ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

花の生涯 梅蘭芳

2009-10-22 18:41:55 | Weblog
今日は、東京・中国映画週間で、陳凱歌監督の作品「花の生涯 梅蘭芳」を観た。

梅蘭芳は、中国の京劇を代表する役者さん。
たぶん中国人で梅蘭芳を知らない人はいないだろう。
これは、その生涯を描いた作品。

陳凱歌監督の映画は、いつもどの作品を観ても、知らないうちに、その世界に没入している。
頭で考える必要などない。すんなりと実際にその場にいるような気持ちになる。
本当に優れた映画を撮る監督さんだと思うのだけど、
どこが、これほど傑出しているのか、と、いつも思う。

「花の生涯 梅蘭芳」は、途中少しモッサリした印象を受けるものの、やはり面白かった。
ただ、
・西太后は京劇が大好きだった。
・梅蘭芳は男性だけど、京劇の舞台の上では女性を演じている。
・上海には昔、疎開があった。
というようなことに馴染みがない人にとっては、「これはなんだ?」と思うことが多くて、
やはり付いて行きづらいと感じる作品かもしれない。
とはいえ、このタイトルで「観に行こう」と思うような人なら、ほとんど問題はないのだろう。
よけいな説明などはなくて、スッと人物描写に入り、
たくさんいる登場人物それぞれについて、その個性を十分に伝えている表現は、本当に素晴らしかった。

帰りの電車の中で、いろいろなことが心に浮かんだ。
映画にはいろいろな魅力があるけれども、私が一番おもしろいと思うのは、やはり人物描写。
人の顔を見るとき、一番注目するのは、その人の目。次に口元。
役者さんの演技の大半も、この2つのパーツの表現がポイントになっている。

例えば、すごいCG映像があっても、
まだ人の表情の表現は、人間のもつ表現力に達していない。
ゲームなどに使われているCGは、どんどんレベルが上がって来ているけれども、
2時間以上に及ぶ人物描写をCGだけで、
生身の人間のようなリアリティで描いて持たせることは、まだ無理だろう。
もちろんアニメの手法を使えば可能なのだけど。

そして、この映画の場合、作中に京劇という舞台が入っている。
舞台は、観客に役者の表情までをつぶさに見せることが難しいので、
ポーズや衣装などの「きまりごと」があり、
そこに「声や歌」「身のこなし」という表現力が加わる。

見せ方が映画とは違う舞台というものを、どのようにスクリーンで見せるか。
ここには、カット割りやカメラアングルなど、独特の計算が必要なのだろうと思う。
よく、舞台をそのままテレビで流していることがあるけれど、
そんなとき私は、いっそのこと音だけを聞きたいと思う。

アニメと舞台の主な違いは、どこだろう。
表現が記号化されている、という切り口で考えたら、どんな共通点があるだろう。
などと考えて、結構楽しかった。

そして、梅蘭芳のお師匠さんが、「定軍山」を演じるシーンが少しだけあったのだけど、
「ああ~、夏侯淵かあ、懐かしいなあ」と、知り合いではないのに、感慨に耽ったりと、
とても楽しい時間を過ごした。

映画は、観た後の時間が楽しい。


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