釣れなくて当たり前の釣りなのだが、長良川でサツキマスを狙っているとき、あまりにもマスに縁遠い感じがすると気分転換に益田川へ釣行する。
では益田川で大きなアマゴを狙っているとき、あまりにも大物に縁遠い感じがしたら・・・
そんなときは高原川に行くのだ。
梅雨明け以降は益田川本流の水温は上昇し鮎釣りも盛んになる。
アマゴを狙うには早朝の短時間だけの勝負という厳しい状況となる。
その後に小坂川で竿を出せばよいことなのだが、いくらスケールの大きな川とは言えやはり小坂は益田の支流。
調子に乗って立て続けに釣ってしまうとその後は暫く渋くなることが多い。
益田も小坂も9月に入ってからも楽しめるし、真夏の厳しい状況の中で釣り場を荒らすよりはそこそこ竿を出す程度にとどめておいた方がよい。
そのような考えで、例年7月になると僕は奥飛騨の高原川への釣行がメインとなる。
禁漁になる9月9日まで、同じ岐阜県内でありながら自宅から片道200km近くの距離がある高原川にほぼ毎週末通う。
しかしながら僕にとっては残念なことに、高原川は本来はヤマメの水系である。
どのような理由なのか定かではないが時折アマゴも釣れるが、やはり本来生息しているヤマメの方が圧倒的に多く釣れる。
渓流釣りを始めて2~3年は、いつもアマゴばかり釣っていたので「一度ヤマメを釣ってみたい」と思ったものだ。
しかし、ここ何年かは「どちらかと言えば」という程度ではなく、はっきりと「僕はアマゴの方が好きだ。アマゴを釣りたい」と思う。
見た目の朱点の有無や生活史の違いではなく、実釣でアマゴとヤマメの違いが分かるのかと問われても、僕には分からない。
だから特に釣り方を変えているわけでもない。
魚が掛かったとき、ニジマスやイワナなら「ああ、こりゃニジマスだな」とか「こりゃイワナやろう」と推測できるが、引き方でアマゴとヤマメを区別することも勿論出来ない。
それでもやっぱり僕はアマゴの方が好きだ。
なんだそれだけかよと言われそうなのだが、やはりあの朱点が好きだ。
最初は邪魔に思えたアマゴの朱点だが、今は朱点がないと、つまりヤマメを釣りあげた時には物足りなさを感じる
ヤマメの姿を見る度に「やっぱり朱点があった方がいいなあ」と少し残念になる。
とは言え、高原川は全国的にも有名な大物が獲れる水系。
僕も過去に39cmのヤマメを獲った。
あと1cmで40cmという凄く惜しい魚だったが、さすがにそのサイズになると簡単には食ってこないが、普通に尺上のヤマメが獲れる。
僕が週末に釣行可能な距離で、盛夏の厳しい水況の中で大物が獲れる確率の高いのが高原川なのだ。
2014年6月28日。
およそ一年ぶりに高原川へ釣行した。
現地到着は午前3時を少し回った頃。
ここで眠ってしまっては絶対にそのまま朝寝してしまうと思い、そのまま夜明けを待った。
空がまだ白み始める前、周囲の景色が仄かに見え始めた頃に川に降り立った。
薄暗い中に浮かぶ高原川の水は、予想以上に低水位だった。
かなり厳しい釣りになるなと覚悟を決めて目印が見えるようになるまでそのまま待機していた。
前回の益田川釣行で破断してしまった琥珀本流エアマスター。
破断した6番の節はすぐに注文したので今日の釣行には間に合ったのだが、その後7番にもひびが入っているのを発見した。
注文はしたものの今日の釣行には間に合わず、エアマスターのサブとして用意していた「琥珀本流 ハイパードリフトスーパーヤマメ95MR」で釣りを開始した。
実はこの竿も4月後半に折れていた。
初めて掛かった魚のアタリがあった際に合わせたら折れたのだ。
しかも元上と更にもうひとつ上の合計2節も。
運の無い竿だと思い、再生させようかどうか迷っていたのだが、エアマスターが戦線離脱した今、もうこの際だからすべて直しておこうと思い、折れた節を注文しておいた。
本来ならば高原川のような川幅のあるフィールドでこそ10mというエアマスターの長尺が利いてくる。
しかし、この日の高原川はかなりの低水位。
9.5mのHDスーパーヤマメでも充分に対応できた。
果たしてHDスーパーヤマメで高原川のスーパーヤマメを獲れるだろうかと、不安と僅かな期待を抱きながら竿を振り続けたが、いつぞやの益田川のように釣れども釣れどもウグイばかり。
しかもかなり元気なご様子で首を振ったりローリングにも似た動きをするので何度も本命のヤマメと間違えさせられた。
過去にもこんな日はあったのだが、ウグイばかり釣れてくる日というのは殆どの場合ヤマメの食いは究極に渋い。
もうそろそろ諦めてクルマに戻りひと眠りしようかと思っていたところに20cmを少し超えるくらいのヤマメを釣った。
取り敢えず目的の魚種を釣ったからもういい、眠い、粘っても状況は変わらんやろと思い、1匹釣った後はクルマに戻りそのまま座席を倒して眠った。
目覚めたのは昼前。
もう一度同じポイントに入ろうかと少し迷ったが、あのウグイたちの様子を思い出し徒労に終わるだけと判断し、クルマを上流に向けた。
かなりの渇水だったので、少しでも水のあるところ、水深のあるところをと思い某堰堤下に入川した。
渇水状況の中でもここはまだ良さそうだなと思ったのだが、期待通りに行かずやはりウグイばかり。
もう今日はヤマメは釣れんかなあと思っていた時に、竿先にコツンという微かなアタリのようなものを感じた。
「ん!?触ったのか?食ってはいないよな?」と神経を集中させたがそれっきり何事も起こらず、目印も流れに乗ってそのまま動いて行ったため、「残念、見切られたか・・・」と思い、流し切ったところで竿を上げたら掛かっていた。
岩場の上から竿を出していたので水中の魚の動きがよく見えたのだが、ギラギラッと翻した魚体は尺近くありそうだった。
竿を矯めながら岩から降りて岸辺に立っていなしたが、魚は結構抵抗しているにもかかわらず難なく寄ってきた。
まだ梅雨も明けていないというのに、淡く婚姻色が浮かんだ雌の尺ヤマメだった。
琥珀本流ハイパードリフトスーパーヤマメ95MR・・・エアマスターよりパワーはあるだろうと思っていたが果たしてその通りだった。
尺クラスの魚だと面白味がないくらい簡単に寄ってきた。
大物狙いの僕としてはパワーがあるのはありがたいのだが、もうちょっと楽しませて欲しいなあと贅沢なことを思ってしまう。
でもやはり価格帯が違うということは使用しているカーボンの質も異なるのだろう。
感度という点ではエアマスターには到底及ばない。
エアマスターより50cm短くて6g軽いのに振り込み時も構えた時も重く感じるのが凄く気になっていたのだが、それはこの日の釣行でかなり慣れてきた。
もしかして折れた元上とその上の節が悪さをしていたのかと思えてしまうくらいだ。
この後も周辺を探ってみたが、やはり変わらずウグイばかり。
そろそろ見切りをつけて移動しようと考えたが、その前にこの辺りのチャラ瀬で川虫を捕っておこうと石をひっくり返してみたが殆ど捕れなかった。
餌に出来ないような小さなヒラタはいるのだが、クロカワは全く見当たらない。
仕方なくそのまま川から上がって、大きく下流へ移動することにした。
鮎釣りが始まると思うように入川出来ない神岡の市街地周辺に入川したが、釣りを始めようとしたときに北陸電力のクルマが近付いてきた。
「もうすぐダムから放水します。大きく水が増えることはないと思いますが、念のため中州とか対岸には行かないでください。」と。
あと何分ぐらいで放水が始まるのかと尋ねると、予定では17時だと言われた。
時間にして約1時間。
「放水前にサイレンは鳴りますよね? 僕は正直なところ川が怖いので滅多に渡らないし深く立ち込むこともしないですし、サイレンが鳴ったらすぐに上がりますけど、それまでは目一杯釣りをしたいので・・・」
「勿論サイレンは鳴ります。」
その言葉を担保に17時まで目一杯釣りをすることにした。
ただし、丁寧に探っている余裕はない。
ここぞという流れや筋を狙い打つようにしないと無駄に時間を過ごすことになる。
その作戦を実行していったのだが、この辺り下流域でもウグイたちは跋扈しているご様子。
凄い手応えでガンガン竿を叩くように引いたため絶対に尺はあるヤマメだと思い丁寧に遣り取りしていたら突然バテテ寄ってきた40cm近い巨ウグイ。
さすがにその大きさになると網を使って掬わねば仕掛けが切れる。
ウグイを掬ったあとの網の残り香を思うと気が進まなかったが仕方がない。
その後は30cmに満たないニジマスと20cmそこそこのヤマメを1匹ずつ釣ったが、尺クラスのヤマメは現れず、時刻は17時となった。
放水開始後、この辺りに水が到達するには多少の時間がかかるだろうし、仮に水が増えてもこの場所なら安全という場所で竿を出せるところがあり、予め目星を付けておいた。
川から上がる直前にその場所で流すと、突如餌を引っ手繰って下流に猛スピードで走る魚が掛かった。
岸伝いに僕も降っていくが何しろ相当押しの強い流れだったため相手はなかなか止まってくれない。
手元に伝わる重みもかなりのもので、水勢の分を差し引いたとしても相当デカイのではと期待したのだが・・・
尺に満たない普通のヤマメだった。
体長は27cm。
見たところ居残りの放流魚のようにも見えたが、あれだけ引いてくれれば何もいうことはない。
充分に楽しませてもらった。
というか寧ろいいように遊ばれてしまった感じだった。
この魚と対峙した時も、これ以上岸を降っていけないというところで思いっきり竿を絞ったが、HDスーパーヤマメはまだ余裕がありそうだった。
高原川にはかなり大きなニジマスも居るのだが、そういうのが掛かったら切れてもいい、40cmを少し超える程度までのヤマメを獲れればいいと思い、仕掛けもそれなりのものにしてきたのだが、もしかしたらもう少し太い仕掛けにしたら50cmくらいまでのニジマスなら獲れる竿かも知れない。
そんなことを考えながら、この日の釣りは終了とした。
次回は、HDスパーヤマメにもう少し太い糸を張ってみよう。
当日のタックル
竿:ダイワ 琥珀本流ハイパードリフトスーパーヤマメ95MR
水中糸:ナイロン0.6号
ハリス:フロロ0.5号
鈎:オーナー スーパーヤマメ7.5号
餌:ミミズ