今日は白賢者くん(通称ハク)のことを書こうと思う。
このごろのハクは、お腹が減ったらご飯の入れ物を鼻で小突いて音をたてて要求する。ハクの見えないところで冷蔵庫を開けて、餌袋の音が聞こえたら要求吠えを始める。他のものの出し入れだと吠えない。どうしてわかるのかといつも思う。
書き始めたら、ハクを引き取った時のことを思い出す。一度ここで紹介したことも書くので、読まれた方はだぶっているかもしれいけれどお許しを。
彼を最初に見かけたのは、当時のアルバイト先・某リゾートホテルの通勤途上で、2月の始めだったように思う。山の中をウロウロしていた。最初見た時は「ひとりでお散歩」しているのだと思っていたが、毎日見るようになり、どうも脱走か捨てられたかどちらかだと思うようになった。時には、山の下で他のワンコと遊んでいたりもしたので、飼い犬が一人で散歩していたのかと思ったりもした。でもそうではなかったようで、真っ白でキレイだったワンコは、日に日に薄汚れていった。誰かに拾ってもらえたらいいのになーと思いながら、通勤途上でそのワンコを見ない日は誰かにもらわれたのか、事故にあったのかと想像する日々を過ごした。積雪もあり、寒いのにどうしてるんだろうと思ったこともあった。
数日見なかったので「ああ誰かに拾ってもらったのかな」と良いように考えていたが、また見るようになり、とうとう山の上のリゾートホテルまでやってきた。
私がトイレから出てきた時(外のトイレ)、彼が、男子トイレから出てきたのがほぼ同時だった。なんだかその出会いは笑えるのだが、きっと水を飲みに入ったのではないかと推測した。この時に、彼を初めて身近で見た。
彼は、かなり汚れていた。その時は雨が降っていたから傘を持っていたのだが、傘をさそうとする私を見て、怯える様子を見せた。きっと傘や棒で殴られたことがあるのだろうと思った。私は周囲に誰もいないことをよいことに、彼に話しかけた。「こわないで。誰かええ人にもろてもらえますように」とワンコに手を合わせた。
しかしホテルという客商売上、すぐに保健所に通報され、翌日には犬収容車がやってきた。
収容されるところを見なければ、ひょっとしたらそれで終わっていたかもしれない。でも気になって気になって。一旦収容車に乗せられたワンコをそのまま見過ごすと、きっと一生後悔するだろうと思いながらも、家には凛太郎がいるし、経済的にもゆとりがないけど、数分で引き取ることを決意した。自分が後悔と道連れで生きるのがイヤだっただけなのだけど。
檻を収容車から降ろしてもらい、上の蓋を開けてもらって抱きあげることにした。収容車の係の人は何やら不安気に見ていた。噛まれないかと心配してくれていたのかもしれない。私は何も思わず抱き上げた。ものすごく大人しかった。係の人も安堵と驚きの表情だった。
その日のことは忘れられない。引き取ることを決め、抱いてやったら臭い。服にまでニオイが数秒で染み付いたほど臭かった。
抱いてから、下におろしたら、すぐにお腹を見せてくれた。お腹を見せるのが服従の印で、どうかボクに暴力を振るわないでといっているような感じがした。「大丈夫やで、おばちゃんが飼ってあげるからな」と言ってやった。
まだ勤務中だったので、帰るまで車で待たせることにし、私が車を開けた途端に逃げ出したらマズイと考え、ゆったりロープを結んで、車から飛び出ても逃げられないようにしておいた。あまりに汚いので、当時乗っていた軽(箱バス)の後部に段ボールを敷き、缶に水を入れて乗せておいた。しかし、車に戻った時、彼はロープを噛みちぎって、後部座席、助手席、運転席全部の座り心地を試したようだ。
今度は後部座席に座らせ、山道を降りて、警察署に行ったのだが、乗車中はお座りの姿勢で、首を伸ばし大人しく外の景色を眺めていたので、今までも車に乗ったことがあるのだろうと思っていたのだが、彼はだんだんと車酔いをしつつあったようだ。
警察署に拾得物の届けを出し、次に動物のお医者さんに健康診断をしにいった。何かビョーキを持っていて、凛太郎に感染したら一大事だから。それに飼うと決めたからには、きっちりしてやりたい。
動物病院の診察台の上に乗せたら、ダニがボロボロと落ちてきた。恐ろしい光景だった。すぐさまフロントラインを塗布され、お尻に体温計を入れられたら、お尻を突き出し、前足を伸ばしたまま動かない。ヨダレも出している。
その時にやっと「車酔い」ということがわかった(お医者さん判断)
健康状態は悪くはなかったが、命にかかわる回虫がいることがわかり、お薬も処方された。
帰りに餌入れや首輪を買ったら20,000円ほどの出費だった。
帰ってから、凛太郎が吠えたこと吠えたこと。数日吠え続け声を枯らしたのが、また面白かった。ニンゲンがカラオケで歌いすぎて声枯れしているのと同じようなハスキーボイスになっていた。
凛太郎もダニがうつるといけない、車にも多数落ちているということで、帰ってからすぐにフロントラインを塗布。
そして、餌をやる時に、試しにお座りと言ってみた、
この時、ハクを凛太郎用のケージに入れ(凛太郎のケージではあるが、凛太郎は家の中オールフリー)、凛太郎はケージの外で、同時に餌をやるということを試した。
すると、ハクはお座りができた。
私はハクは捨てられたか、脱走する前に「お座り」は教えてもらっていたのだと思ったのだが、どうもそれは違ったようだった。
(明日に続く)