分以上乖離があると エラーが出る仕様で管理。
・労働時間は長時間傾向に変化。(A社)
・労働時間についてはコロナ以前よりPCのログで管理。中抜け時間はプルダウンで選択して差し引きした時間を申告するようにしているが、利便性が悪いという意見もある。
・フレックスタイム制は昭和63年に導入。最近、コアタイムを全廃。(B社)
・モバイルワークをする際は前日までに翌日の業務予定、終業時に当日の業務進捗報告をすることを原則としているが、フル フレックスタイム制導入により、それぞれのスケジュール、業務内容、業務進捗を共有することは必須(C社)
・労働時間の管理には、PCログと入退館データを参考データとして活用。
・テレワーク実施時は、PCログを参考データとして管理することになるが、1日の最初のログオン時刻と最後のログオフ時刻しか記録されないため、中抜け等の実態を参考データで管理することは不可。なお、特段の事情がない限り、ログオン・ログオフ以外のPCの動作状況の確認は実施せず。(D社)
・1日の労働時間は自己申告により把握している。残業がある場合は上司に報告した上で、時間外勤務を認めている。(E社)
・業務開始時や終了時刻、休憩時間などは全員一斉メールを送ることとなっている。タイムカードは持ち帰って自分で書いている。(F社)
・出社の際も、テレワーク時も1日の労働時間は自己申告にて把握することとしているが、グループウェアで労働時間・成果を確認可能。少し前までは裁量労働制をとっていたが、現在はフレックス中心に切り替わっている。(G社)
・勤怠管理については、昼休憩や中抜けも含めて打刻をすることにしており、打刻漏れがあった場合はテレワークに適さない者として、テレワークは出来ず出社しなければならないこととしている。業務終了時の業務報告も、義務としている。(I社)(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
5 テレワークの際の作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルスについて
論点(作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルス)
・自宅等でテレワークを行う場合、パソコンの配置や照明、換気などの作業環境については、事業者による管理が行き届かないことがある。
・テレワークにおいては、周囲に同僚や上司がおらず、対面の場合と比較してコミュニケーションが取りづらい場合があるため、不安を感じること等により、心身の健康に影響を与えるおそれがあり、またその変化に気づきにくい。
・「通勤」というきっかけがないため、「仕事」と「生活」の境界線を引くことが難しく、心身の健康に影響を与えるおそれがある。(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
企業ヒアリングでの主な意見(作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルス)
・事業所に併設したサテライトオフィスの他に、オフィス拠点がない場所でもサテライト勤務が可能。(B社)
・会社のイスを、モニター、キーボードと併せて、送料は会社が支払い、社員の自宅へ送った。(F社)
・産業医によるリモート相談を開始。匿名での相談が可能で、メール・スカイプ・電話など複数のツールを使用。(B社)
・福利制度の一環として、カフェテリアプランの選択肢に、在宅勤務用のモニターやWi-Fiルーター、机や椅子の購入を追加した。(B社)
・心身のケアや労働時間の管理を課題としたコミュ二ケーション方法の検討も行っているところ。(B社)
・仕事のやりとりをオンラインで行う中で、発言内容や端末の傾きから体の動きを図って活性度合いを分析するコミュニケーション活性化ツールの導入を試みている。心の様子を天気マークでわかるようにして、マネージャークラスが声かけしやすいようなツールを従業員に対して提供予定。(B社)
・出社せずに毎日在宅勤務とした場合、ロイヤルティの低下やメンタル不調等の懸念があるため、最低出社日数ルールを設定したうえで、テレワークを推進していく予定(D社)
・5月末くらいから2週間か3週間おきに全社的にアンケートを実施しており、アンケートの結果を受けて健康経営を考えているチームがストレスマネジメントに向けて動き始めている。(E社)
・椅子や机、ネットワーク環境等の働く環境整備の名目で全員一律三万円を支給した。以降在宅環境整備の費用として月 2500円支給。9月より5000円に変更している。(G社)
・労働環境については、基準は設けず、使い勝手がいいように手当を支給して個人の判断に任せた。希望者のみ、WEB会議システムによるラジオ体操を実施。(H社)
・メンタルアシストプログラムを導入し、専門の精神科医やハラスメントのホットライン、業務報告を読む中での問題察知などを行いながら労働者の健康を担保。
・年に2回全社員に対し、メンタルヘルス、健康管理に関する無記名のアンケートを行い、現状の認識と改善に勤めている。(I社)(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
*テレワークの労務管理上の課題に関する企業ヒアリングは、第2回「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」で実施。
これからのテレワークでの働き方に関する検討会
追記(2020年12月25日)
厚生労働省は「これからのテレワークでの働き方に関する検討会報告書」を公表(2020年12月25日)。
報告書では、これからのテレワークでの働き方について
・テレワークの対象者を選定する際の課題
・テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(人事評価、費用負担、人材育成)
・テレワークの場合における労働時間管理の在り方
・テレワークの際の作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルス
の対応方針等についての有識者の意見をまとめたほか、テレワークを推進するにあたって必要な今後の対応についての有識者の提言が盛り込まれている。
また、厚生労働省では、この報告書を踏まえ、今後、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」の改定が行われる予定。
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書(PDF)
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書概要(PDF)
追記:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」公表
厚生労働省は、現行のテレワークガイドライン(指針)「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(指針)に改定し、本日(2021年3月25日)公表。
テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚生労働省)
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」検討の視点
・今回の新型コロナウイルス感染症対策として、これまでにない規模でテレワークが実施されることとなった。今回の経験からは、働き方の観点から、テレワークの際の労働時間管理の在り方や社 内コミュニケーションの不足への対応などの課題があるところである。
・ポストコロナにおいては、労働者が働き続けられる環境を整えるためにも、時間や場所を有効に活用できるテレワークの活用が重要。とりわけ、ポストコロナにおけるテレワークの推進にあたっては、適正な労務管理下における良質なテレワークの導入・定着させていくことが重要である。
・このため、労使で十分に話しあって、使用者が適切に労務管理を行うとともに、労働者も安心して働くことのできる良質なテレワークの導入・実施を進めていくことができるよう、適切な労務管理を含め、必要な環境整備に向けた検討を進める。」(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」論点
第2回(前回)
「テレワークの対象者を選定する際の課題について」
第3回(今回)
「テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(人材育成、人事評価、費用負担等)
「テレワークの際の労働時間管理の在り方について」
「テレワークの際の作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルスについて」等
1 テレワークの実施に際しての労務管理上の課題 (人事評価)
論点 (人事評価)
・テレワークは非対面の働き方であることから、対面での働き方と比較し、労働者個々人の業務遂行状況を把握しにくいという側面がある(成果物作成に当たって非常に煩雑な調整が必要となった場合なども評価者には見えにくい。)。
・個々人の業務状況の把握のしづらさから、業務を遂行する中で発揮される理解力や調整能力、業務への取り組み姿勢 等を含めた評価が困難になる可能性がある。
・成果のみで判断してしまいやすく、人事評価を行う側にも訓練が必要という声がある。
・(出社している者とテレワークしている者が同様の成果を上げている場合について)出社している者を、出社してくれているというだけの理由で、高く評価する者がいる。 (第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
企業ヒアリングでの主な意見(人事評価)
・人事評価の影響は、在宅勤務により高くなる・低くなる等はないが、効率の低さは明らかになりやすい。(A社)
・評価されることがモチベーションにつながるが、在宅勤務ではなかなか困難であり、在宅勤務が続くと効率や生産性が低下するため、出社と在宅勤務を組みあわせて実施すべき。(A社)
・人事評価についてはプロセスが見えないので、成果で判断するしかなく、人事部としても評価訓練が求められる。(E社)
・在宅勤務における人事評価は、自律的に仕事をするように言っており、在宅でやる以上は成果がきちんと出てこないと当然給料も上がらないし、ボーナスも出せない。(F社)
・人事評価の方法はこれまでと同じ。(G社)
・人事評価については、働きぶりを見える化する必要があると考えており、コミュニケーションボードに1日の業務のToDoを書き出すようにしている。(H社)
・人事評価システムを用いつつ、四半期で数値目標、行動目標を設定、PDCAを回し、 毎月の面談を実施。この結果をもとに、半期に1度絶対評価で賃金に反映。(I社)(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
2 テレワークの実施に際しての労務管理上の課題 (費用負担)
論点(費用負担)
・テレワークを自宅で実施するためには、机や椅子、PC等の設備のほか、光熱費やWi-Fiルーターに係る通信費等が発生するが、これをどちらがどのように負担するか。
・企業側が「テレワーク手当」等を創設し、別途支給しているケースもあるが、一方で企業側がテレワークに係る費用を特段負担していない場合もある。
・サテライトオフィスやカフェ、コワーキングスペースでテレワークを実施する場合には、そこまでの移動費用や利用 料等が発生するが、これをどちらがどのように負担するか。
・「テレワーク手当」について現在実費相当分を上回る場合は課税されているが、これについて非課税化すべきではないかという声がある。(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
企業ヒアリングでの主な意見(費用負担)
・iPadの追加配布、Wi-Fiルーターの貸与などを行っている。通信費のための手当は支給していない。(A社)
・6月から9月まで全社員を対象にコロナ関連の補助手当を支給。(在宅勤務にかかる通信費や光熱費、出勤時 のマスクや消毒液分の補填。)(B社)
・4月から感染リスクが高い環境で従事する職員を対象に1日500円から1000円支給。(B社)
・テレワークについて、会社がPCおよびWi-Fiを貸与しており、それ以外の補助は実施せず(D社)
・テレワークが可能な人とそうでない人の処遇に違いが出てくることについては労働組合とも協議しており、手当等は検討中。通信費は検討中で、在宅勤務手当はないが、自宅に仕事環境が十分でない方もいるため備品のレンタルを開始。
・基本的にWi-Fiルーターの貸し出しを実施。携帯電話を提供し、テザリングを使うなど本人の負担軽減を進め ている。(E社)
・通信費については、Wi-Fi環境が家庭にあれば費用はかからないので、負担していない。環境がない人は会社 のルーターを貸し出し対応。電気代は今、月額1万円ほど手当を出している。(F社)
・椅子や机、ネットワーク環境等の働く環境整備の名目で全員一律三万円を支給した。以降在宅環境整備の費用 として月2500円支給。9月より5000円に変更している。(G社)
・テレワークの準備金やテレワーク手当を毎月支給し始めた。一時金については7月上旬に、在宅勤務の備品購 入に活用するよう支給。(購入例:ルーターの補強、イヤホンマイク、椅子の買い換え等)(H社)
・100%テレワークの社員は、定期代を支給せず、月に6000円の在宅勤務手当を支給。その他の社員は、在宅 勤務手当を支給せず、定期代を支給。(I社)(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
3 テレワークの実施に際しての労務管理上の課題 (人材育成)
論点(人材育成)
・特に新入社員、中途採用及び異動直後の社員等(以下「新入社員等」)に対して、対面でのOJTを行わずにオンラインによる方法のみで必要な研修・教育を行うことは困難であるという声がある。
・業種によっては、オンラインによるOJTも可能との声もあるが、新入社員等に対してはどのような育成方法が適切か。
・テレワークでは、対面の場合と比較してコミュニケーションが取りづらく、特に新入社員等のわからないことが多く上司や部下、同僚に色々と聞きたい状況にある者にとっては不安が大きいという声がある。
・テレワークを実施する際には、会社で作業を行う場合とは異なる新たな機器(例.トークン)や、オンライン会議ツール等を使用する場合があり、一定のITスキルを習得していることが求められることもある。
・会社の管理職層には、ITにアレルギーのある者や、相談する際には資料を紙で持ってこないとだめという考え方の者もおり、そういったことがテレワークを導入する際の障壁となっている場合もある。
・自律的に業務を遂行できる人材の育成が必要。積極的・自律的に情報収集・課題把握・課題解決が出来る者、自分で適切に時間 管理が出来る者の育成が必要。
・テレワークを実施する際に、適切な業務指示、マネジメントができる管理職の育成が必要。(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
企業ヒアリングでの主な意見(人材育成)
・新入社員に対する研修は、WEBと対面を組みあわせて実施した。(J社)
・研修は全てWebで実施するようになった。4月の研修のコンテンツはサブスクリプションサービスを 利用。(A社)
・新入社員の研修や、子会社からの出向者のケアは、テレワークの場合非常に困難。(A社)
・階層別の研修については、人数を制限した研修を再開する一方、効率の観点からWEB参加と併用。(B社)
・在宅勤務におけるマネジメント方法の教育ニーズが高いので、外部委託で9月からWEB提供できるよう手配しているところ。(B社)
・2020年度の新入社員向け集合研修は中止し、在宅での研修を実施(紙資料を送付し、オンライン は最低限)(D社)
・新入社員と中途入社の社員は不安が大きい。特に即戦力が求められている自覚のある中途入社の社員は気軽に質問しにくい、成果物が公開される環境下で小さなミスが見えてしまう等により特に不安が大きいケースがある。その他、テキストコミュニケーションでは相手の反応がわかりにくい等の不安がある。(G社)
・バーチャルオフィスでは、やり方を見せながら教える事はできないので、全ての業務はやり方がわかるように手順書を作成しており、業務の明文化が重要。属人化を防ぐこともでき、業務の見える化を整備した上で、研修やレクチャーも行っている。(H社)
・全業務がオンラインで可能であるため、オンラインの育成でもOJTという観点では問題発生していない。各業務を録画し、オンラインで見ることによって研修を実施。(I社)(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
4 テレワークの際の労働時間管理の在り方について
論点(労働時間管理)
・テレワークを実施する際には労働関係法令は出社時と同様に適用されることとなるのか。就業の場所など、労働条件の明示はどのように行う必要があるか。
・テレワークの際の労働時間の把握について、どのような方法が考えられるか。(現認、ログ管理、自己申告等)
・家庭の事情等により中抜けや、途中休憩が発生した場合についてどのように取り扱うか。
・テレワークにおける事業場外みなし労働時間制はどのような場合に適用できるのか。
・フレックスタイム制、裁量労働制、変形労働時間制など様々な労働時間制度があるが、テレワークにはどのような労働 時間制度が有効か。
・時間単位年休についてテレワークの際にどのように活用できるか。
・テレワークを実施する際は、長時間労働になりやすいというデータがある(その一方で時間外労働は減ったという声もある)。
・長時間労働を防ぐには、どのような対応が必要か。また、子育て等のニーズに対応するための深夜のテレワークについてどのように考えるか。(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
企業ヒアリングでの主な意見(労働時間管理)
・裁量労働制はとっておらず、在宅勤務をしているときは、勤務の実態に即して労働時間を申告し、パソコンのログイン・ロ グオフを参照して上司が承認。
・オンライン会議システムで、テレワークの開始とその日やることの報告、終了の報告を実施。
・パソコンのオンオフで始業時刻、終業時刻を管理し、1日の労働時間を把握しており、自己申告に15分以上乖離があると エラーが出る仕様で管理。
・労働時間は長時間傾向に変化。(A社)
・労働時間についてはコロナ以前よりPCのログで管理。中抜け時間はプルダウンで選択して差し引きした時間を申告するようにしているが、利便性が悪いという意見もある。
・フレックスタイム制は昭和63年に導入。最近、コアタイムを全廃。(B社)
・モバイルワークをする際は前日までに翌日の業務予定、終業時に当日の業務進捗報告をすることを原則としているが、フル フレックスタイム制導入により、それぞれのスケジュール、業務内容、業務進捗を共有することは必須(C社)
・労働時間の管理には、PCログと入退館データを参考データとして活用。
・テレワーク実施時は、PCログを参考データとして管理することになるが、1日の最初のログオン時刻と最後のログオフ時刻しか記録されないため、中抜け等の実態を参考データで管理することは不可。なお、特段の事情がない限り、ログオン・ログオフ以外のPCの動作状況の確認は実施せず。(D社)
・1日の労働時間は自己申告により把握している。残業がある場合は上司に報告した上で、時間外勤務を認めている。(E社)
・業務開始時や終了時刻、休憩時間などは全員一斉メールを送ることとなっている。タイムカードは持ち帰って自分で書いている。(F社)
・出社の際も、テレワーク時も1日の労働時間は自己申告にて把握することとしているが、グループウェアで労働時間・成果を確認可能。少し前までは裁量労働制をとっていたが、現在はフレックス中心に切り替わっている。(G社)
・勤怠管理については、昼休憩や中抜けも含めて打刻をすることにしており、打刻漏れがあった場合はテレワークに適さない者として、テレワークは出来ず出社しなければならないこととしている。業務終了時の業務報告も、義務としている。(I社)(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
5 テレワークの際の作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルスについて
論点(作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルス)
・自宅等でテレワークを行う場合、パソコンの配置や照明、換気などの作業環境については、事業者による管理が行き届かないことがある。
・テレワークにおいては、周囲に同僚や上司がおらず、対面の場合と比較してコミュニケーションが取りづらい場合があるため、不安を感じること等により、心身の健康に影響を与えるおそれがあり、またその変化に気づきにくい。
・「通勤」というきっかけがないため、「仕事」と「生活」の境界線を引くことが難しく、心身の健康に影響を与えるおそれがある。(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
企業ヒアリングでの主な意見(作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルス)
・事業所に併設したサテライトオフィスの他に、オフィス拠点がない場所でもサテライト勤務が可能。(B社)
・会社のイスを、モニター、キーボードと併せて、送料は会社が支払い、社員の自宅へ送った。(F社)
・産業医によるリモート相談を開始。匿名での相談が可能で、メール・スカイプ・電話など複数のツールを使用。(B社)
・福利制度の一環として、カフェテリアプランの選択肢に、在宅勤務用のモニターやWi-Fiルーター、机や椅子の購入を追加した。(B社)
・心身のケアや労働時間の管理を課題としたコミュ二ケーション方法の検討も行っているところ。(B社)
・仕事のやりとりをオンラインで行う中で、発言内容や端末の傾きから体の動きを図って活性度合いを分析するコミュニケーション活性化ツールの導入を試みている。心の様子を天気マークでわかるようにして、マネージャークラスが声かけしやすいようなツールを従業員に対して提供予定。(B社)
・出社せずに毎日在宅勤務とした場合、ロイヤルティの低下やメンタル不調等の懸念があるため、最低出社日数ルールを設定したうえで、テレワークを推進していく予定(D社)
・5月末くらいから2週間か3週間おきに全社的にアンケートを実施しており、アンケートの結果を受けて健康経営を考えているチームがストレスマネジメントに向けて動き始めている。(E社)
・椅子や机、ネットワーク環境等の働く環境整備の名目で全員一律三万円を支給した。以降在宅環境整備の費用として月 2500円支給。9月より5000円に変更している。(G社)
・労働環境については、基準は設けず、使い勝手がいいように手当を支給して個人の判断に任せた。希望者のみ、WEB会議システムによるラジオ体操を実施。(H社)
・メンタルアシストプログラムを導入し、専門の精神科医やハラスメントのホットライン、業務報告を読む中での問題察知などを行いながら労働者の健康を担保。
・年に2回全社員に対し、メンタルヘルス、健康管理に関する無記名のアンケートを行い、現状の認識と改善に勤めている。(I社)(第3回検討会資料1「第3回 これからのテレワークでの働き方に関する検討会 主な論点」抜粋)
*テレワークの労務管理上の課題に関する企業ヒアリングは、第2回「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」で実施。
これからのテレワークでの働き方に関する検討会
追記(2020年12月25日)
厚生労働省は「これからのテレワークでの働き方に関する検討会報告書」を公表(2020年12月25日)。
報告書では、これからのテレワークでの働き方について
・テレワークの対象者を選定する際の課題
・テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(人事評価、費用負担、人材育成)
・テレワークの場合における労働時間管理の在り方
・テレワークの際の作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルス
の対応方針等についての有識者の意見をまとめたほか、テレワークを推進するにあたって必要な今後の対応についての有識者の提言が盛り込まれている。
また、厚生労働省では、この報告書を踏まえ、今後、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」の改定が行われる予定。
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書(PDF)
「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」報告書概要(PDF)
追記:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」公表
厚生労働省は、現行のテレワークガイドライン(指針)「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(指針)に改定し、本日(2021年3月25日)公表。
テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚生労働省)