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奇皇后-ふたつの愛 涙の誓い- 第42話 刻まれた溝

2020-08-14 21:20:00 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ
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※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります
 
 第42話 刻まれた溝 

慌てて蓋を閉じ 早く中へ!と目配せするタファン
キ・ヤンはそれを無視し 勢いよく蓋を開けた!
びっしりと詰まった金塊を見た皇太后は思わず息をのむ

宮中へ納品する独占権を得たヨンビスが 陛下へのお礼として運ぶものだとの説明に
誰が信じるか!と声を荒げる皇太后
そして有無を言わせず すべての箱を開けるよう命じていく!

しかし 先頭の箱以外はすべてが装飾品と絹織物 宝飾品などであった
万が一に備え 金塊は一日にひと箱だけ運ばせるという キ・ヤンの指示であった

皇帝タファンは 最近のキ・ヤンに不信感を抱き始めていた
目つきや表情 振舞いのすべてに違和感を感じる
不確かだが 何か自分との間に溝ができたと思えてならぬのだ

『あの者が遠くに感じてならぬ』

侍従コルタが あの方は昔も今も遠くにおられたという
これまで あまりに夢中で 陛下が気づかなかっただけだと…

『だが あの者のおかげで今の私がいる』

『ですが! 陛下を傷つけることも多くありました! あの方を信じ過ぎてはなりません!
ただ言いなりになるだけでは 真の意味でヤン様を得ることは出来ぬのです
強き皇帝として あの方を支配するべきです! たかが側室に侮られ…』

『何と申した! たかがだと?!!!』

『死罪覚悟で諫言いたします!』
『黙れ!! たとえ傷けられようと私はヤンを手放さぬ!
ヤンを侮辱する者は たとえそちでも許さぬ!!!』

貴妃キ・ヤンは 皇帝タファンにすべてを打ち明けようと考えていた
陛下に知られたらすべて征服戦争の資金になってしまうというブルファ

しかし まだ何も知らないタファンは それでも征服戦争をする意志を固める
国中で飢饉が続き疫病まで流行る状況下 戦する余力などないと反対が起こる

『丞相 臣下が皇帝の命令に従おうとしない どうすべきか?』
『それはまさに反逆! この場で逆賊の首を斬るべきでは?』

タファンは 丞相ペガンに命じ 命令書を読み上げさせた
偉大な先祖の栄華を取り戻すべく 自ら剣を取り軍馬を駆る
各行省は2万ずつ兵を出し 総じて20万の大軍を作れと!

雲南 嶺北 四川 陝西の各行省には 硫黄 硝石 鉄 銅 錫の供出を
他の行省らには兵糧を調達するよう 命令が下された

さらには高麗(コリョ)にも 1万の兵と軍馬2,000に加え兵糧の供出が求められた

『後の戦利品は民と皆に分け与える
なお 征服戦争の総指揮官の任は丞相ペガンに!
丞相の命令はすべて私の命令と同じである!』

これに反論する行省は一人もいなかった
反論すれば逆賊とみなされ この場で処刑すると言うのだから無理もない
丞相ヨンチョルのもとで傀儡でしかなかった皇帝は
新たな丞相と手を取り まさに独裁し力を鼓舞しようとしている

ヨンチョルに取って代わったかのようなペガンに タルタルが苦言を呈する
今は内政を整えるべき大事な時
軍事優先の現状を改め 科挙を復活し 文官を登用し…

すべて言い終わらぬうち ペガンの怒号が響く
一切の諫言を聞くつもりはなく かつて口にした志は微塵も感じられない
そこへ貴妃キ・ヤンが現れ タルタルは無言で退室した

『かつてその席は ヨンチョルのものでした 今のあなたはヨンチョルそのもの』

『ヨンチョルは私利私欲の限りを尽くした だが私には夢がある!
帝国に再び威厳を取り戻し 陛下に捧げるのだ!』

『ただ歴史に名を刻みたいのでは? そのために征服戦争を?
陛下を操り 無益な戦を始めるので?
それでも私欲はないと? ならば何をもって“私欲”というのですか?』

戦の過酷さが“高麗(コリョ)の女”ごときに理解できるものかと毒づくペガン
だから皇后になることに反対したのだと…!

『では 戦に賛成すれば私にも皇后の資格が?』
『あなた様は私にとって大事なお方だ しかし国のためなら“些細な感情”など捨てられる!
今後も変わらずあなた様をお守りできるよう “欲”はお捨てに…!』

一方 タンギセとヨム・ビョンスは メバクの頭の命令で蓮覚寺に潜伏していた
命令により動かされながらも メバクの頭の正体は未だ不明だ
タンギセが得た手掛かりによれば メバクの頭は“宮中にいる”というが…

宮中にいるなら 将軍だったタンギセとも面識があるはず
ビョンスとチョチャムは 心強い味方を得たと喜ぶ

厠に行こうとして ヨム・ビョンスは暗闇の向こうに不審な人影を見る
それは パン・シヌらを従えたワン・ユだった…!
物陰に隠れ様子を窺うと しばらくして出てきたのはキ・ヤンだった!

キ・ヤンは 皇帝の征服戦争の意思を止めることが出来ないという
止められないなら利用すべきだと答えるワン・ユ

『私は明朝高麗(コリョ)に戻りますが パン内官とチョンバギは残ります
ヨンビスやマクセンと共に 新たな商団を立ち上げるのです』

2人が密会していると知り いきり立つタンギセ
しかし今は 2人の前に出ることは出来ない
傷を負い追われる身では ただ斬り殺されるだけである
するとヨム・ビョンスが 自分に妙案があるとほくそ笑む…!

貴妃キ・ヤンはタファンに会い 戦を思いとどまるようにと進言する
飢饉と流行り病に苦しみ続けた民が 征服戦争をすると知れば怒り狂う
その恨みのすべては 皇帝に向けられるのだと諭すが…

タファンは “韓非子の逆鱗”を持ち出し反論する
“逆鱗”とは龍の下顎に 一枚だけ逆さに生える鱗のことである
普段は穏やかで背中にも乗れる龍だが 逆鱗に触れた途端怒り狂う

『そなたの復讐のため いくら私を利用しようが構わない
この背に乗り自由に羽ばたくがよい しかし触れてはならぬものもある』

きつく抱きしめたところで もはやキ・ヤンの心はつかめない
タファンはそれを知りつつ抱きしめずにはいられなかった
2人の間に授かった皇子アユルシリダラのためにも…

今の皇帝には何を言っても受け入れてもらえない
キ・ヤンは 各行省たちに会い 皇帝の命令を修正していく
すべてはタファンのためだと いつかは分かってもらえると信じて…

雲南行省は硫黄を 嶺北行省は硝石を それぞれ割り当てられている
いずれも火薬を作るために必要なものである

『各行省は 兵と兵糧以外の物は量を控えるように 不足分はある商団に任せます』

キ・ヤンの合図で ヨンビスとパン・シヌが入室する
この商団が 各行省から鉱物を買い入れ 軍に対し高値で売りさばくという
この差額が各行省の利益になることで 民も潤うことになる
戦を商売にするなど 前代未聞の考えに長官たちは目を丸くする

『事が知れたら 関わった者たちの首が飛びますぞ!』
『戦であれ何であれ 事を成すからには命を懸けねば
これは私欲を満たすためでなく 民を救う策だということを肝に銘じてください』

居室へ戻る途中 尚宮に抱かれたマハ皇子に遭遇する
まるで抱かれたいかのように むずかりながら両手を差し伸べるマハ皇子
キ・ヤンは冷たく一瞥しその場を離れた

居合わせたソ尚宮とヨン尚宮は その態度に憤慨し
マハ皇子を抱き上げて そのまま落としかねなかったと話す
これを聞いた皇后バヤンフトは ヨン尚宮だけを呼び出した

皇太后様にどんなご報告を?
突然切り出され ヨン尚宮は激しく動揺する
その一挙一動を見張り 皇太后様に報告しているのだろう!
たった今煎れたお茶に毒が入っていたことを証明され 観念するヨン尚宮
それは自分の仕業ではないと訴えたところでどうしようもない
もはや 皇后バヤンフトの言いなりになるしか生き残る道はないのだ

茶話会の場で 2人の皇子を愛おしそうに眺める皇后バヤンフト
皇后が 側室の産んだ子を羨むなどあってはならないこと
皇太后は 皇后が懐妊できるよう協力すべきだとキ・ヤンを嗜める

バヤンフトは 皇太后をなだめるように微笑みを浮かべ
今後は2人の皇子を仲良くさせるためにも 一緒にお世話がしたいと申し出る
それを穏やかに受け入れながら ならば自分もマハ皇子を…というキ・ヤン
皇后から密命を受けているヨン尚宮は 不安げに成り行きを見守っている

宦官ブルファが パン・シヌを案内してキ・ヤンの居室に入ると…
ヤンの膝の上には マハ皇子が抱かれている
シヌは 命令の内容にも上の空で 呆然とその光景を見つめている

ソ尚宮が マハ皇子を引き取りに来ると 離れがたいかのように泣き出すマハ
あの憎きタナシルリの産んだ子だというのに ヤンも離れがたく心が痛む
シヌは 涙ぐみながら母と子が引き裂かれる光景を見守っていた
このマハ皇子こそ ワン・ユとヤンとの間に授かった息子
出産して間もなく生き別れになった 星(ピョル)と名付けた我が子なのだ…!
いたたまれない思いで早々に退席するシヌ

宦官ブルファは マハ皇子が陛下の実子ではないことをいつ明かすのかと問う
偽りの懐妊を本当のことにするため タナシルリは捨て子を奪った
その事実を隠すため 寺ごと焼き払うという残忍な所業まで行っていたのだ…!
イ尚宮もまた 皇太子が決まる前に明かさなければ!と詰め寄る
しかしキ・ヤンは 下手に動けばアユ皇子にも害が及ぶと言い 今ではないという
それにしても… と小さくため息をつくヤン
なぜかアユ皇子を見ると 胸が締め付けられるように感じてならないヤンであった

その後 食事を終えたマハ皇子は皇太后の元へ戻るが 火がついたように泣き叫ぶ
トクマンが調べてみると マハ皇子の身体には無数の青アザが…!
皇太后は血相を変えキ・ヤンの元へ!!

ヤンは 皇帝タファンのもとでアユ皇子と共に過ごしていた
来訪も告げず現れた皇太后は 有無を言わさずヤンに殴りかかる!!!
あまりのことに声を荒げるタファン!

『皇太后である私に声を荒げるとは!それが皇帝のなさることですか!』
『皇帝の側室にいきなり殴りかかることが正しいと?!』

これまで 母も同然に可愛がってきたタファンが…と衝撃を受ける皇太后
たとえ実母であろうと 今はヤンの方が大切だと言い放つタファン!

『この女はマハを折檻したのですよ!』
『ヤンは決してそんなことはしません!』

皇子が傷つけられ 真っ先にヤンが疑われたことに タファンは納得しなかった
マハ皇子の世話係はもちろんのこと すれ違った者でさえ捕えよと命じる!
そしてキ・ヤンも黙ってはいない

『マハ皇子をここへお連れください! 必ず疑いを晴らして見せます!』

キ・ヤンは 皆の前でマハ皇子を抱き上げる
マハは いつものようにヤンに甘え 抱かれることを拒む様子はない
折檻した者にこれほど懐いて甘えるだろうかと問うキ・ヤン
そして マハ皇子に接した者に 順に抱かせていくと…
ヨン尚宮の顔を見るなり泣き出すマハ皇子!
ヤンは皇太后の制止を無視し ヨン尚宮を捕え厳しく尋問する!!

『お前とは 雑用係の頃から共にいた
可哀想に 皇后の指図だと白状すれば皇后に殺され
このままでは私に殺される運命だ』

ヨン尚宮は泣き崩れ 恥も外聞もなくキ・ヤンに命乞いを始めた

『タナシルリがマハを出産した時 お前はその場に居合わせたのだな?
いずれ マハ皇子の出自について証言してもらうことになる
それまでは お前を生かしておくこととする』

キ・ヤンはすべてを知っているのだと知り うなだれるヨン尚宮
そこへ 皇后バヤンフトが現れ 真相は分かったのかと聞く
黒幕は皇太后だと答えるキ・ヤン
思いがけない答えに驚きを隠せないバヤンフト

『それでは… 以前アユ皇子に毒を盛ったのも皇太后なのですか?!』

その言葉で それもまたバヤンフトの仕業であったと確信するキ・ヤン
バヤンフトは 皇太后の悪事を暴くため何でも協力すると申し出る

『ところで… この者の処断はどうなさるのですか?』
『いずれ証人となってもらうため 皇后様がお守りください』
『…承知いたしました』

高麗(コリョ)では

ワン・ユが王に復位し すべての臣下が祝いの言葉を口にする
この復位に際し 元へは兵1万 軍馬2,000頭 兵糧が贈られることになっていた
しかしワン・ユは 元への貢ぎ物はしないと明言する!

『この私が王でいる限り貢女(コンニョ)や宦官 そして貢ぎ物は一切出さぬ!』

さらにワン・ユは 元と取引し悪行を重ねてきた臣下の名を挙げ その罪を厳しく問う
官職は剥奪され財産もすべて没収となった

※貢女:高麗(コリョ)が元への貢ぎ物とした女性

これを知った丞相ペガンは怒り狂い ワン・ユを廃位すべきだと進言する!
さらには高麗(コリョ)を滅ぼし 元に編入すべきだと…!
しかし将軍タルタルは 征服戦争を控える状況下 時期尚早であると反対する

『高麗(コリョ)の海上貿易を立てば 交易による利益が途絶えます』

タルタルは すべての状況をキ・ヤンの耳に入れるが…
高麗(コリョ)の状況などに関心はないと答える

『今後もその構えを貫いてください
ヤン様が巻き込まれないか心配なのです』

一方 ワン・ユのもとに ヨンビスとマクセンがやって来た
玉座のワン・ユは威厳に満ち これまでのように接することが出来ない2人

『“パトル”だった頃のことを覚えているか?』

そう問われ ヨンビスの中にワン・ユとの過去が思い浮かぶ
当時ヨンビスは常に仮面をつけ“パトル”と名乗りチュルクを率いていたのだ
あの時 海上の交易路は元によって封鎖されていた
しかし“絹の道”があると ワン・ユが言ったのだ
“絹の道”は 必ずや高麗(コリョ)とチュルクの活路になると…!

『お前との あの時の約束を 今こそ果たす時が来た 絹の道を拓け!
元が海上を封鎖するなら我々は陸路を開拓するまで!
これからは西域と交易する! その独占権をお前に渡そう!』

やがて元は 丞相ペガン率いる大軍を擁し征服戦争へ出陣する
ペガンは イル・ハン国の6つの城を次々と落としていく!

※イル・ハン国:1260年に成立したイラン高原のモンゴル系国家  現在のイラン周辺

ペガンの猛勢を冷静に分析するワン・ユ
遠征が長引くほどに兵は疲弊する 勝利に酔うペガンも賢明とは言えないと…

『ヨンビスの商団の動きは?』
『元の硫黄と硝石を イル・ハン国に運んでいます』

一方 キ・ヤンは

商団から届いた利益金を長官らに渡し 飢饉に喘ぐ民を救うべく使ってほしいという
貴妃キ・ヤンの策に はじめは躊躇した長官らも 満足げに笑みを浮かべている

同じ時 皇帝タファンのもとへ侍従コルタが血相を変え駆けつける
ワン・ユから貴妃キ・ヤンへの密書を入手したというのだ…!
驚いて封を切り密書を読むと たちまちわなわなと震え出す!

『一体どんな内容なのです?』
『この件は… 誰にも言ってはならぬ!!!』
『は!』

コルタを下がらせると タファンは 激しく動揺しながらも迷いなく密書を燃やした
その炎が消えぬうち 何も知らないキ・ヤンが現れる

『まだ起きていたのですか?』
『……』
『何の書簡を燃やしたのです?』

タファンの目からは 今にも涙がこぼれそうだった
言葉を探しながら きつくヤンを抱き締める

『陛下… どうしたのです?』
『そなたがそばにいてくれて… 本当にありがたい 心から幸せだ!』
『どうなさったのです 何か…あったのですか?』
『何でもない… 何でもないのだ! このまま… このままでいてくれ…!』

その頃 蓮覚寺では

“吹毛求疵(すいもうきゅうし)”の策で 見事に皇帝と貴妃キ・ヤンの仲を裂いたと
ヨム・ビョンスの功績を称えるタンギセ

※吹毛求疵:無理に人の欠点を暴こうとし かえって自分の欠点をさらけだすこと 

『偽の密書で2人を仲違いさせるとは』
『あながち偽物とも言い切れませんよ あの2人はもともと危うかったのです』

そこへ メバクの頭が来たと知らせが入る
タンギセは 依然として仮面をつけたままの頭の前で跪き命乞いをする
頭は声を発することなく いつものように筆を執った
渡された文章を読み 動揺するタンギセ!
ヨム・ビョンスとチョチャムも 驚きのあまり声を上げるのだった…!


5年後


成長したマハ皇子の姿が 皇宮の中庭にあった
同じく中庭で遊ぶアユ皇子が 勢いあまって転んでしまう
マハは兄のように振舞い アユの手を取り助け起こした

遅れて現れた貴妃キ・ヤン
『礼を言うぞ』
側室ごときが! 皇室の嫡男に不遜な物言いをするな!』
『私はただ…』

肩に触れようとするキ・ヤンの手を 汚らわしいかのように振り払うマハ!
甘えて手を差し伸べ抱っこをせがんだ あの可愛らしいマハではなかった

そこへ 宦官ブルファが またしても遠征軍が大敗したと報告する
長引けば疲弊するというワン・ユの予測通り 征服戦争は行き詰っていた

皇太后のもとへ戻ったマハ皇子は なぜか浮かない顔をしていた
そんなマハを抱き寄せ キ・ヤンを貶める言葉を繰り返し聞かせる皇太后
あの女は皇子の実母を無残に殺したのだと…!
抱き締められながら マハは戸惑っていた
愛しくてたまらない貴妃キ・ヤンを どうしても憎む気持ちにはなれない
しかし 皇太后の言う通りならば…と思うと あんな態度しかとれないマハであった

大明殿では

大敗した責任を取り 斬首を願い出る将軍と兵士たちの姿があった
我々は精一杯尽力したのだと慰めるペガン
そこへ 泥酔し髪を振り乱した皇帝タファンが現れる
大敗が続いていることで すっかり気落ちし酒におぼれる日々が続いていた
貴妃キ・ヤンは 哀れな皇帝の姿に涙を滲ませる
2人の間には 修復し難い溝があったが それでもヤンの顔を見れば満足なタファン
何があろうとこのままそばに… その思いはずっと変わらずタファンの中にあった

泥酔したタファンは 跪く将軍を無残に斬り殺した
額に 頬に返り血を浴びながら 剣を振りかざして歩き回るタファン!
その狂気に震え上がり 恐れおののく兵士たち!

『この者たちは死んで当然だ! 酒を不味くしやがって!そうであろうヤン!!!』
『陛下ーーーっ…!!!』

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奇皇后-ふたつの愛 涙の誓い- 第41話 隠し部屋

2020-06-04 08:22:02 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ
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※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
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 第41話 隠し部屋 

秘密資金が鉱山の村にあったと知り ヨム・ビョンスは悔しさに歯噛みする
廃坑の捜索に気を取られ まさか村の中とは思いもしなかった
絶対にペガンには渡さないと 脱出の方法を探るタンギセ
ビョンスにとっては このタンギセの存在さえ厄介極まりなかった

一方 貴妃キ・ヤンとワン・ユは 秘密資金をどう運び出すか苦慮していた

『虎を捕獲する方法は2つしかありません
おびき出すか または虎の穴に自ら入るか…』
『明日 タルタル将軍が鉱山の村に向かいます』
『往復だけで4日を要します』

ワン・ユは 全ての実行は自分が引き受けるという
貴妃であるキ・ヤンが関わることは危険過ぎると…!

『陛下を含む皇室の方々と手を組みます 決して疑われない者たちです』
『それはあまりに難し過ぎる』
『私に 考えがあるのです』

キ・ヤンはまず 宦官ブルファとイ尚宮に命じていく
女官たちの汁物に 傷んだ牛乳が入れられ
井戸には 大量のネズミが投げ込まれた

秘密資金の捜索は 皇帝の肝入りで行われる
手に入れば 征服戦争の資金になるというペガン
それを聞いても タルタルは浮かない表情であった

『何か言いたいことでも?』
『叔父上 それについてはお戻りになられたらお話しします』

決して私利私欲で動いているのではないというペガンを
皇帝は 真の忠臣であると心底信じ切っていた
キ・ヤンは タファンの心を動かそうとする…

『ペガンの野望を許してはなりません 陛下』
『野望ではなく大義であろう 私は愚かな皇帝で終わるつもりはない
アユルシリダラにとっての“英雄”となりたいのだ!』
『陛下…!』
『姪を皇后に据え 私に推しつけたペガンは許せぬが
今回の件では利害が一致している そなたも反対ばかりせず見守ってほしい』

今のタファンに何を言っても考えを変えることは出来ないようだ
キ・ヤンは 無表情で黙り込むしかなかった

一方 タルタルの一団を尾行していたヨンビスは 突然に拉致されてしまう
そして 仮面をつけた“頭”の前に引きずり出された…!

『大都支部が壊滅したのに なぜお前はここに?』
『ワン・ユに タンギセを匿ったと気づかれ 商団だけでも救おうとしたのです』

ヨンビスを諮問するのは側近であり “頭”は決して言葉を発しない
今後は 宮中の受注を一手に引き受けること またペガンの信頼を得たこと
決して商団を裏切ったのではなく 守ろうとしたのだと
必死に弁明するヨンビスだった…!

同じ時

ワン・ユはペガンに会い 高麗(コリョ)に戻る時が来たようだと告げる
ペガンは 名残惜しそうに聞きながら 明晩別れの宴を開くという

宮中では

皇太后が もっと皇后と寝所を共にすべきだと言い出す
夫に疎まれる皇后 無能な皇太后 そしてキ・ヤンは魔物だという噂があると…!

『貴妃も今後は悔い改めよ! 皇帝を独り占めしてはならぬ』
『おやめください!!!』

タファンが激怒し か弱き女を演じるバヤンフトが微かにほくそ笑む…
その瞬間! 女官の一人が意識を失い倒れた!
宦官ブルファが 女官の高熱と発疹を確認し 流行り病の恐れがあるという
症状は悪化し たちまちすべての女官に広がっていく

やがて 井戸にネズミの死骸が投げ込まれていたと明らかにされ
トクマンは 事態を収拾すべく対策を立てていく
皇室に被害が及ばぬよう 避難すべきだと進言するキ・ヤン
しかしアユ皇子は風邪気味ゆえ 都を離れられないと…!

さらにはキ・ヤンの提案で 皇帝タファンはペガンの屋敷に避難することとなった
志を共にする主従は 何の疑いもなく今回の事態を受け入れたのである

また “頭”の追及を逃れたヨンビスは 今一度の機会を与えられ
興徳殿でキ・ヤンに会い 次の指示を受ける

『秘密資金を運んでもらいたい』
『屋敷に入るには口実が』
『陛下の贈り物を届けに』

ところで… と切り出すヨンビス
ワン・ユとの関係は ただ単に“協力者”ということか…と
そう問うことで ヨンビスは自らの想いを告白したことになる

『あの方を… お慕いしております』
『だからとて… 皇帝の側室に その問いは無礼千万であろう』
『でもあの方を苦しめています! 無礼を承知で申し上げます
あの方は… まだキ・ヤン様を忘れてはいないのです』

いかなる時も共に生き 同じ日 同じ時に死ぬ
そして死んでもなお一緒にいたいと誓い合った
ふたりは 互いを生かすために すべての想いを消し去ったのだった

鉱山の村では

マクセンが 何食わぬ顔でタンギセの一行を出迎えていた
納屋はどこかと聞かれ 長いこと使われていない場所だと答える

『なぜ使われていない?』
『逃げたを捕えて閉じ込めていましたが みな“幽霊”が出ると…』

納屋の中に もっともらしく置かれた箱は空だった
箱の周辺には いくつもの人骨が散乱している…!
するとチョチャムが… 蜘蛛の巣だらけの壁の向こうに扉を発見する

隠し部屋の中にはたくさんの箱が積まれており
金塊と交鈔がぎっしりと詰まっていた
あまりに興奮し それが偽物かどうかを確認することもしない
狂喜乱舞するタンギセの背後で ヨム・ビョンスがチョチャムに目配せする

マクセンは 荷車を用意しながら小声で手下に命ずる
ペガンの一行が来たら タンギセの行き先をおしえてやれと…!

タンギセは 村の近くの川から船で運び出そうと考えていた
周辺の地理に詳しい者として選ばれ マクセンが同行することに
気がはやるチョチャムが…

(奴をいつ始末するので?)
(まずはペガンの追撃をかわしてからだ)

宮中では

ペガンの屋敷に向かう皇帝と貴妃キ・ヤン そしてアユ皇子
その一行に 皇后バヤンフトも同行したいと願い出た
しかし表情を曇らせる皇帝に気づき バヤンフトは辞退すると言い出す

『何を言う ペガンの屋敷は皇后の実家も同然 皇帝に同行するのは皇后である
キ・ヤンは大雄寺へ行かれよ 近くであるし問題なかろう』

皇太后の指図に 自分は丞相の養女であり実家なのだと主張するキ・ヤン
バヤンフトは寛大さを見せ 皆で過ごせば心強いと了承する
ならば… と言いかける皇太后を無視し 皇后には目もくれず
キ・ヤンの手を取り さっさと行ってしまうタファン

その途中 捕えられたメバクの者たちが連行されていく
その時 ヨンビスとともに商団を束ねていた者が 突然恐れおののき跪く…!
一体 誰を見て恐怖を感じたというのか 手下たちは怪訝な顔でやり過ごす

その夜

ペガンの屋敷に ワン・ユの一行がやって来た
別れの宴にしては あまりに盛大な準備がされており戸惑うワン・ユ
流行り病の難を逃れるため 皇帝の一行を泊めることになり
歓迎の宴と送別の宴が重なったと笑うペガン

『発つ前に タルタル殿にも会いたい』
『今は鉱山の村に向かっている』

鉱山の村では

タルタルの一行が到着し タンギセたちが今しがた発ったと知る
マクセンの手下が 命じられた通り行き先を説明し タルタルは追撃に向かう!

タンギセに同行しているマクセンは 荷車の列の最後方でじっと機会を待つ
そして 荷車の中から出ている導火線に火をつけた!!!
突然の爆音に仰天するタンギセ!
夜の闇に舞い上がる無数の交鈔に ヨム・ビョンスが悲鳴を上げる!
さらには 爆音と炎が彼らの方向を示し タルタルの一行が歩みを速めた!

タンギセとビョンスの絶叫が響き渡る中 どこからか矢が飛んでくる!
ふたりは チョチャムに引きずられながら逃げるしかなかった

『逃がすでない! 一人残らず殺せ!!!』

マクセンは 燃え盛る荷車の列に浮かぶ光景を 闇の中から見つめていた
すべてはワン・ユの命令に従ったまで これでマクセンの任務は完了となった

タルタルが ふと燃え残った交鈔を拾い すぐに偽物と気づく
一夜明け 鉱山の村に戻ると 子供たちの歌が聞こえてくる
“八八王”が“金”を示すことを すぐに解読するタルタル
そしてキ・ヤンと同じように 歌詞の中の文字を読み解いていく…!

その昔 大都は“燕京”と呼ばれていた
そして丞相ヨンチョルの文字は“燕鐵”
歌詞の中の“燕の巣”とは まさに“ヨンチョルの屋敷”を指している
つまり秘密資金は 現在ペガンが住む屋敷に隠されているのだ…!

タルタルは 急いで大都に戻らねば!と叫ぶ
潜入していたヨンビスの手下がこれを察知し 慌てて飛び出していく!

ペガンの屋敷では

歌詞の続きにある “田畑を耕し食える日来るか” に注目するキ・ヤン
屋敷の見取り図に浮かび出た“田”の文字…
思案しているところへ 宴の準備が整ったとの知らせが入る

同じく 宴に向かう途中のワン・ユが マハ皇子に遭遇する
泣きじゃくる皇子に困り果てている侍女
するとワン・ユは シヌたちが止めるのも聞かず マハ皇子を抱き上げた

『皇子様 男がむやみに泣くものではありません 男が泣くのは人のため
寂しいとか悲しいとか… 辛抱せねばなりません』

マハ皇子が我が子とも知らず 優しく語りかけるワン・ユ
パン・シヌは見るに忍びず涙ぐむ
通りかかったキ・ヤンもまた ワン・ユに懐いて泣き止む皇子を微笑ましく見つめた

『タルタルが 秘密資金の在りかに気づいたと報告がありました』
『本当ですか?!』

鉱山の村に潜入する手下から ヨンビスを通じ情報を得たワン・ユ
ヨンビスが駆けつけるというが タルタルとどちらが早いかは分からない
キ・ヤンは 馬弔(マーチャオ)で時を稼ごうと提案する

※馬弔(マーチャオ):古代中国で楽しまれていたカードゲーム

『はじめに私が持ち金を使い切り席を立ちます
事が済むまで 皆を引き付けてください』

そこへ現れたタファンが 2人で何を?と見咎める
馬弔(マーチャオ)の話題で挑発されたタファンは 疑うことなく勝負心に火が付いた
何であれ タファンの勝負心で時が稼げそうだ

皇室でも頻繁に遊ばれるとあって 皇太后さえ楽し気に見ている
初心者のキ・ヤンが負け続けても 誰も疑うことがない
タファン ワン・ユ ペガン キ・ヤンが楽しんでいたが キ・ヤンの持ち金が無くなった

『持ち金が無くなった方は抜けてください』
『当然ですな 陛下 手加減はしませんぞ!』
『望むところだ!』

ワン・ユとペガンの挑発に タファンは豪快に受けて立つ
キ・ヤンは自然な形で皇太后に席を譲り 後ろの席につく

同じ時

イ尚宮が ペガンの屋敷の兵士たちに酒をふるまっている
酒には眠り薬が仕込まれており 屋敷を警備する兵士たちは間もなく寝てしまうだろう
そこへ タルタルに先んじてヨンビスが到着した…!

『キ・ヤン様 皇子様がむずかってなかなか寝てくれません』
『そうか では様子を見に行こう』

イ尚宮が助けを求めに入り 退室するキ・ヤン
勝負に夢中で タファンさえ気に留めようともしない
ワン・ユは キ・ヤンと一瞬だけ視線を合わせ勝負に興じていく

タルタルが到着するまで 秘密資金を運び出さねば全てが水の泡になる
執務室で見取り図を発見し 秘密資金の隠し場所を特定するまで…!

馬弔(マーチャオ)の勝負がつこうという時
何事もなかったかのようにキ・ヤンが戻った
タファンの独り勝ちを バヤンフトが満足そうに称賛している
次は宴の席で…と席を立つペガン
キ・ヤンは 無事に事が済んだという合図に 一瞬の視線を送る
ワン・ユが席を立ち その背中にタファンが声をかける

『高麗(コリョ)に戻れば もう二度と会わないことを願う
また廃位などにならぬように!』
『承知しました』

ペガンの屋敷の警備兵が目覚めた時 ようやくタルタルが到着した
ここで初めて 皇室の一行が 流行り病を避け避難しに来ていると知る
タルタルは屋敷の見取り図を握りしめ 一目散に書斎へ向かった!!

しかし…

書棚を動かし隠し部屋に飛び込むも そこは既にもぬけの殻であった!

宴の席では 丞相ペガンが秘密資金の使い道を論じていた
ヨンチョルの財産とはいえ もとは民から搾り取ったもの
国庫に組み入れ征服戦争の資金にすべきだと…!

征服戦争ならば 高麗(コリョ)の処遇をどうすべきかと問う皇太后

『高麗(コリョ)は我らの兄弟国であり 侵略すべきではないでしょう
ワン・ユ殿 高麗(コリョ)は元の一部になるべきでは?』

侵略して奪うより 戦わずして一部となるべきだというタファン
ワン・ユはまだ正式に復位したわけではない
この宴の場で論ずるべきではないとかわした

そこへ 将軍タルタルが到着したとの知らせが入る
書斎の隠し部屋で何も見つからなかった以上
秘密資金は タンギセに奪われた後 燃えてなくなったと報告するしかない

信じ難い失態に激怒するペガン!
タンギセの手に渡らなかっただけでも良かったと安堵するタファン
タルタルは 顔色一つ変えないキ・ヤンをじっと見つめる
自分のほかに 屋敷の見取り図を見たのはキ・ヤンだけ…!
しかしどんなに疑おうと 証拠となるものは何一つ無いのだった

宴が終わり キ・ヤンは 人目を避けワン・ユと言葉を交わす

(秘密資金は折半することとして ヨンビスには私の持ち分から)
(承知しました ワン・ユ殿… ご苦労様でした)

フッと笑みを浮かべ立ち去るワン・ユ
これ以上の言葉を交わすことなく キ・ヤンはその背中を見送る

居室へ戻る途中 タルタルが待ち構えていた
キ・ヤンを書斎の隠し部屋に招き入れ ここに秘密資金があったのだというタルタル
何のことだか… 初耳だと答えるキ・ヤン

『この隠し部屋に秘密資金があったとして… 尊い命を奪う戦に使われずよかったです
それで戦がなくなるなら よかったとしか言えません』
『今回は… 負けを認めましょう この世には真実を知りながら抗えない時がある
ヤン様が その秘密資金をどう使うか… 常にあなたを見ています
もしも私の一族に害を及ぼせば その時こそ負けません!』

立ち去ろうとするタルタルの背中に キ・ヤンが問う

『一族に害が及ぶか 国や民より気になるのですか
貴方ほどの方が一族にこだわるとは… あまりに悲し過ぎます』

やがて ヨンビスが運び出した秘密資金は 興徳殿に運ばれようとしていた
しかしそこへ タファンが現れ何事だと問う
タファンの後ろには バヤンフトが続き 皇太后の一行も…!

『何が運ばれてきたのだ?』
『興徳殿に入れる品が届いたのです』
『ヤンがどのような物を選んだか 気になるではないか』
『陛下がお気になさるような物は何も』
『恥ずかしがらずに見せるがよい』

荷車に手をかけようとするタファン!
慌てて止めるキ・ヤン!

(陛下…!)

声を殺して哀願するが タファンはそれを制し蓋を開けた…!!!

開けたと同時に息をのみ 一瞬で蓋を閉じる
あまりに不自然な驚きを隠せないタファン
不審に思った皇太后が近づく!
再び開けられた箱の中には びっしりと金塊が!!!

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奇皇后-ふたつの愛 涙の誓い- 第40話 丞相の大望

2019-09-16 12:10:00 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ
 “散る花と咲く花がいつもここにある”のブログより移行しています
1話~11話はこちらで公開しています
 
※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります
 
 第40話 丞相の大望 
 
貴妃キ・ヤンは 宮外でタンギセの私兵に取り囲まれる
無残に殺された母の敵を討とうとするキ・ヤン!
タンギセもまた 激しい怒りの炎を燃やしキ・ヤンを殺そうとする!
 
『あの時 貢女のお前を殺さなかったのは一生の不覚だった!』
『お前に私が殺せるものか!』
 
※貢女:高麗(コリョ)が元への貢ぎ物とした女性
 
その時!
知らせを受けたワン・ユが現れ 私兵を倒していく
タンギセは 深手を負いながらもその場から逃走した
 
難を逃れた貴妃キ・ヤンは ワン・ユから鉱山には手掛かりがないと聞かされる
しかし 鉱山の村で子供たちが歌っていた歌詞が気になるのだという
子供たちの間で ずっと歌い継がれてきた不思議な歌詞の歌が
その村でしか歌われていないというのも妙な話だった
 
一方丞相ペガンは 初夜に失敗したバヤンフトのもとに
 
『キ・ヤンを甘く見過ぎていました』
『あの者は 皇帝ばかりか後宮をすべて牛耳っている
まずは皇室資金の権限を奪うのだ』
『皇室資金は軍費に使い 何も残っていないとか』
『資金は私が調達する 権限を奪うのだ!』
 
将軍タルタルは 貴妃キ・ヤンに向かって臆面もなく秘密資金の話を切り出す
なぜ貴妃が秘密資金に関心を持つのか聞かれ 戸惑いを隠せないキ・ヤン
 
『なぜ私に疑いを持つのですか』
『この宮中で 秘密資金に関心を持つのは貴妃様しかいない
その理由を ご本人の口から直接伺いたい』
『皇室の財務を担当する身であれば 国庫を潤したいのは当然でしょう』
『調べたいのであればいつでもご命令を 協力は惜しみません』
 
腹の探り合いをしながら 決して隙を見せない2人
ペガンの側近でありながら タルタルが唯一その力を認めるキ・ヤン
そしてキ・ヤンもまた ペガン以上にタルタルを脅威と感じていた
 
新たな皇后として 側室たちに威厳を示そうとするバヤンフト
しかし キ・ヤンからの命令でなければ 返事すらしない側室たち
バヤンフトは 寛容な皇后であることを印象付けるかのように
今後 朝礼の仕切りはすべて貴妃キ・ヤンに任せると宣言する
 
『皇后様 なぜあのようなことを仰ったのですか』
『あの者が… 私を睨みつけるので 怖くなったのだ』
『睨みつけた… のですか?』
『あの者が怖くてたまらない! もう私には無理かもしれない
皆にのけ者にされて… あの者が望むなら皇后の座を差し出すしかない…!』
 
ソ尚宮は 怯えるバヤンフトに ただ事ではない事態だと皇太后のもとへ!
何も貴妃キ・ヤンと 直接闘う必要はないと ほくそ笑むバヤンフト
こうして無力な立場を嘆いてさえいれば 自分に代わり皇太后が動く…

ワン・ユは 歌詞の解読に集中していた
タンギセの行方が分からないままであり
ヨンビスは キ・ヤンとの協力に腹を立て まったく顔を見せない

ヨム・ビョンスは 深手を負ったタンギセを匿っていたが
大捜索のせいで身動きが取れなくなっていた
チョチャムは さっさとタンギセを始末して逃げようと持ち掛ける
しかしビョンスは 秘密資金の手掛かりをつかむまでは生かしておくという

ヨンビスは メバクの会合で“頭”の前にひざまずいていた
仮面をつけた“頭”は タンギセの行方については把握していないという
そして タンギセは生かしておけと命じていく
これまで メバクを陰で率いてきたヨンビスが 神妙にひざまずく相手
メバクを率いる“頭”の存在が そこにあった

キ・ヤンとの戦いで左目に深手を負ったタンギセは 激痛にのたうち回る
父ヨンチョルから 秘密資金と丞相の座 その全てを受け継ぐはずであった
数々の叱責を受ける日々 初めて一族の嫡男として認めてもらえた
そう思った矢先 貴妃キ・ヤンによって 何もかも奪われてしまったのだ

一方 皇帝タファンは

一向に姿を見せないキ・ヤンに 焦りと苛立ちをあらわにする
この日は 侍従コルタさえ 呼んでもすぐには現れない
常にタファンのそばで使えるコルタが 断りもなく姿を隠すとは…

しばらくして コルタが慌てた様子で駆けつける
怠けおって!と叱責し タファンは すぐに影絵の催しを準備せよと命ずる
相変わらず キ・ヤンの機嫌を取ろうとするタファンに
今は 皇帝としての威厳を示すべきと諫言するコルタ
しかし結局は 命じられたままに動くしかない

興徳殿では

ソ尚宮の知らせに憤慨した皇太后が 皇室の帳簿と印章を渡せと凄む
貴妃キ・ヤンは 命じられたままに渡すしかない
すべてが誤解であり 皇后バヤンフトこそが策士だと訴えても
今の皇太后に聞く耳などあるはずもない
キ・ヤンからすべての権限を奪うことは 皇太后にとっても好都合なのである

『今後は側室としての分をわきまえ 皇后の命令に従うのだ よいな!』
『承知いたしました 皇太后様』

今のキ・ヤンに 後宮の権限争いをする気はない
空の金庫を管理する皇室の帳簿など 持っていても無意味だった

『空の金庫を管理して皇后が満足なら それもよい
私はこの隠し部屋を 秘密資金で満たすことに集中できる』

そこへ 侍従コルタが影絵の催しへの招待に現れる
何とも悠長な皇帝の招きに 不快感をあらわにするキ・ヤン

宦官ブルファに説得され 渋々皇帝のもとへ向かうと
向こうから 皇后の行列が…
帳簿と印章を手に入れ 満足そうに微笑むバヤンフト

『皇太后から話は聞きました そなたを困らせたのでは?』
『いいえ お気にすることはありません』
『何て心の広いことを』

『ここにいたのか?』

そこへ皇帝タファンが現れ 真っ先にキ・ヤンの手を取った
自分もここにいるのだと 何度も声をかけるバヤンフト
しかしタファンは まるで皇后がそこにいないかのように無視した
早くしないと始まってしまう! と キ・ヤンを急かし立ち去ろうとするタファン

『あの…陛下 何か催しものでもあるのですか?』
『そなたには関係のないことだ 知ろうとするな!』

せっかくの影絵なので皇后様もご一緒に… と促すキ・ヤン
しかしタファンは 2人きりで観たいから用意させたのだと言い切る

『そんなに観たければ2回演じさせるゆえ 私たちの後で観ればよい!』

バヤンフトの顔から みるみる笑顔が消える
お付きの者たちも凍りついた表情で 立ち去る2人を見送った
皇后として最大の屈辱を受けたというのに 怒りさえ面に出さないバヤンフト
これがタナシルリだったら烈火のごとく怒り狂い 2人の背中に罵声を浴びせ
影絵の催しにたとえ呼ばれてなかろうと 意地でも乱入していただろう
ソ尚宮は バヤンフトの真意をつかめず戸惑うばかりだった

やがて影絵の催しが始まり タファンはキ・ヤンの手を握りしめ満足そうに微笑む
真っ直ぐに前を向き 見入る様子のキ・ヤンは まったく別のことを考えていた
鉱山の村の子供たちが歌う 不思議な歌詞の意味を…

気づくと 影絵の演目をまったく観ずに タファンがずっとキ・ヤンを見つめている
意味のない時間に 焦りさえ感じるキ・ヤンだったが…
ふと 影絵の動きに目をやり ハッとする

影絵の催しが終わると タファンは キ・ヤンを食事に招いた
しかし 食事が終わっても お茶を楽しむ時間でも キ・ヤンは上の空だった
さすがにしびれを切らしたタファンが 耐えかねて声を荒げる…!

『そんなにまで皇后になれなかったことが不満なのか? 私を嫌いになったと?!』
『陛下 そうではありません』
『では何だ! 何が不満でそんな態度なのだ!』

懇願する表情から 悲しみの表情に そして憂いの表情はやがて怒りの表情に…!
そこへ侍従コルタが現れ 大明殿で丞相ペガンが謁見を求めていると報告する
やっと解放されるという安堵感で 静かに席を立つキ・ヤン
その背中を 鋭い視線で睨みつけるタファンであった

大明殿

玉座の前で跪くこともせず 剣を抜いて仁王立ちになるペガン
そして いつまでもキ・ヤンなどに惑わさせてはならないと言い放つ

『あの世から ヨンチョルが笑っております陛下!』
『惑わされるとは何て言い草だ! そなたもヨンチョルのように私を脅すのか!』

ここで話題を変えるペガン
イル・ハン国やチャガタイ・ハン国 そして高麗(コリョ)を征服するのが夢だと…!

※イル・ハン国:現在のイランを中心とするモンゴル帝国の地方政権
※チャガタイ・ハン国:チンギス・ハーンの次男が建国した遊牧国家

『征服戦争をするというのか? そんな莫大な資金など無理であろう!』
『ヨンチョルの秘密資金を探しています!』
『何?』
『丞相になったのは私利私欲ではなく すべては陛下のためなのです!』

ここで初めて跪くペガン
大元帝国の威厳を世界に知らしめる 大望を持っていただきたいと!

丞相ペガンは ヨンチョルの秘密資金捜索に 皇帝を担ぎ出した
征服戦争という大義名分を掲げ 皇帝をその気にさせたのだ
これを知ったキ・ヤンは 危機感に表情を強張らせる
ペガンが先に秘密資金を手に入れれば またしても高麗(コリョ)が危機に陥る…!

キ・ヤンは 影絵の最中に閃いたことを 一刻も早く形にしたかった
鉱山の村の子供たちが歌っていた歌詞の中に出て来る言葉
“八八王”
“八”と“王”を組み合わせ 紙に“全”と書いてみる
そして紙の上下を反転させ もうひとつの“八”を書き入れると…
“八八王”の言葉は “金”という文字になった…!

やはり 歌詞の中に秘密資金の在りかが隠されていた!
キ・ヤンは 直ちにワン・ユとヨンビスを呼びつける
互いに自分だけが呼ばれたと思っていた二人は 鉢合わせになり驚く
秘密資金の在りかを記した書面を渡され 戸惑いを隠せないワン・ユ
側近のパン・シヌたちも 困惑の表情で顔を見合わせる

貴妃キ・ヤンとワン・ユが手を組むことを ヨンビスは快く思っていない
それを承知しているキ・ヤンは ヨンビスの反応を観察している
ワン・ユは 秘密資金の在りかを見つけたからには手を組むしかないのだと言い放つ…!

ヨンビスは すぐさまペガンに接触し 秘密資金の情報で取引をしたいと…!
メバク商団の大都支部を掌握したいという野心を語り 協力を持ち掛けたのだ
まずはメバクの大都支部壊滅 そして宮中からの注文はすべてヨンビスの商団に
確かな証文の証に 必ず玉璽を押すことが条件だという

取引成立までは 簡単に秘密資金の在りかを明かさないヨンビス
秘密資金を狙っている者は 他にもいるのだと…!
玉璽を押した証文など容易いが 問題は 全貌が見えないメバク壊滅だ
ヨンビスは メバクの組織図が記された帳簿を渡す
そして 組織の隠れ家のいずれかに タンギセが匿われているとほのめかす!

これを受け 皇帝タファンのもとへ急ぐペガン!
ヨンビスの要求をのみ 情報を得るためには 皇帝の同意が必要であった
事態を察知したキ・ヤンは 急いでワン・ユに知らせよと命じる

同じ時 ワン・ユはマクセンを呼びつけ 大量の交鈔が入ったいくつもの箱を見せていた

『こ、こ、こ、これが全部交鈔?!!!』
『落ち着け これらは全部偽物だ』
『何だって?!』
『メバクの支部から奪ったものだ』

これを鉱山の村に運ぶことが マクセンに与えられた役目だった
するとそこへ ヨンビスが裏切ったとの知らせが…!
ワン・ユはムソンたちに メバクの者たちを残さず捕えろと命じていく!!
そして パン・シヌを従えペガンの屋敷に向かい タンギセを見つけたと報告する!

『商団に匿われていたようだ 別動隊がメバクを捕えに向かっている』
『どこからその情報を得たのだ!』

ワン・ユが差し出したのは ヨンビスがペガンに提示したのと同じ帳簿だ

一方 メバクの隠れ家から脱出を試みるタンギセだったが
根こそぎ捕えられたはずの隠れ家に ヨンビスの一団を見かけ息をひそめる
なぜあの者だけが捕えられずに悠々と歩いているのか…

ヨム・ビョンスとタンギセが尾行すると ヨンビスは密かにペガンと会っている…!

玉璽入りの証文を受け取ったヨンビスは 秘密資金が鉱山の村に隠されていると明かす
錫を採取する作業場の 納屋の中に秘密資金が隠されていると!!!

これを立ち聞きしたタンギセは 決してペガンには渡さないと激怒する
それには 何としてもここから脱出しなければと!

各自が情報に踊らされ 一触即発の動きを見せようとする中
貴妃キ・ヤンは 興徳殿の隠し部屋にいた
秘密資金の在りかは鉱山の村ではないと聞かされ 困惑するイ尚宮
興徳殿にヨンビスを呼び入れたあの日…

「そなたに “裏切り者”を演じてもらいたい」
「その分け前として 大都支部の掌握と宮中への納入を独占できると?」
「承知してくれるか?」

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奇皇后-ふたつの愛 涙の誓い- 第39話 秘密資金

2019-09-16 10:08:22 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ

 “散る花と咲く花がいつもここにある”のブログより移行しています

1話~11話はこちらで公開しています

 

※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります

 

 第39話 秘密資金 

 

『私に協力を求めるなら…

キ・ヤン様も 高麗(コリョ)のためになることをなさらねば』

 

ワン・ユの求めに応えるように キ・ヤンは高麗(コリョ)王への返書を渡す

そして 必ずやヨンチョルの秘密資金を探し出し 高みに昇り詰めると誓う

過去の想いが再燃したのではない

今の状況で我が子を守るには ワン・ユと手を組むしか道はないのだ

 

一方 皇帝タファンは 何としてもヤンを皇后の座に… と気を揉んでいた

丞相ペガンの姪を娶るつもりなど さらさら無いのだと訴えるタファン

キ・ヤンはそれをたしなめ 今はペガン丞相と対立してはならないと諭す

 

『あの者の働きがあってこそ ヨンチョルを倒せたのは事実』

『では ペガンの姪を娶れと?!』

『正攻法で勝たねばなりません』

『しかし… ペガンは皇太后と組んだのだぞ』

『一日も早く私を貴妃に そして興徳殿に住まわせてください

アユを守るためには 皇后にも負けない地位に就かねば』

 

同じ時

 

キ・ヤンに協力するというワン・ユの報告に ヨンビスが猛反対していた

皇帝の子を産んだヤンが 我が子を守るために何をするか分からないと…!

 

『どうしてもあの女と組むなら こっちは手を切らせてもらう!!!』

 

激怒して出ていくヨンビスに 側近たちが何とか取り成そうとするが

元と交易を続けるためにも 皇室との繋がりは必要だというワン・ユ

パン・シヌは それならば丞相ペガンの姪が皇后の座に… と呟く

 

『アユルシリダラ皇子が皇太子になるのだ 皇后に媚びる必要もない』

『それじゃあ マハ皇子はどうなるので?』

 

チョンバギの失言に シヌがギロリと睨みつける

マハ皇子が ヤンと自分との子であることを ワン・ユは知る由もない

 

庭園を歩くワン・ユの前に マハ皇子が現れる

大はしゃぎの皇子を 軽々と抱き上げるワン・ユ

皇子様を抱くなんて… と眉をひそめるシヌ

その様子を見た皇太后が マハの懐きように驚く

(それはそうだ…)と心の中で頷くシヌだった

紛れもなく マハ皇子はワン・ユの息子なのだから… と

 

一方 雑用係に格下げされたソ尚宮とヨン尚宮は

イ・ホンダンから厳しい扱いを受け 屈辱に耐えていた

 

(キ・ヤンが貴妃になれば ホンダンもイ尚宮に?!)

(それでも耐えるのだ 何としても生き延びねば…!

こうしてじっと耐えていれば 必ずや好機が巡ってくる)

 

たとえキ・ヤンが皇后になれなくとも 皇帝からの寵愛を受け

息子アユルシリダラもまた 一心に愛情を受け育っている

そのアユ皇子の食事に 何者かが毒を盛った…!

 

粥を作った女官らは 鞭で打たれ尋問された

駆けつけたタファンは怒りをあらわにし 生ぬるい!と叫ぶ

地下牢で拷問せよとの皇命に キ・ヤンが待ったをかける

 

どう考えても 女官ごときが企てられる悪事ではない

ヤンは ソ尚宮とヨン尚宮を捕えさせた

 

『そういえば… タナシルリもよく毒を操っていたな』

 

怯える2人を容赦なく鞭打つキ・ヤン!

そこへ皇太后が現れ 2人を解放し傷の手当てをと命じた

 

『陛下の婚礼も近いというのに 騒ぎを起こすでない!』

『息子に毒を盛られたのです 黙ってはいられません!』

『騒ぎを起こさなくては解決出来ない?まずは皇室の平和を考えよ』

 

丞相ペガンの姪 バヤンフトの皇后教育は順調だった

周囲の思惑や争いごとを除けば バヤンフトは実に皇后に相応しかった

もちろん 皇后候補はバヤンフトだけではない

しかし皇太后は 何としてもペガンの姪を皇后にと推すのだった

 

『皇后が決まれば キ・ヤンを貴妃にし 興徳殿に住まわせます』

『興徳殿に住むのは 第2皇后ですよ 貴妃になど…』

『キ・ヤンは貴妃になりますが 待遇は皇后と同等に!』

 

皇太后は キ・ヤンをギロリと睨みつけた

ヤンは視線を外し 無表情のまま

 

『そなた 皇帝を焚きつけたな? 興徳殿をくれと?』

『私にはその資格がありますし 権利もあります』

 

皇太后が激高する前に タファンが口を挟む

 

『この者は多くの犠牲を払って尽くしてくれた

何もせぬ者が皇后になるのに この者に資格がないとは言わせません

そもそも皇太后様の許しは必要ない 私は皇帝なのですから!』

 

キ・ヤンは 宦官ブルファに命じ興徳殿の警備を強化させる

また イ・ホンダンを昇格させイ尚宮に

また女官は すべて高麗(コリョ)出身者にと命じていく

 

『それと… 興徳殿を改修し“隠し部屋”を作ってほしい』

『“隠し部屋”を どうなさるので?』

『ヨンチョルの秘密資金を隠さねばならない』

 

アユ皇子に毒を盛った犯人は まだ見つかっていなかった

しかしキ・ヤンは 犯人捜しよりもまず 息子を守る対策を急がせた

 

一方皇太后は ソ尚宮とヨン尚宮を 新たな皇后のお付きにと命じた

ペガンと結託したとはいえ 常に動向を探る必要があった

いよいよソ尚宮の言う“好機”が訪れたのである!

 

『皇太后様のためでしたら どんなことでも致します!ご命令を!!』

『まずは… 新たな皇后の信頼を得なさい』

『信頼… ですか?』

『私の手先だなどと 断じて知られぬように!』

 

タナシルリに仕えてきた2人である その言葉の意味は百も承知

悪事にかけては 最高の手足となることを 皇太后は熟知していた

 

さらに皇太后は チャン・スニョンに命じていく

“生母はキ・ヤンに殺された”

そうマハ皇子に教え込めと…!

 

タファンが皇帝として何の力もなく 丞相ヨンチョルに支配されていた頃

皇太后は キ・ヤンを救世主のように頼り崇めていた

しかし現実に 高麗(コリョ)出身のキ・ヤンが皇后になるとなれば話は違う

丞相ペガンもまた同じであった

養女にしてまでキ・ヤンを側室にし 自らも丞相となったが

高麗(コリョ)の血を受け入れることは どうしても出来なかった

 

『アユ皇子 母君は あのキ・ヤンに殺されました!

高麗(コリョ)出身のあの者が 無残に母君を殺したのですよ』

 

チャン・スニョンは 皇太后の言葉に違和感を覚える

死の直前まで悔い改めることなく 恨み言を遺して死んだタナシルリ

期せずしてその恨みを 皇太后が受け継ぐことになるとは…!

 

バヤンフトが 皇后として皆の前に現れた時 イ尚宮が蒼褪める

皇后付きの尚宮として ソ尚宮とヨン尚宮が後に続いていたのだった!

 

タファンは 皇后の手を取り玉座へ導く

真っ直ぐに前を見つめるキ・ヤンの視界にも その光景が映る

 

バヤンフトが 皇后の座に就いたその日

キ・ヤンもまた 貴妃として興徳殿の主となった

入殿した貴妃キ・ヤンは 真っ先に“隠し部屋”を確認する

 

宦官ブルファは ワン・ユからの密書を渡す

密書には 錫の鉱山へ向かうとある

ヨンチョルの秘密資金を狙っていることが露見すれば 互いに破滅だと…!

 

丞相ペガンが 秘密資金の目録を手にしたと知り

貴妃キ・ヤンは その在りかを探せとブルファに命ずる

 

その夜

 

バヤンフトは タファンとの初夜を前に緊張していた

婚礼衣装を脱ごうとせず 姿勢を正したまま待ち続ける

 

皇帝タファンは 寝所で大酒を飲み酔いつぶれる寸前であった

そして 貴妃キ・ヤンのもとへ行くと言い出す

侍従コルタは 皇后との初夜の場に行くべきだと強く進言する…!

なぜこの国の皇帝が 好きな女のもとへ行けぬのかと喚き散らすタファン

 

『それが皇帝というものです陛下!!!』

 

ふいに現れた皇太后の一喝で タファンは我に返る

何でも思い通りに出来るのが皇帝ではないと叱りつける皇太后

大義名分を優先し 時には私心を曲げて耐え忍ぶのが皇帝であると…!

 

『皇太后様は 皇帝である私のことを少しも考えてはおらぬ!』

『そうお考えなら 貴妃キ・ヤンを追い出さねば…』

『皇太后様!!!』

 

『玄宗皇帝が国を傾けたのは 楊貴妃を愛するあまりのこと

陛下こそが キ・ヤンの立場を危うくしているのです!

あの者を思うのであれば 皇帝としての務めを果たすのです

皇后のもとへ! 今夜は皇后と初夜を過ごすのです!!!』

 

イ尚宮が 陛下は皇后のもとへ向かったと知らせる

貴妃キ・ヤンは アユ皇子を抱きながら 孤独に夜を過ごし

皇后バヤンフトは 酔いつぶれたタファンの寝顔を見つめ夜を明かした

 

やがて目覚めたタファンは バヤンフトに請われ髪飾りを外してやった

あのタナシルリを迎えた時と同じように 冷たく接するタファン

しかしバヤンフトは 寛容さを崩さず冷静さを失わない

 

『タナシルリは 実に激しい性格だった そなたは逆に優し過ぎる』

『どのような者なら お気に召しますか』

 

その問いには答えず タファンは侍従コルタを呼びつけ

朝食は 興徳殿で貴妃と一緒に摂ると告げた

 

『私なら大丈夫です 陛下が貴妃を大事になさるのでしたら

私も 貴妃を大事にいたしましょう 夫婦は一心同体ですもの』

 

どんな言葉も タファンの心を揺らすことは出来ない

しかし 興徳殿へ向かう途中 タファンは貴妃キ・ヤンとすれ違う

昨夜は酔いつぶれて… と言い訳するタファン

キ・ヤンは その手を冷たく振り払う!

自分だって一睡もしていない!と言い放ち 立ち去った


あまりの冷たい態度に その場の空気が凍りつく

侍従コルタは いくら貴妃とはいえ不遜過ぎると進言するが…

 

『聞いていなかったのか? ヤンは一睡もしておらぬのだ!』

 

貴妃キ・ヤンは 将軍タルタルの執務室に向かっていた

ヨンチョルの財産目録を調べているところだと 正直に話すタルタル

 

『叔父のことを… 恨んでおいででしょう』

『見捨てられた気分です 恨んでいないと言えば嘘になります』

 

キ・ヤンに 側室になるための教育をしたのはタルタルである

その意味では師弟関係にある2人 一定の距離を保ちつつ互いに正直だった

 

昨夜は 皇后が寂しく夜を過ごしたと話すキ・ヤン

タナシルリの時も そのせいで逆恨みされた経緯がある

 

『将軍から うまく取り成していただけませんか?

もう こういった争いごとに巻き込まれたくないのです』

 

それだけを伝えると キ・ヤンは去っていった

タルタルは アユ皇子が殺されかけたと その時初めて側近から聞き

まさか… と表情を曇らせた

 

皇后殿では

 

ソ尚宮が『あのキ・ヤンのせいで…』 と皇后を焚き付けている

しかし バヤンフトは タナシルリのようにうまく操れない

あまりに心が優し過ぎるせいで 邪悪な心を拒絶してしまうのか…

 

そこへ 将軍タルタルがやって来る

 

バヤンフトは 少女のような甘え声で『お兄様!』と駆け寄った

幼い時をペガンの屋敷で過ごした2人は 兄妹のように仲がいい

人払いし 皇后としてでなく しばし親しげに話したいと請うタルタル

バヤンフトは 『もちろんです!』と笑い瞳を輝かせた

 

『兄妹のように暮らしたから お前のことはよく知っている』

『ええお兄様 あの頃は本当に楽しくて…』

『二度と… あんな真似はするな』

 

バヤンフトの表情が凍りつく

兄と慕うタルタルを見上げる視線は鋭く 笑顔は一瞬で消え去った

 

『乳飲み子を毒殺だと? お前に人の心はあるのか?』

『……』

『お前は 幼い頃から誰より嫉妬深く 残忍な心を持っていた

飼っていた鳥さえ 鳴き声がうるさいと切り刻んでいた』

 

『今後は敬語を使うように!

皇后となった今 そんなお説教は聞きたくない!

ええ あの件は私の命令です ですが殺すつもりなら失敗などしない

ただ思い知らせただけ それだけですよ お兄様

皇后の私が 側室ごときに皇帝を奪われるなど有り得ない!』

 

『どうぞご自由になさればよい

しかし皇后様のせいで 我が一族に害が及べば ただでは済みません!』

 

(何を偉そうに…!)

 

バヤンフトは タルタルの背中をギロリと睨みつけた

邪悪さをあらわにしていたタナシルリは まだ素直だったのかもしれない

このバヤンフトという新たな皇后に比べれば…

 

同じ時

 

貴妃キ・ヤンは ヨンチョルの財産目録を手に入れていた

今夜のうちにすべて書き写し 元の場所へ戻すようにと命じていく

するとイ尚宮が 財産目録の1冊に挟まれていた紙切れを発見した

それは ヨンチョルの屋敷の見取り図と思われる

しかし今 その屋敷に住んでいるのは丞相ペガンであった

 

ペガンは 秘密資金についての情報を何一つ掴むことが出来ないでいた

もしもタンギセが先に見つけてしまったら… と焦るペガン

そこでタルタルが 1つの方法を提案する

 

『ヨンチョルと関係が深かった メバク商団に探りを入れるのです

頭に会えば 何かしらの情報を得られるでしょう』

 

しかし 商団の者でも頭に会った者はおらず その顔さえ知らない

2人は メバクの大都支部を率いる男に接触を試みるが…

その男に いち早く会っていたのは タンギセであった

ヨンビスは 会談を手引きする下っ端に扮し同席している

まさか事実上商団を率いる者が このヨンビスとも知らず

支部の長と会談するタンギセ

 

『回りくどい話はしない 私は父上の秘密資金が欲しいのだ』

『昔お父上は 鉱山の村人を皆殺しにしました』

 

つまりは そこに秘密資金を隠したから口封じをしたということか…

長は否定も肯定もせず その事実だけを伝えた

 

タンギセの一行が退室した後 ヨンビスは長と話し合う

ヨム・ビョンスが立ち聞きしていることを承知の上で

あくまでも手下として 今後の動きについて指示を仰ぐ…!

 

ビョンスは タンギセの駒になって従う気はさらさら無かった

機を見て秘密資金を横取りするという企みに チョチャムは仰天する!

 

『タンギセは 秘密資金で傭兵を育て 謀反を起こす気だろう

奴に従えば いずれ反乱軍として捕らえられるだけだ

俺はそんな愚か者じゃないぞ 金塊でこの世の望みをすべて叶える!』

 

一方 ワン・ユは

 

鉱山に到着しマクセンから報告を受ける

タンギセとヨム・ビョンスが 突然に姿を消したのだという

しかし 金塊を発見したのではないと言い切るマクセン

金塊を運ぶとなれば 数人で事を進められるはずがないと…!

 

同じ時 貴妃キ・ヤンは

 

興徳殿の隠し部屋に引きこもり 秘密資金の情報を探っていた

皇后バヤンフトと 一夜を過ごしたタファンの行動に傷つき

今は独りになりたいと告げ 皇帝の呼び出しにも応じず距離を置いている

 

なぜ皇帝に 秘密資金のことを話さないのか… と聞く宦官ブルファ

 

『陛下は 秘密資金を国庫に組み入れようとするはず

そうなれば 私は自分を守るべき力を得られない』

 

そこへ ワン・ユから 連覚寺で会いたいとの連絡が入る

 

将軍タルタルは 秘密資金の行方について 必死に考えを巡らせる

ヨンチョルであれば どこへどう隠すのか… その心理を探っていく

容易に出し入れが可能な場所

誰にも怪しまれず隠せる場所…

 

その時タルタルは 財産目録の並びが違っていることに気づく

この宮中で 秘密資金を狙う者がいるようだと

 

その夜

 

貴妃キ・ヤンは 宦官ブルファを伴い 宮外へ出向く

その知らせを受けたタンギセが 私兵を出動させる…!

 

亡き父ヨンチョル そして弟タプジャヘ 妹タナシルリ!

一族を殺された恨みを晴らすべく キ・ヤンを包囲する!!

 

キ・ヤンもまた タンギセに対し激しい憎悪をあらわにする

あの日 我が母を無残に殺された恨みを 今こそ晴らそうと!!!

 

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奇皇后-ふたつの愛 涙の誓い- 第38話 終わりなき争い

2019-04-05 17:50:00 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ

“散る花と咲く花がいつもここにある”のブログより移行しています

1話~11話はこちらで公開しています

 

※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります

 

 第38話 終わりなき争い 

 

鉱山の近く 廃坑を捜索して4日が過ぎていた

坑道の奥深くまで探しても 金塊はどこにも見つからない

父ヨンチョルより 譲ると明言されたにもかかわらず

タンギセは 金塊のひと欠片さえ見つけられずにいた

 

そこへ 父ヨンチョルが処刑されたとの知らせが届く

しかもその亡骸は 弟タプジャヘの亡骸と共に 市中を引き回されたと!

タンギセは 誰はばかることなく大声を上げて泣き叫ぶ

もはや妹タナシルリも無事では済むまい

家族の危機に 何の援護も出来なかった自分の不甲斐なさを恥じた

 

大都では

 

ヨンチョルとタプジャヘの亡骸を引き回す行列に 群衆が怒号を浴びせていた

行列の後方には 馬上の皇帝と婕妤キ・ヤン そして皇太后の輿が続く

 

『皇帝陛下 万歳!』

『キ・ヤン様 万歳!』

 

憎き丞相を倒したのは キ・ヤンの功労であることを 民はよく知っていた

惜しみなく贈られる称賛の声を 皇太后は複雑な思いで聞いていた

この国の諸悪の根源を退治したのは無論のこと

ヤンにとってヨンチョルは 無残に父を殺した敵

とめどなく流れる涙は ようやく父の無念を晴らせたという思いでもあった

 

冷宮では

 

父と兄の死を知り タナシルリが取り乱していた

そこへ 皇帝タファンが現れる

もはや皇帝に対し ひとつの礼も尽くさず悪態をつくタナシルリ

自分がしたことの善悪を 何ひとつ理解せず 今はただ被害者然としている

身内を殺されたという その憎しみだけで正気を保っているのだ

 

タファンは じっとその恨み言を聞く

仮にも妻であった者の おそらく最期の叫びとなるであろうと…

 

『追って毒薬をつかわす』

『ええ殺せばいい! 殺してください! 失うものはもう何もない!』

『死ぬ前に 一度でもいい 自分が殺した者たちへ許しを請うがいい

犯した罪を悔いよ それが…人の道理である』

 

もはや何を言おうと 伝わることはないだろう

タファンは タナシルリの返答を聞くことなく去って行った

 

やがて毒殺される身のタナシルリは 息子が敵を討ってほしいとつぶやく

この母がどんな扱いを受け どのように殺されたか

生々しく伝えよと ソ尚宮に命ずるのだった

 

皇帝タファンの親政が始まった

キ・ヤンのもとへは 各行省から次々と贈り物が届けられる

皇太后は それをただ苦々しく傍観するしかなかった

 

贈り物の中に 高麗(コリョ)からの物があり 中には密書が隠されていた

もともとキ・ヤンは 国の政策により 貢女として元の国に連れて来られた

高麗(コリョ)出身の側近たちは 何を今さら!と憤る

 

※貢女:高麗(コリョ)が元への貢ぎ物とした女性

 

同じ時 ワン・ユのもとへも父王より密書が届けられる

高麗(コリョ)の女人が 皇后の座を目前にしていると聞き

今後の援助を請うためにも 協力を惜しまないようにとしたためてある

パン・シヌたち側近は もうキ・ヤンには関わらぬ方が…と意見する

命懸けで どれだけの犠牲心で尽くしてきたことかと…!

 

そこへ ペガンたちが ヨンチョルの屋敷を捜索しているとの報告が!

タンギセ同様 ペガンもまた秘密資金の行方を追っていた

まだ任命も受けていないのに ペガンは 我が物顔で屋敷を使っている

次の丞相は 当然のごとく自分であると決めつけていた

 

『そなたも高麗(コリョ)に戻り 復位するのであろう?

そうなったら 元の属国として十分に協力してもらうぞ!』

 

あのヨンチョルでさえ 高麗(コリョ)を“属国”などと公言しなかった

シヌたちは ペガンがヨンチョル以上の丞相になるのでは?と囁き合った

 

ワン・ユが庭園を通って戻ろうとした時 向こうから婕妤キ・ヤンが来る

もう長いこと 私的に言葉を交わすことはなかった

 

『ペガンに警戒を… あの者は蒼き狼の末裔として 血統を重んじている

高麗(コリョ)出身のあなたを いつか排除しようとするでしょう』

 

さらにワン・ユは 公の行事を避けるようにと助言した

やがては皇后となり 権力を揮うであろうヤンに 敢えて苦言を呈したのだ

 

『多くの支持者を得るということは 一方で敵も増えるということです

過ちを犯せば その支持者さえ一瞬で寝返るでしょう

あなた様は非常に賢いが 権力というものについてはまだ詳しくない』

 

宦官ブルファは 王様の助言に耳を傾けるべきだと進言する

しかし この時のヤンにとって ペガンは最大の恩人であり

側室になれたのも 彼の養女になったからこそなのだ

 

婕妤キ・ヤンの思いとは裏腹に 大臣たちの思惑は違っていた

キ・ヤンが皇后の座に就き 養父ペガンを丞相にするのは間違いだと考える

ペガンは 確かに今回の功労者だが 長官としては新参者

長官の中の最年長者が丞相の座に就くべきだと主張する

 

雲南行省長官オガンは ヤンの思惑に期待していた

権力を得れば 実の親でも殺めるもの ましてやヤンは養女ではないかと

 

長官たちが 豪華な贈り物をした意図は 論功行賞に向けて…であった

あくまでもペガンを推すなら すべての長官を敵に回すことになる

会合では オガンを丞相に…という進言があからさまに行われた

 

しかし 婕妤キ・ヤンは 自分が決めることではないと受け流す

すべてを決めるのは 陛下であるという姿勢を崩すことはなかった

 

皇帝タファンは 論功行賞について 何も決められないでいた

親政を執るとはいえ タファンもまた 得た権力の使い方を知らない

悩む皇帝に 言葉を選びながら助言していくヤン

 

そこへ やはり論功行賞を按じて皇太后がやって来る

まさに皇太后が助言したかったことを 既にヤンが行っていた

それは 皇太后が考えるよりはるかに素晴らしい案であり

誇らしげにヤンを称える皇帝を 恨めしく見つめ引き下がるしかなかった

 

チャン・スニョンは 側室が政(まつりごと)に口を出すとは!と憤る

皇太后は ヤンが決めた論功行賞を 妙案だと褒めたが

権力を操る政(まつりごと)は “画策”程度では解決出来ないとほくそ笑む

今回の論功行賞が 明らかに波紋を呼ぶと確信したのだった

 

遼陽行省長官ペガンは 思惑通り丞相に任命された

そして 雲南行省長官オガンは “太師”

嶺北行省長官プサギは“太傳”

四川行省長官ソルトガンは“太保”

さらには ワン・ユの“復位”を許可すると言明されたのだった

 

この決定に 真っ先に不服を申し出たのはペガンであった

既に廃された“昔の官職”を なぜ復活させたのかと…!

誰もが欲する丞相の座を 分け合うことは出来ない

これはまさに “権力”ではなく“名誉”を分けた英断と言えるだろう

 

(ペガンがどう出るのか…)

皇太后が按じる点はそこにあり ペガンの表情がそれを物語っている

 

皇帝タファンは 続いてキ・ヤンを皇后にすると発表するつもりだった

これを阻んだのは皇太后であり 既に廃されたとはいえ

現皇后タナシルリの処刑が済んでいないという主張は無視出来ない

 

丞相と同等の官職を復活させてまで 自分を牽制する皇帝…いや婕妤キ・ヤン!

ペガンは 望み通りになったにもかかわらず憤りを隠せない

さらには皇后になる行く手を阻む皇太后

ヨンチョル一族を倒してもまだ 争いの終わりは見えてこない

 

婕妤キ・ヤンは タルタルに会う

復活させた3公はあくまでも“名誉職” 昔のような権限はなく

丞相ペガンの権力は安泰なのだと説明する

しかしタルタルは 名誉職だからこそ いかようにも捉えられる

ペガンは 何としても承服しないだろうという

 

それでもヤンは ペガンを信じ切っていた

必ずや理解してくれるだろうし タルタルにもそのように説得をと頼む

 

同じ時

 

皇太后はペガンに会い ヤンを皇后にしてはならぬと焚き付けていた

この論功行賞はすべてヤンが仕組んだことであり

アユルシリダラが皇位を継げば 高麗(コリョ)の血に国を奪われると…!

 

今回の件に不満はあったが ペガンもまたヤンを信じていた

しかし すべてがヤンの思惑とすれば… 心が揺らぐペガンだった

 

一方 掖庭宮では

 

トクマンとパン・シヌが会っていた

2人はもともと高麗(コリョ)の出身であり 旧知の中である

シヌは マハ皇子の処遇について聞く

マハがタナシルリの実子でないことは 一部の者しか知らない

ましてやマハが ヤンが産み落とし奪われた子であることは

シヌのほかには誰ひとり知る者がない事実だった

 

タナシルリが処刑され ヤンが皇后になれば…

そう思うと はっきり確かめずにはいられないシヌだった

そしてトクマンに頼み込み マハ皇子の足の甲に3つのホクロを確認し

やはりマハは 王様とスンニャンの子だと知り絶句する!

 

皇太后は冷宮に赴き タナシルリに会う

 

タナシルリは 皇太后の前にひれ伏し マハの命だけはと懇願する

ソ尚宮とヨン尚宮に マハの面倒を見させてほしいと…!

マハが拾い子だということは 百も承知の2人である

しかし マハを実子と思い込むタナシルリの涙に ひれ伏さずにはいられない

皇太后は まるで汚らわしい者に触れられたかのように

足元に縋りつくタナシルリの手を振り払った…!

 

ペガンは 皇太后の言葉をあらためて噛みしめる

あくまでもキ・ヤンを信じたいが 皇太后の話も一理ある

さらに皇太后は 皇室の姻戚になることを提案してきたのだ

キ・ヤンではなく 我が姪を皇后に据えれば…

たとえ3公の復活により権力が分散されても 立場が盤石なものになると!

 

真夜中 タルタルが呼ばれた

 

ペガンはキ・ヤンを 『たかが高麗(コリョ)の女が!』と吐き捨てる

そして 姪のバヤンフトに皇后教育をさせると言い出すのだった!

 

『叔父上!』

『強固な国造りを阻む者は たとえキ・ヤンでも斬り捨てる!!!』

 

すでに権力欲に溺れているペガンを タルタルは茫然と見つめる

丞相の座を手にする前と後では こんなにも人が変わってしまうものかと

 

やがてタナシルリは トクマンの指示により刑場へ連行される

はじめに運ばれた毒薬を 力任せに投げつけ 陛下を呼べと喚き散らす

そこへ皇帝タファンが 毒薬の器を持つ10数人の者たちを従え現れた

次の器も また次の器も叩き捨て ついにはタファンの胸に投げつける!

 

『すでに父上と兄上を殺し 敵を取ったではありませんか!

なぜ私まで殺す必要が? 理由をお聞かせください!!!』

 

『理由だと? 何人もの尊い命を奪ったことを もう忘れたか?』

 

『一体誰が… 誰がそうさせたのですか?

私をこんな風にしたのは陛下だと なぜ分からないのですか!!!』

 

『最期まで 己の罪を認めぬのだな』

 

『陛下も罪人ではありませんか! なぜ私だけが死なねばならないと?

マハには… どう説明を? マハの命をも奪う気なのですか!!!』

 

『黙れ』

 

そう一喝し 人だかりの後方から進み出たのは キ・ヤンであった

そして 『このような極悪人を毒薬で殺すのは生ぬるい!』と言い放つ

市中を引き回し 民の面前で絞首刑が妥当であると…!!!

 

居合わせた側室たちは青褪め タナシルリも凍りつく!

かつては皇后の地位に君臨していた者が このように処刑されるなど

これ以上の屈辱はないが すべてはタナシルリが招いた結果でもある

 

皇帝タファンは キ・ヤンの命じたままにと言い残し去って行く

一転してしおらしくなるタナシルリ

せめて殺される前に もう一度だけ我が息子に会わせてほしいと懇願する

そんなタナシルリを引き寄せ 耳元で囁くキ・ヤン

 

(息子など… 産んでいないのでは? マハは… 偽者

尼僧らを皆殺しにして奪った… 血の繋がらない偽者では?)

 

タナシルリは マハが我が子であるという幻想から 次第に目覚めていく

 

(お前の死後 マハは偽者だと公表され 一族は根絶やしとなる

あの世で その様を見届けるがよい…!)

 

城門の前に刑場が設けられた

タナシルリは 黒い頭巾を被せられ処刑台に引き摺られていく

見守る群衆の中には 兄タンギセの姿があった

哀れな妹のもとへ 今にも駆け出そうとするタンギセ

ビョンスとチョチャムが 両脇を抑え込み必死に食い止めている

 

(ここで見つかれば 我々も殺されてしまう!)

 

キ・ヤンが 喚き散らすタナシルリの 頭巾を取れと命じた

一体 誰が処刑されるのかと見物していた群衆が 一斉に怒号を浴びせる

ヨンチョルの娘だと知り 哀れみのため息が罵声へと転じていく

タナシルリはもう 泣き喚く気力さえなくなった

 

首に縄がかけられ ハラハラと涙を流し怯えるタナシルリ

 

キ・ヤンは 亡きパク・オジンや 共に惨殺された高麗(コリョ)の女性たち

さらには 生き別れたままの我が子 ピョルに思いを馳せる

この女に奪われた多くの尊い命を思い 涙するキ・ヤンであった

 

いかにも哀れそうに 処刑されようとしているタナシルリ

まるで被害者のごとき恨み言を喚き散らすタナシルリ

群衆の中に わが兄タンギセを見た瞬間 足場が外された

 

タナシルリが処刑され 後宮は キ・ヤンを中心に廻り始める

大明殿において 正式に皇后となるのも時間の問題であった

あのヨンチョル一族を掃討し 皇帝タファンが親政を行えるのも

すべてはキ・ヤンの功績であると 誰もが知るところである

 

しかし…

 

皇太后は “高麗(コリョ)の血を引く者”の存在を否定する

モンゴルの血を引くマハ皇子こそが皇太子になるべきだと…!

 

大明殿の外で 声高らかに反対の意を叫ぶ皇太后…!

髪を下ろし 皇太后の衣を脱ぎ 白装束姿でムシロに座っている

断じて高麗(コリョ)の女を皇后にしてはならぬと

皇帝に対し 席藁待罪(ソッコテジェ)の構えで抗議するのであった!

 

タファンは どうせ皇太后の難癖だと高を括っている

三公と大臣らが認めているのだから 必ずヤンが皇后になれる筈だと…!

 

※席藁待罪(ソッコテジェ):喪服を着て藁の筵に跪き王の許しを請う行為

※三公:官制において最高位に位置する3つの官職

 

そこへ 丞相ペガンとタルタルが現れる

タルタルは 皇帝の前に1冊の名簿を差し出した

皇后の座には モンゴルの血を引く者が就くべきであり

キ・ヤンを皇后にしてはならないという上奏の名簿なのだという

 

『新たな皇后が決まるまで 禁婚令を敷くべきです』

『私はもう用済みだから 捨てるということですか?』

『キ・ヤン様の目的は ヨンチョル一族に対する復讐だったはず

目的はもう果たされたのではありませんか? それ以上の欲はお捨てに』

『…わかりました』

 

皇后ではなく ただの貴嬪となるべきだというペガン

キ・ヤンは その先を論じることなく引き下がる

あの時 ワン・ユが言ったとおりの結果になろうとしている

いつか必ずペガンは敵となる キ・ヤンを排除しようとすると…!

 

丞相ペガンの姪バヤンフトが入宮する

皇帝タファンは それを冷ややかに出迎えた

バヤンフトは実に美しく ペガンが推すだけあり 自信に満ちていた

優雅に挨拶するバヤンフトであったが タファンは…

 

『バヤンフト そなたが皇后になることは 万にひとつもあり得ない!』

『いいえ 陛下はきっと私を皇后になさいます』

 

皇帝の冷遇にまったく動じず 笑顔を崩さないバヤンフト

その光景を遠くから見つめるキ・ヤン

宦官ブルファが ヤンの耳元で驚くべき事実を報告する

丞相ペガンが 高麗(コリョ)に対し貢女300人を差し出すよう要求したと!

 

その夜 キ・ヤンは密かにワン・ユと会談する

高麗(コリョ)王からの密書には 高麗(コリョ)のために協力をとあった

父王の意志は 無視してほしいというワン・ユ

しかしキ・ヤンは 思いがけないことを口にする…!

 

『どうぞ私の手をお取りください』

『……』

『父の恨みを晴らそうとして あの者らの本性を忘れていたのです

この国で苦しむ高麗(コリョ)の民のため そして何より自分のためにも

今後は戦わねばなりません どうか協力してください…!

我が子を皇帝にし 権力の最高位まで昇り詰めます

そのためにも 私の手をお取りください…!』

 

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奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- 第37話 決戦の時

2019-02-12 18:00:00 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ

“散る花と咲く花がいつもここにある”のブログより移行しています

1話~11話はこちらで公開しています

 

※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります

 

 第37話 決戦の時 

 

皇帝タファンは 自らも戦う決意を示すが 侍従コルタが止める

ならば必ず生きて 何としてもヨンチョルを倒せと命ずるタファン

婕妤キ・ヤンもまた 側室らを前に 決戦の準備を進めていた

 

※婕妤:後宮の階級 三妃九嬪のうち九嬪7番目の位

 

宦官が使用する武器を 掖庭宮に集めさせ あるだけの穀物を用意する

また 火矢による攻撃に備え そこかしこに水桶を配置した

しかし これだけの防御策では 到底持ちこたえられぬという皇太后

 

※虚勢を施された官吏

※掖庭宮:皇后・妃嬪が住む宮殿

 

『ペガン将軍が城内に攻め入るまでは 何としても持ちこたえるのです』

『ところで… 陛下は今どちらに?』

 

皇帝タファンは 丞相ヨンチョルと酒を酌み交わしていた

親政を施し 真の皇帝として 自らの意思で玉璽を押したいというタファン

いつになくはっきりとした物言いをする若き皇帝

ヨンチョルは それをたしなめるように諭す

権力を捨てたからこそ 皇帝という地位に留まっていられるのだと…!

 

同じ時 ワン・ユの“別動隊”が 丞相への伝令兵を斬り殺していた

部下たちには ペガンの兵が敵を見間違わぬよう 鉢巻きをせよと命ずる

ウォンジンが ワン・ユの裏切りに気づいた時

そこからは まさしく時間との戦いとなる

少数精鋭の部隊では 長引くほど不利になるからである

 

決死の戦いの中 パン・シヌが内鍵を外し門を開けた!

ペガンの軍勢がなだれ込むように侵入し ウォンジンが斬り殺される!

 

その時 丞相ヨンチョルは ようやく息子からの知らせを受けていた

長官たちが ペガンの側についたと知るが 時すでに遅し…である

 

『ワン・ユとウォンジンに タンギセが来るまで持ちこたえろと伝えよ!』

 

ヨンチョルはまだ ウォンジンの死も ワン・ユの裏切りも知らない

タプジャヘに 皇帝と皇太后 キ・ヤンと側室らを 直ちに殺せと命ずる!

これまで どんな事態になろうと このような命令をすることはなかった

しかし今こそ 皇帝を殺す名分が整ったというヨンチョル!

自ら玉座に就くその時を確信し ニヤリと笑う…!

 

タプジャヘは 父の意を察し 兵を率いて掖庭宮へ向かった

皇后タナシルリは ソ尚宮に起こされ 政変が起きたと知らされるが

あとは父と兄に任せればいいと 眠そうにあくびをするだけだった

 

掖庭宮では

 

宦官たちが 歯を食いしばり内側から門を守っている

塀を越えようとする敵を 次々と弓で射抜く!

掖庭宮の中に 兵士はいないはず

宦官と側室たちの守りを破れぬとあっては タプジャヘの面子が立たない!

 

いよいよ門が打ち破られ 直接の戦いが始まる!

侍従コルタも 宦官ブルファも そして婕妤キ・ヤンと皇帝自らも

果敢に立ち向かい 敵を倒していく!

 

皇太后は 皇帝とキ・ヤンの息子アユルシリダラを抱き ひたすら祈っている

一方 皇后タナシルリもまた マハ皇子を胸に抱き微笑んでいる

まもなくこの国の“皇帝”となる 息子の寝顔を見つめながら…

 

『マハを皇帝にし 私が自ら垂簾聴政を行う

そしてこの国を 太平の世へと導いていくのだ!』

 

※垂簾聴政:皇帝が幼い場合、皇后または皇太后が代わって摂政政治を行うこと

 

大明殿の玉座に 丞相ヨンチョルの姿があった

ペガンの決起により 思いがけず皇帝を殺す名分が整った

これはまさに 玉座を手にせよという天の啓示だと 笑いが込み上げてくる

 

※大明殿:元の皇居の主殿

 

そこへ『お逃げください!』と叫びながら 兵士が駆け込んでくる

すでに守備隊は全滅し 将軍ペガンが掖庭宮に向かっていると…!!!

ヨンチョルの笑いは声にならず 一瞬にして表情が凍りつく

 

掖庭宮では

 

タプジャヘの兵が 掖庭宮の者たちを追い詰めていた

『皇帝を殺せ!!!』との命令に タファンは冷静な表情のままである

『剣を下ろせ』と命ずるタファン

これまでは 同じ言葉を味方に命じ 自ら屈してきた

しかし今は その言葉をタプジャヘの兵士たちに投げかけている

兵士ひとりひとりの前に立ち『この皇帝を殺せるか?』と問う

 

『私の父上が皆殺しにせよと命じた! 丞相の命令である!』

『ならば誰が? 誰が余を殺すのだ お前か? それともお前か?!』

『こ…殺せないとでも? 誰か! 殺した者に1万両やるぞ!!!』

 

このタプジャヘもまた 兄タンギセ同様 父の威を借るばかり

皆殺しだと叫びながらも 微動だに出来ず突っ立っている

 

そこへ ようやくペガンの軍勢が到着した!

目の前の状況は まさに絶体絶命!

下手に動けばタプジャヘの剣が 皇帝の胸先を貫くように見える

しかし その状況にありながらも 皇帝タファンに怯えはなく

むしろ優勢なはずのタプジャヘが汗だくになり 追い詰められていた

 

『丞相の兵士たちに告ぐ 今すぐ剣を捨てよ さすれば命は助けよう

しかし あくまで謀反に加担すれば 一族郎党を滅する!』

『殺せ… 皇帝を殺すのだ!』

『命令する 今すぐ投降せよ!』

 

丞相の兵とはいえ この国の民であり 皇帝の民である

いかに丞相の権力が絶大であり この若き皇帝が無力であっても

皇帝の命令こそが絶対であることを 兵士たちは知っている

 

婕妤キ・ヤンは 感動に打ち震えタファンを見つめた

権力欲に駆られて ただ玉座に目が眩む者と

産まれながらに 皇帝になる運命を背負う者との違いがここにある

 

兵士たちは次々と剣を捨て タプジャヘはひとり孤立した

そしてあっけなく ペガンの剣により絶命するのだった

 

『陛下! 到着が遅れた不忠を どうかお許しください!』

『お許しください!!!』

 

ペガンがひざまずき 続いて兵士たちもひざまずき忠誠を示す

タルタルと 婕妤キ・ヤンは視線を合わせ 小さくうなずき合った

綿密な計画に基づき この決戦に勝利出来たのは この2人の功労である

 

ヨンチョルは 僅かな兵に守られながら北門を目指していた

玉座に座り 皇帝になる時を思い 笑みすらこぼしかけていた老将は

ペガンの本意も ワン・ユの裏切りも 長官たちの寝返りも知らず

敵がどこの門から攻め入ったかすら把握出来ていない

すべての門が封鎖され もはや逃げ場がないと知り 初めて呆然とする

 

今の自分を護衛するのは 名前すら知らぬ未熟な兵士たち

2人の息子も 信頼したワン・ユも 忠臣ウォンジンの姿もない

 

『もう疲れてしまった 屋敷に戻って寝るとしよう…』

 

屋敷の門前には チェ・ムソンが立っている

そして横並びに ヨンビス パン・シヌ チョンバギが…!

 

『ワン・ユの守備隊たちです!』

『そうか! ワン・ユが助けに来てくれた! ワッハッハッハ…!!!』

 

ヨンチョルの笑い声が止まらないうちに 護衛の者たちが斬り殺されていく

一瞬 何が起きたのか理解出来ないヨンチョル

パン・シヌが 丁重に礼を尽くし『王様が中でお待ちです』と告げた

 

裏切られても尚 ヨンチョルは ワン・ユを説得しようと試みる

この場から城外へ逃がしてくれたら 高麗(コリョ)の王座でも何でも

欲しいものは何でもくれてやると まだ敗北を受け入れられないヨンチョル

自ら皇帝になり 再びこの手に権力を取り戻せたら 何でも与えると…!

 

『皇帝になったら まず何をなさいますか』

『まずは皇帝タファンを殺す』

『それから?』

『今回の火種となった あの憎き女!キ・ヤンを八つ裂きにする!』

 

ヨンチョルの口から 国に対する思いも 民への思いも聞くことは出来ない

権力欲だけが彼のすべてであり 皇帝の座を欲する以外には展望すら持っていない

 

皇后殿では

 

タナシルリが ひたすら父の勝利の知らせを待っていた

あの憎きキ・ヤンは まだ殺されてないのか?

まだ生きているのなら この手で殺してやる!と息巻く

そこへ 婕妤キ・ヤンが 側近を引き連れ現れ

タナシルリは 皇太后の前に引き摺り出された

 

『この国の皇后に向かって無礼であろう!

父親が過ちを犯したとて 皇帝の嫡男を産んだ私に何の罪が?!』

『そなた“謀反”の意味がお分かりか? 謀反は一族を滅する大逆だ!』

『ならば娘婿である陛下も滅さねば!』

 

悔い改める意思など 微塵もないタナシルリ

その頬に 皇太后の平手打ちが飛ぶ!

 

さらには皇帝に代わり“廃位”の皇命が言い渡された!

冷宮へ連行されようとして タナシルリはキ・ヤンを睨みつけた

 

『これで終わりではないぞ! この命続く限り戦いは終わらぬ!』

『ならば… 今すぐ終わりにしましょうか?』

 

ギロリと睨み返すその視線に たじろいだのは 皇后ではなく皇太后だった

今日の勝利を導いた功労者であり 皇帝が唯ひとり寵愛する側室ではあるが

皇太后は その恐ろしさがタナシルリの比ではないことを感じ取っていた

 

一夜明け

 

ヨンチョルが 屋敷から連行されようとしている

仮にも丞相として君臨していたヨンチョルに対し

ペガンは 縄を解くことで最期の礼を尽くした

 

ワン・ユに対し 一番の功労者として参内せよと 皇帝の意を伝える

しかしワン・ユは 共に戦った同志と酒を酌み交わしたいと答えた

 

護送されるヨンチョルは 民の前に晒され罵倒を受けた

搾取され続けた民の怒りは強く 容赦なく石が投じられた

 

『皇帝陛下万歳!』

『ペガン将軍万歳!』

 

民の賞賛を受けながら ペガンが馬を降りヨンチョルのもとへ

ヨンチョルは 英雄然としているペガンを見つめ微笑んだ

 

『30年に及ぶあなたの統治に 民は怒っているのです

民心こそが天の啓示であり すべては政(まつりごと)に失敗したあなたの罪!』

 

『ペガン 私が反乱軍を制圧して凱旋した日を覚えているか?

今のそなたのように 誰もが私を称賛していた

病弱な王に代わり 国をまとめてほしいと願ったのは民だったのだ

いつかそなたも同じ憂き目に遭う

ヨンチョルの治世の方が良かったと 陰口を囁かれる日がな

民心は移ろいやすいものだ

せいぜい今の勝利に酔いしれるがよい』

 

こうしてすべてが終わった頃

 

ようやくタンギセの部隊が帰還した

門前で待ち構える各行省の長官たち

この大臣たちに裏切られ タンギセは城外で孤立したのだ

父親が捕えられ 市中を引き廻されたことは既に知っている

だからこそ 決して引き下がれないタンギセであった

何としても城門を突破し “家族”を助けねばといきり立つ!!!

 

同じ時

 

別の門からヨンチョルが護送されていた

大明殿の前には 次男タプジャヘの亡骸が磔(はりつけ)になっている

 

『今すぐ息子を下ろし埋めてやれ』

『まもなく市中に晒され 首を撥ねろとの皇命が下っています』

 

ヨンチョルは 息子の亡骸を見つめながら護送されて行く

かつては英雄として仰いだヨンチョルを 複雑な表情で見送るペガン

タルタルは もはや“英雄”ではなく “没落する敗者”に過ぎないという

そして感傷的になる叔父を 厳しくたしなめる

 

『叔父上は 必ず他山の石とならねばなりません!』

 

ひとまず地下牢に投獄されたヨンチョル

皇帝タファンは 婕妤キ・ヤンを伴い獄を訪れた

自分を殺せば それで国を治められるのか?と問うヨンチョル

 

『長いこと私に飼い慣らされた その無様な姿を すべての大臣が見ている

そんな大臣たちを 果たして従わせることが出来るのですか?』

 

こうして捕えられても尚 ヨンチョルの自信は揺らいでいない

自分こそが 今もまだ この国の権力のすべてを支配しているのだと…!

 

『従わぬ者はすべて殺します 誰であろうと 逆らう者はすべて!

その手始めとして まずはあなたの脳天に鉄槌を…!』

『……』

『飼い慣らした? なるほど確かに… しかし ならば…!

そんなあなたの 惨めな最期を見せつけるまでのこと! アッハハハ…!』

 

あまりに豹変したタファンの後姿を 忌々しく睨みつけ

一体どうやって手なずけたのかと キ・ヤンを怒鳴りつける

婕妤キ・ヤンは 皇帝を変えたのは自分ではなく丞相自身だと答えた

あまりに過酷な仕打ちを受け続け その憎しみが怒りに転じただけのこと

陛下自らが 憎しみを怒りに変え強くなったのだと…!

 

さらに婕妤キ・ヤンは マハ皇子がタナシルリの実子ではないと告げる

どこかの捨て子を拾って来て いかにも産んだように見せかけ皆を騙した

つまりは 見ず知らずの捨て子にすべてを受け継ごうとしていたのだと!

 

『そんなことが信じられるものか!』

 

『信じるかどうかが問題ではない! 事実は事実なのだ!

まったく赤の他人のマハ皇子が希望だったなんて 笑える話ですね

どこかの捨て子が希望なら あとは絶望しかないでしょう! アッハハハ…!』

 

謀反が失敗に終わったことより 自身が捕えられ投獄されたことより

マハの出生の秘密こそが ヨンチョルの心を粉々に破壊した

 

タンギセは 少ない兵をさらに失い 惨めに敗走していた

おそらく向かう先は 秘密資金の隠し場所である鉱山の廃坑だろう

ワン・ユは 少し様子を見ようという

秘密資金を奪う時機を間違えば 元に没収されるだけだと…!

 

鉱山では

 

ヨム・ビョンスが タンギセの一行を迎えていた

マクセンは 極僅かの兵と傷だらけのタンギセを見て

丞相が捕えられたのではないかと推察する

 

タンギセは 秘密資金の隠し場所を 具体的に知らされてはいなかった

しかし この鉱山近くの廃坑であろうと睨んでいる

確実には把握していないのだと分かり ビョンスの口元が緩む

 

日が暮れたらすぐに兵を率い 廃坑に向かうというタンギセ

秘密資金で軍を作り 大都を攻めると聞き 明らかに表情が曇るビョンス

そして廃坑へは 兵士ではなくの一団を向かわせる

その中には マクセンの姿もあった

 

一方 大都では

 

大明殿において ヨンチョルの処刑が始まろうとしていた

冷宮のタナシルリは 父の処刑が今日だと知り 嘆きのあまり気絶する

 

ヨンチョルは 処刑を前にしても 周囲に対し熱弁を揮う

タナシルリに代わり やがてはキ・ヤンが皇后となるだろう

しかし敢えて忠告するなら この女こそ遠ざけねば国が滅びると…!

 

『高麗(コリョ)の女が産んだ子を この大元帝国の皇帝に?!

さすればこの国は 高麗(コリョ)の血が受け継ぐことになる!

果たしてそれでよいのか? この高麗(コリョ)の女にすべて奪われるぞ!

皇太后! この丞相を貶めた女が 皇太后を貶めないとでもお思いか?

陛下! 今度はこの女に操られ またしてもお飾りの皇帝に?!』

 

『黙れ!黙らせよ! 早く刑を執行するのだ!!!』

 

ヨンチョルに後ろから縄をかけ 絞首の刑を執行したのはペガンであった

最期の熱弁に 一同驚愕したものの 目をむきもがき苦しむ姿に息を飲む!

皇太后はハラハラと涙を流し 皇帝タファンは瞬きもせず ただ見つめている

死刑を執行するペガンは かつての英雄が絶命する瞬間を

やはり涙なしには受け入れられなかった

 

最期の最期に “高麗(コリョ)の女”と名指しされたキ・ヤンは

血の涙が出そうなほどに目を見開き その死に顔を睨んでいる

 

(丞相よ よくぞこの先の道を示してくれた!

ならばそのように! この“高麗(コリョ)の女”がすべてを奪う…!

いずれは我が子を皇帝にし この国を意のままに操ってみせようぞ!!!)

 

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奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- 第36話 挙兵の秘策

2018-11-29 16:25:00 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ

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1話~11話はこちらで公開しています

 

※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります

 

 第36話 挙兵の秘策 

 

『陛下 マハの快復の祝いに お言葉をくださいませ』

『皇子様の 誕生日の祝いには 陛下のお言葉が必要です』

 

タンギセの口添えもあり ここは祝いの言葉を…と促す皇太后

しかし皇帝タファンは それらを無視しアユ皇子を呼べと命ずる

宴の主役であるマハ皇子を無視し アユ皇子を抱くタファン

そして いずれもまだ幼い皇子であることから 後継を決めず

2人を競わせたうえで 皇太子を定めるというのだった

 

憤慨した表情で立ち上がるタンギセ!

フビライ皇帝は “嫡男を後継にする”と そう遺言していると訴えた

 

『ではなぜ丞相は 私の弟を皇帝に?』

 

その時 パク・ブルファが 婕妤キ・ヤンに何かを耳打ちする

そこへ丞相ヨンチョルが 兵を率いて現れた

 

※婕妤:後宮の階級 三妃九嬪のうち九嬪7番目の位

 

世継ぎとなるべき我が孫が ないがしろにされてはたまらない

皇帝を一喝するヨンチョルだが これまでのように怯えるタファンではない

 

すると今度はソ尚宮が 慌てたように現れ タナシルリに耳打ちする

顔に火傷痕が残る尼僧が 宮中に現れたとなれば もう宴どころではない

すぐに私兵を率い 宮中をくまなく捜索するタナシルリ!

 

ヤンが匿う尼僧は 善業寺に身を寄せている

タナシルリは 刺客を送れと命じ 証拠隠滅を謀る

 

パン内官は 尼僧を伴い 城外の根城に向かう

ここから善業寺はすぐそばであり まずは当時の様子を詳しく聞く

こんなことになってしまったのは 自分のせいだという尼僧

2年前 亀岩の付近で赤子を拾い… という言葉に

思わずハッとするパン・シヌ

皇覚寺の火事より 赤子を拾った経緯が気にかかる

尼僧によれば 赤子は 転落死した男に抱かれていたという

奇跡的にも 男の懐で無事だった赤子

尼僧は 男の遺体に数珠を置き 赤子を連れ帰ったというのだ

それはまさに スンニャンが産み落とした赤子を 見失った状況!

チョクホから聞いた話と 寸分違わぬものであった

 

数珠が置かれた 親衛隊員の遺体

“ピョル”と名付けられた赤子の姿はどこにもなく

スンニャンは 半狂乱で赤子の名前を呼び続けた

 

『連れ帰った赤子の 足の甲に 3つのホクロがありましたか?』

『え? …なぜそれをご存じなんです?』

 

何という運命の悪戯か…!

パン内官は言葉を失い 呼吸さえ出来なくなった

この事実を 簡単に明かすことは出来ない

皇后が仕立てた偽皇子が スンニャンの息子だなどと

そして その父親がワン・ユであるなどと…

 

チェ・ムソンもチョンバギも この事実が洩れたらおしまいだという

皇后の悪事などは たちまち掻き消され

ワン・ユとスンニャンの命が危なくなると…!!!

 

パン・シヌは 尼僧を説得せねば! と根城へ急ぐ

しかし既に 尼僧の姿はなかった

身の危険を感じた尼僧は 善業寺へ向かったと思われる

 

すぐさま善業寺へ向かうシヌたちだったが

その途中で 皇后の私兵を見かけ その先で尼僧の遺体を発見する!

 

宮中では

 

尚宮らをお供に 庭園で遊ぶマハ皇子が キ・ヤンの足元で転ぶ

思わず抱き上げたヤンは 衝動的にマハの靴を脱がせた

「皇子の足の甲に…」と言いかけた あの尼僧の言葉が気にかかる

偽皇子と言い切れる証拠が 足の甲にあるというのか…

 

『皇子に触れるでない!!!』

 

タナシルリの一喝で 尚宮が 慌ててマハ皇子を奪い抱く

我が子が大事なら 後継争いから身を引くべきだというタナシルリ

皇太子の座が欲しければ どうぞご自由に と返すキ・ヤン

 

『皇太子の座を争うより 皇室の安寧が優先では?』

『側室ごときが 後宮を率いるつもり?!』

 

その言葉が本心ならば これほど好都合なことはないというソ尚宮

タナシルリは 口にしたからには本心にしなければ… とほくそ笑む

 

パク・ブルファとイ・ホンダンは 波紋を呼ぶのでは?と不安がるが

婕妤キ・ヤンは 後継争いが始まる前に 別の争いが起こると明言した

 

一方 守備隊の訓練所では

 

あの烏合の衆だった 新たな隊員たちが 見事に成長を遂げていた

とても 物乞いや逃げたの集団とは思えない戦いぶりである

ペガンは ワン・ユの指導力と統率力に 恐ろしささえ感じた

そこへ パン・シヌが現れ ワン・ユが会談を求めていると伝える

 

同じ時 皇帝タファンは タルタルを呼び 決起の時が来たと切り出す

危険を伴う戦いであり 丞相に勝てるという確信もない

しかし もう後へは引けないタファンであった

 

タファンは ヤンに 戦いが始まる前に都を去れという

しかしヤンは ここで丞相の最期を見届ける覚悟であると答えた

たとえ決起しても 丞相は 皇帝を殺すことは出来ない

しかしヤンは違うと 重ねて逃げるべきだというタファン

ただひとり逃げて 生き延びることは出来ないと

ここで共に戦い そして勝つのだと 決して譲らないヤンであった

 

タルタルは 2人の間に しっかりとした絆が出来ているのだと確信する

たとえ始まりが 復讐のため 後宮になったのだとしても…

 

丞相ヨンチョルは もはや正気とは言い難かった

夢で ワン・ユに殺されたと呼びつけ なぜ裏切ったのだと詰め寄る

さすがに2人の息子も 夢に過ぎないと取り成すが…

納得がいくように説明しなければ ここで殺すというヨンチョル!

 

ワン・ユは 顔色一つ変えずに どうぞご自由にと答えた

夢であれ何であれ 丞相を守れなかったのなら 命で償わねばと…!

ヨンチョルは 満足そうに笑い これこそが求めていた答えだという

 

一方 鉱山では

 

ヨム・ビョンスが 錫の採掘を急がせていた

メバク商団との取引で 大量の金塊を懐に入れている

大臣の座などより よっぽどいい商売だとほくそ笑むビョンス

 

この鉱山には チョクホが 奴隷として潜入していた

密かに 丞相の“秘密資金”を探すためである

メバクの代表として 取引に訪れるヨンビス

チョクホは ヨンビスと連絡を取り合い

定期的に 調査結果を報告していた

 

“秘密資金”は 確かにこの鉱山にあるはず

しかし ヨム・ビョンスがどこに隠しているのか 見当もつかない

ただひとつ チョクホが怪しいと睨む場所は 近くの廃坑だった

なぜかそこには ビョンスが誰も入らせないのだと

 

ヨム・ビョンスは “秘密資金”の在りかを知っているわけではなかった

ビョンスもまた この廃坑が怪しいと睨んでいるのだ

廃坑の中の坑道は 複雑に入り組んでいて 探すこともままならない

それでも ここにきっとあると断言するビョンス

 

『丞相が この廃坑は命と引き換えにも出来ないと言っていた

だからきっとここにある! “秘密資金”はここにあるはずだ!』

 

ヨンビスは 廃坑の件について ワン・ユに書状を出す

届け役の側近は なぜ拷問されたことを報告しないのかという

メバクの頭に 酷い拷問を受けてまで商団に戻ったのは

ワン・ユに協力するためだったのだから 知らせるべきだと…!

 

『まさか ワン・ユ殿をお慕いしているのですか?』

『ただの同志に過ぎぬ! 余計な詮索はするでない!!!』

 

皇帝タファンは 大臣たちに向け書状を書く

それは 丞相ヨンチョルの これまでの所業を断罪するという

皇帝としての誓いを立てる内容であり 各大臣の協力を要請するものであった

悪の元凶である丞相と その一族を根絶やしにするという過激な文面に

たとえそれが 皇帝の真意であり 心から賛同出来るとしても

身震いが止まらない大臣たち…!

 

しかし 大臣たちは 意を決して皇帝のもとへ集結した

 

皇帝タファンから 大臣たちに

『挙兵せよ』という命が下る

 

あまりに唐突な皇命に 戸惑う大臣たち

各行省付近には 丞相の私兵が駐屯しており

少しでも不審な動きを見せれば 逆賊と見なされ攻撃されてしまう

 

タファンは そうした大臣たちの声にも 余裕の表情で答える

勝手に挙兵するのではなく 丞相が自ら挙兵を命じることになる

それが 皇帝タファンの“秘策”であった

 

同じ時 将軍ペガンは 出兵の準備をしていた

大軍で動くことはせず 100人ずつが時をずらして動く

そして密かに集結し 3日のうちに大都を目指す作戦である

 

婕妤キ・ヤンは 皇太后に謁見する

それはまさに 上奏文が 皇帝のもとへ届けられるのと同時であった

 

タファンは 当然のごとく上奏文を手に取る丞相を制し

もう助けは結構!と言わんばかり 勝手に上奏文を読み始める

丞相ヨンチョルが お飾りに過ぎない皇帝の暴走を 認める筈がない

タファンをギロリと睨みつけ いつものように上奏文を奪い取る!

ヨンチョルが手にしたのは 将軍ペガンからの上奏文であった

 

これまでの 丞相の悪行は数知れず その罪は斬首に値する

悪の元凶ヨンチョルを討つべく 挙兵する

皇帝陛下より 各行省の長官に呼びかけ 参戦するよう命じてほしいと!

 

さらにペガンは 先帝の“血書”を入手したと報告し

丞相に殺されたとされる 先帝の“血書”こそが 挙兵の名分であるという

 

丞相は 大臣らを召集し ペガンの上奏文を読み上げた

そしてもうひとつの“血書”を掲げ ペガンの“血書”は偽物だと言い切る!

 

丞相の“血書”には 玉璽が押印されており

これこそが本物である証しだと 声高らかに笑うヨンチョル

タファンは やれやれ…という表情でため息をつき

大臣たちの顔には 明らかに失笑が浮かんでいる

 

皇帝タファンは 大臣たちに “本物の血書”を見せていた

本物の証しは 玉璽ではなく 息子だけに分かる“蝶の印”なのだ

皇室だけに伝わる この“蝶の印”に ヨンチョルは気づいていない

奪った玉璽で 本物と言い切るヨンチョルは 滑稽にすら見えた

 

ここでタンギセが 逆賊ペガンを成敗すべきだと言い出し

大臣たちもまた ペガンを迎え撃つべく挙兵すると叫ぶ…!

 

これで 挙兵の段取りは 無事に整ったことになる

 

丞相ヨンチョルは 大満足で大臣たちを見回す

皇帝に従う者は 誰ひとりいないと…!

タファンは これまでと同じように 愚かな皇帝を演じていた

今は少しでも長く ヨンチョルを油断させ 権力に酔いしれさせる時だ

それでこそ 挙兵の秘策が成功するのだ

 

『皆に命ずる! 全軍挙兵し 逆賊ペガンを捕えよ!』

 

形ばかりの皇命を 高らかに発するタファン

すると皇后タナシルリが 問題がひとつ残されていると言い出す

“逆賊の養女”が側室になり 我が物顔でのさばっていると…!

 

『この女を斬首なさいませ! それでこそ皇帝の威厳が示されます!』

 

これに異を唱えたのは 皇太后であった

アユ皇子の生母を殺すなど 決して許されないという皇太后

将来 皇太子の座を競わせるという 皇子の母親なのだ

皇太后は 冷宮に送ることが妥当であると提案する

 

※冷宮:罪を犯した王族を幽閉する場所

 

タナシルリは 冷宮での苦労を思い出し それも悪くないとほくそ笑む

一瞬で命を奪うより キ・ヤンを苦しめるにはその方が… と思い直す

 

これもまた 婕妤キ・ヤンが計画した通りの展開であった

タナシルリがどう出るかは 既に予測され 皇太后には冷宮の提案をと

冷宮こそ 宮中が戦乱に陥った時の“避難場所”になると…!

 

『では… 婕妤キ・ヤンを… 冷宮へ!』

 

いかにもつらい決断のように タファンは声を詰まらせた

何もかも 丞相一族の言いなりになる 情けない皇帝そのものであった

 

タンギセと大臣たちは 直ちに作戦会議を開く

連行される婕妤キ・ヤンの あまりに堂々とした姿を訝しむソ尚宮

タナシルリは 自分が味わった苦悩を 存分に味わうがいいと睨みつける!

 

タファンは 冷宮へ送られる前のヤンと 作戦の成功を誓い合う

婕妤キ・ヤンは 他の側室たちも皆 冷宮へと命じていた

ここはまさに 戦乱から身を守る要塞となるのだ

蔑みの笑みを浮かべたタナシルリは いずれ嘆くことになるのだと…!

 

丞相ヨンチョルは 息子タンギセに丞相の座を譲ると約束した

さらには “秘密資金”の在りかを教え 継承させるとまで!

タンギセは 初めて自分を認めてもらえたことに感涙し ひざまずく

そして 弟タプジャヘに父の補佐を命じ 出陣していくのであった

 

タンギセを見送ったワン・ユは 直ちに“別動隊”へ連絡する

そこへ ワン・ユを訪ね ヨンビスが加勢に現れた

身の危険を承知の上で メバク商団へ戻ったヨンビス

その苦労を労うワン・ユだが ヨンビスがどんな仕打ちを受けたのか

ヨンビスもまた 詳細を語るつもりはなかった

 

いかに戦乱時の“要塞”になるとはいえ 冷宮はあまりに寒かった

冷宮を訪れたタファンは 芯まで凍えたヤンを温めようと きつく抱きしめる

皇室をないがしろにし 権勢を揮い続けた丞相を討ち

皇帝の地位を取り戻すためには 今を耐え忍ぶしかないのだった

 

一方 タンギセは いくら待っても現れない大臣たちに

何かがおかしいと気づき始めていた

さらには偵察兵が 遼陽のペガンの屋敷はもぬけの殻だと報告する

そしてようやく ペガンは大都を目指し 大臣たちにも裏切られたと知る!

 

『大変だ! 今すぐ父上に知らせよ!!!』

 

タンギセが 兵を率いて出陣したことで

今の丞相を守れるのは 都の守備隊だけとなってしまった

ペガンのもとへは 全ての大臣が兵を率いて合流していた

 

ここからが正念場だと 気を引き締めるようにというタルタル

計画は無事に進行しているが タンギセより早く都に到着し

一気に丞相を討たねば 真の勝利にはならないのだ

 

タンギセが送った伝令兵は ヨンビスの矢に撃たれ絶命した

偽の伝令が 丞相のもとへ急ぐ!

タプジャヘは 兄上が勝利し ペガンを生け捕りにしたと

偽の伝令の報告を 父親に伝える

 

ヨンチョルの側には ワン・ユと 守備隊副隊長ウォンジンが同席している

ウォンジンは 凱旋するタンギセを迎えるべく 北門を開けていた

そこへ ペガンの軍勢が近づいていると 早馬が知らせを持って来た!

慌てたウォンジンは 直ちに門を閉じ ワン・ユへ伝令を送る!

 

ワン・ユは “別動隊”と共に 出陣しようとしていた

1,000人にも上るウォンジンの守備隊を倒すべく… である

僅か100人の“別動隊”が 北門を開けることが出来なければ

この計画は失敗に終わってしまうだろう

是が非でも門を開け ペガンの軍勢を引き入れなければならないのだ!

 

婕妤キ・ヤンは 側室と宦官らを召集し 来たるべき戦乱に備える

いざとなれば 何としても我々だけで 陛下をお守りせねばと!

 

『この計画は いずれ丞相の知るところとなる

丞相は 陛下と私たちを 決して生かしておかないでしょう

親衛隊も私兵も 宮中の兵士は全て丞相の手の者

私たち側室と女官 そして宦官だけで 陛下をお守りするのです

宦官の武器を掖庭宮に運び 放火に備え水桶を各所に置きなさい

宮中の戦乱とは別の戦が ここで始まるのです』

 

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奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- 第35話 ふたりの世継ぎ

2018-06-12 11:00:00 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ

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1話~11話はこちらで公開しています

 

※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります

 

 第35話 ふたりの世継ぎ 

 

婕妤キ・ヤンは 毎晩のように悪夢にうなされている

悪夢を見るばかりか 体に傷ができているのだ

まるで獣に噛まれたような傷痕を見て タルタルが表情を曇らせる

 

『身の回りと周辺を調査してください お札が隠されているはずです

その札には“死者”の名が書かれています おそらくヤン様の名前が…』

 

犬蠱術は どの呪術師でも出来るという呪いではない

捜すことは容易だというタルタル

トクマンの指揮により 徹底的に調査されたが お札は出てこない

 

キ・ヤンの怯えは 次第に怒りへと変わっていく

 

お札が発見されないまま 体の傷は増えていく

皇帝タファンは タナシルリの仕業に違いないと憤り

すぐにも怒鳴り込んでやめさせようとするが

確証がなければ シラを切るのは目に見えている

 

皇后タナシルリは 婕妤キ・ヤンを呼びつけ 体調を確認する

ヤンは隠すことなく 眠れぬ日々が続いていると報告した

 

その夜

 

ヤンの居所の周辺から とうとうお札が発見された

確証が得られた今 ヤンは 絞り込んだ呪術師らと直接会う

そして タナシルリと結託した呪術師を突き止めた…!

 

タナシルリは 毎晩のように 祭壇で呪いの呪文を唱え続けた

そうでもしなければ キ・ヤンの気力に押し返されてしまうだろう

しかし… 祈祷の途中で 皇帝タファンが現れた…!!!

 

ただマハの健康を祈っているだけ という言い訳が通じるはずもない

捕えられた呪術師とともに ソ尚宮とヨン尚宮らが連行される

拷問の痛みに耐えきれず 女官の1人が白状しようとするが

 

『偽りを申すでない! 皇后様の逆鱗に触れるぞ!!!』

 

ヨン尚宮の怒声に 呪術師がため息をつく

それではもう 皇后の差し金と告白しているようなものだ

 

ひとり残されたタナシルリは 慌てて兄タンギセを呼び

すぐにも拷問をやめさせてほしいと懇願する

誰かひとりでも白状してしまえば 丞相一族が崩壊してしまう…!

 

皇帝タファンは 皇太后に報告し ペガンとタルタルを交え協議する

たとえ呪いの事実が明らかになっても 丞相一族との闘いに勝算はない

長官らと結託しても 各行省は 都からあまりに遠い

進軍の途中で 丞相の軍隊に阻まれてしまうというのだ

 

唯一の方法として 兵を引き連れ大都に入る策があるというペガン

しかし 都の守備隊は強靭な兵の集団で 破ることは難しい

だからこそ 守備隊長としてワン・ユがいるのだというタルタル

ヤンには どういう意味なのか見当もつかない

 

ペガンは ワン・ユに復位を約束し 協力を請うべきだと進言する

皇帝の意を伝えるため ペガンとタルタルは 守備隊に向かう

ヨンチョルの私兵と称される守備隊である

ワン・ユは 守備隊長として まだ全体を掌握できずにいた

 

忠誠を誓う守備隊長ウォンジンが 降格されたことに反発し

既に100名以上が辞めていき 志願者を募ったが ろくな人材が集まらない

このままでは 挙兵の計画にも影響が出そうな事態であった

 

志願者たちのほとんどが 物乞いや逃げたなど流れ者ばかり

すべては ウォンジンの嫌がらせで 集められた者たちだった

月々3両の給金があり 寝る場所もあって食い物にも困らないと…

ふざけるな!と怒り出すチョンバギ

しかしワン・ユは 皆に食事を用意しろと命ずる

この者たちを締め出し また募集したところで同じことだと

訓練所は たちまち集会所のようになった

精鋭を育て“別動隊”を作るという計画からは 程遠い者たち

その1人1人に話しかけ なぜ今のような境遇になったのかを聞くワン・ユ

 

聞けば 重い税に苦しみ逃亡した者

疫病で家族を失い 天涯孤独になった者

屋敷のだったが 主人に殺されそうになって逃げた者…

ワン・ユはさらに 牛と馬を潰し肉を食わせてやれという

国の禄を食む“武人”になるのだから それなりの待遇をせよと

 

パン・シヌたちは いくら訓練しても無駄だと抗議する

この者たちで精鋭部隊を作るなど とても無理だと…!

 

『彼らには 機会が与えられなかっただけだ

ここで機会を与えれば あの者らが いずれ私を復位させてくれるだろう』

 

皇后殿では

 

ようやく尋問から解放された ソ尚宮とヨン尚宮が戻っていた

厳しい拷問に よくぞ耐えてくれたと 涙ながらに感謝するタナシルリ

そこへ マハ皇子が麻疹にかかり重体だとの知らせが入る…!

 

この時代の麻疹といえば 救いようのない病である

神に祈るしかないと言われ すぐに陛下を呼べと命じるが…

 

婕妤キ・ヤンの居所では

 

皇帝タファンが 感慨深げに ヤンと語らっていた

丞相に怯え 操り人形として生き永らえるしかなかった日々

ヤンが側室になるまでは 長官らと結託し 丞相一族と戦おうとは

これまで 夢にも思わないタファンであった

 

『決戦は 遠い未来ではありません

タルタル将軍は戦略を考え ペガン長官は 精鋭を育てている

陛下は 更なる威厳を備えるべく 精進してください』

 

そこへ 侍従コルタが マハ皇子の病状を伝えに現れる

すぐにも駆けつけた方が… と促すヤンだが タファンは行こうとしない

 

『正直 マハには情というものが湧かないのだ

ただ皇后の息子であり 丞相の孫というだけで 息子という気がしない』

 

訪ねて来ないタファンに憤慨し ヤンの居所へ乗り込むタナシルリ

しかし 皇帝が訪室している側室の居所へは

たとえ皇后でも立ち入ることは許されないと 侍従コルタが行く手を阻む

 

タナシルリは コルタの頬をしたたかに打ち 中に向かって叫ぶ

息子が病気というのに 側室と戯れるとは あまりに不謹慎だと!!!

この騒ぎに 怒るタファンをなだめ 自ら部屋の外へ出るヤン

 

『皇子様のご病気は 皇后様のせいでは?

私が呪いに打ち勝った場合 呪術師はどうなると言いましたか?

父や兄妹 もしくは息子 身内に撥ね返ると聞きませんでしたか?

ゆえに 皇子様のご病気は 皇后様のせいであり 自業自得でしょう!』

 

ヤンの言葉に衝撃を受けたタナシルリは 歩くのもままならない

そんなタナシルリに ソ尚宮が 喝を入れるように進言する

 

『どうか落ち着いてください! 跳ね返るのは血縁の身内にです!

皇子様とは 血縁の仲ではございません!』

 

『黙れ! マハは私が産んだのだ! 私の息子なのだ!!!

皇子を侮辱するとは… そなた命が惜しくないのか!』

 

完全に狂っていると 感じずにはいられない2人の尚宮

皇后様には もはや現実が見えなくなっているのではないかと…

 

タナシルリは マハが 腹を痛めて生んだ我が子であると錯覚していた

マハの存在だけが 皇帝の心を繫ぎ止め 自分の存在を固持できると

水乞いの荒行で身を清め マハの快復を祈祷するタナシルリであった

 

同じ時 丞相ヨンチョルは 悪夢にうなされ正気を失っていた

夢の中で 自らの死体を見せつけられ 不敵に笑うタファンがいた

 

『お前を殺す! 父親同様!殺してやる!!!』

 

父親の叫びに驚き 何事かと駆けつけた2人の息子

その手に握られた剣で ヨンチョルは 息子たちに向かって斬りかかる!

 

『私を殺しに来たのか! この権力を奪おうというのかぁーーーっ!』

 

絶叫したまま気絶するヨンチョル

タンギセとタプジャヘは 初めて見る父の姿に動揺し うろたえる…!

 

一夜明け マハ皇子の熱が下がり始めたと聞き 安堵するタナシルリ

自らの命を懸け 快復してほしいという祈りが通じたと

さらにマハへの執着は強まり 血縁ではないという現実が見えなくなっていく

 

一方 守備隊の宿舎では

 

志願兵たちの腹ごしらえも終わり 本格的な訓練が始まろうとしていた

訓練をやり通した者だけが 兵籍簿に名を記され 軍服が着られる

脱落者は罪人となり にされ 辺境で労役をさせられると聞き

動揺した志願者たちは 志願を取り下げると言い出した

 

冗談じゃない!と憤慨し になるなんて真っ平だという志願者たち

ワン・ユは 虫けら同然に生きてきた過去を清算する機会だと叫ぶ!

訓練を耐え抜き 武人としての未来を手に入れるか

これまでと同じく 虫けらのように生きるか 今こそ選ぶ時だと…!

 

9つの山を 全員で駆け抜ける

1人でも脱落する者がいれば また最初からやり直し

脱落者が出るたび その者たちを責めてばかりの志願者たち

 

ワン・ユもまた 足のマメが潰れ血が滲んでいる

休むようにと懇願するシヌたちに 自分もまた“脱落者”だとつぶやく

 

『私もまた“脱落者”の1人ゆえ 廃位させられた

彼らと何も変わらぬ だからこそ諦めたくない

この訓練すら乗り越えられないなら ここで一緒に死ぬまでだ』

 

野営地の静かな夜に ワン・ユの言葉だけが響き

志願者たちは その思いを知り深く考え込む

 

翌日から 皆の意識が変わり始め 脱落者を助けるようになる

励まし合い 少しでも前へと進む志願者たち

 

無事に訓練を乗り越え ようやく武術の修練に入るが

そのへっぴり腰を 鼻で笑うウォンジン

丞相の私兵と称された守備隊が このような素人集団に成り下がったと

いずれワン・ユが 隊長の座から引き摺り下ろされる日も近いとほくそ笑む

 

そして 9ヶ月の時が経ち

 

婕妤キ・ヤンは 出産の時を迎えていた

そして タナシルリの祈祷も虚しく ヤンは 元気な男の子を産んだ

落胆のあまり 腰が抜け むせび泣くタナシルリ

皇帝に疎まれ続け 冷遇され マハへの愛情も得られない

一心に寵愛を受ける 婕妤キ・ヤンの男児出産は まさに“脅威”であった

 

皇帝タファンは 生まれた皇子を“アユルシリダラ”と命名する

 

この慶事は ワン・ユのもとへも報告された

ようやく形になってきた兵士たちを見ながら ワン・ユは過去を思い出す

互いに違う道を行くと決め 思いを断ち切ったあの日

そうでもしなければ 互いを守ることが出来なかった2人だった

 

兵士たちは チェ・ムソンとチョンバギにこそかなわぬものの

いつの間にか 戦場でも立派に戦えるほどの武術を身につけていた

日々の鍛錬の中で 自然と礼節も備わり ワン・ユへの忠誠心も育っている

 

同じ頃 丞相ヨンチョルは 疑心暗鬼に捉われ正気を失いつつあった

忠心を誓う側近たちが 夜な夜な裏切る夢を見る

“秘密資金”が奪われるという 最悪の事態を按じ 眠ることも出来ない

タンギセは 変わり果てた父親を 涙ながらになだめるしかなかった

 

『ヨム・ビョンスが 秘密資金を狙っている あの者を殺せ!』

『では私が代わりに管理します』

『お前もか! お前も狙っているのだな!!!』

『父上 何を仰るのです』

『本性を現せ! そんなに私の金が欲しいのか!』

 

自分に向けられた剣を 素手で握りしめるタンギセ

その手からは 鮮血が滴り 床を赤く染める

父親のこんな姿を見るくらいなら いっそここで殺してほしいと…!

息子の悲痛な叫びを聞き ようやく正気を取り戻すヨンチョル

 

『こんな… こんな心境になるとは… 私に死期が迫っているのか…?』

 

タファンは 皇子アユルシリダラを可愛がり ひと時も離れようとしない

マハ皇子の快復の宴すら 気が進まないと言い出す

長官たちも揃う宴に 出ないわけにはいかぬと ヤンに説得されるが…

 

宴に参列する尼僧たちの中に 顔に火傷痕が残る者がいる

それに気づいたソ尚宮は 言い知れぬ不安を感じるのだった

 

やがて宴が始まると 主役のマハ皇子を無視し

産まれたばかりの アユルシリダラを我が手に抱くタファン

将来は 2人の皇子を競わせ 勝った者を皇太子にすると宣言した…!

 

タナシルリが何かを言う前に 兄タンギセが立ち上がる!

嫡男が後継ぎになることは フビライ皇帝の遺志であると…!

 

『おかしなことを言う 丞相は 私の弟を皇帝にしたではないか

まさか忘れたか? 私の意思は以上だ!もう何も言うな!』

 

同じ時 ソ尚宮とヨン尚宮は 尼僧のひとりひとりを確認していた

しかしいくら捜しても 顔に火傷痕のある尼僧は見当たらない

 

ソ尚宮が捜す尼僧は トクマンに匿われ 婕妤キ・ヤンに謁見していた

 

『私は 皇覚寺の尼僧でした 皇后様が滞在した尼寺です

マハ皇子様は… 皇后様が産んだお子ではありません…!

拾い子を 我が子に仕立てたのです!!!』

 

『何? 皇子は偽者なのか?!』

 

『皇后様は 秘密を隠そうと 尼僧たちに毒を盛り 寺に火をつけました!

私だけが生き残り… こうしてお知らせに来たのです!』

 

『なぜ 私に知らせたのだ』

 

『皇子様をお産みになったのでしょう?

偽の皇子を 世継ぎにするわけにはいかぬと思い… 伝えに来たのです』

 

『そのことを 皆の前で証言してくれるか?』

 

『もちろんでございます!!!

無残に殺された仲間のためにも 真実を公表したいのです!』

 

『何か証拠は…? 証拠はありますか?』

 

『偽皇子には 皇后と乳母だけが知る体の特徴が!

それを私が知っていることこそ証拠です 偽皇子の足の甲に…』

 

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奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- 第34話 思わぬ喜び

2018-05-24 07:00:00 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ

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1話~11話はこちらで公開しています

 

※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります

 

 第34話 思わぬ喜び 

 

(堪えてください…!)

 

剣を抜こうとするペガンを タルタルが止める!

連行されていく才人キ・ヤンを どうすることも出来ない

ヤンは 兵士の手を振りほどくと ワン・ユをギロリと睨みつける

なぜ嘘の証言で 丞相に味方するのか…!

 

そこへ 皇帝タファンが現れる

 

毒矢に撃たれ 意識を失っていたタファンが 侍従コルタに付き添われ

何事もなかったかのような しっかりとした足取りで…!

 

『陛下 快復されたのですね!』

 

大喜びで駆け寄る皇后を無視し ヤンのもとへ歩いて行くタファン

そして 才人キ・ヤンは 皇帝を守れなかったのではなく

自らの口で毒を吸い出し 命を救ってくれたのだと証言した

 

皇帝の側室の両腕を 乱暴につかんでいる兵士を一喝すると

タファンは ヤンの手を取り さっさと退室してしまう

ヨンチョルが口を挟む間もなく またしてもタナシルリは無視された

 

寝殿に戻った瞬間 タファンは意識を失う

侍医を!と叫ぶヤンに コルタが タファンの伝言を伝える

ヤンを守るためにも 決して侍医を呼んではならぬと…!

 

『まだ快復していなかったのですね そんなお体で私を迎えに?』

『起き上がることさえ難しいのに 走って出て行かれたのです』

 

ワン・ユもまた 腹部の痛みに耐えかねていた

ヨンビスが 服に染み出す血に気づき 薬を持って来た

手当てをしながら “スンニャン”について話し始める

 

『あの方が “会いたい人”だったのですね』

『もう昔のことだ』

『あの方を見つめる視線は まだ忘れていない視線でした 狩場で…』

『もう戻れ…!』

 

立ち去り際 ヨンビスは 夜明け前にここを去るという

そして “メバクの頭”に近づく方法を考えると…

 

それがどんなに危険なことか ワン・ユは ここに残れというが

ヨンビスは もう心を決めているようだ

密かに発とうとするヨンビスの前に チョクホが現れた

どんなに拒まれようが お供をするというチョクホ

ヨンビスの身を按じ ワン・ユが差し向けたのであった

 

その頃キ・ヤンは 懸命にタファンを看病していた

再び意識を失ったタファンは 高熱に浮かされ 明け方に目覚める

その枕元には 眠りに落ちたキ・ヤンが…

 

ヤンの徹夜の看病で すっかり快復したタファンは

ペガンとタルタルに命じ ヨム・ビョンスとチョチャムを尋問させる

側室暗殺を企てた罪を被れば 出世できると言われた2人だったが

そもそも 丞相は 本当に自分たちを助けてくれるのだろうか…

惨い拷問を受けながら ビョンスは 次第に絶望していく

 

するとそこへ 丞相ヨンチョル自ら現れ 尋問をやめよ!と命じた

これは王命によるものだと告げても無視し 2人を処刑すると言い放つ!

そんな…! と絶句する2人だが 容赦なく刑場へ連行されていく

 

ペガンの部下と パク・ブルファが 刑場に駆けつけ

2人が処刑される光景を 直接確認する

 

しかし 黒い頭巾を被せられた2人は 別人にすり替わっていた

約束通り 命を助けられたビョンスとチョチャムは タンギセの前に…!

 

タンギセは 行き先と任務の内容が書かれた封筒を差し出す

 

『これは丞相にとって 極めて重要なものだ

これから行く場所も お前たちが生きていることも 決して気づかれるな!』

 

タンギセが立ち去った後 恐る恐る封筒を開けるビョンス

その行き先と任務を知ると 驚きのあまり思わず大声を上げそうになる…!

そして この任務を成し遂げたら 俺の運命が変わるのだとほくそ笑む

 

その夜 才人キ・ヤンは ある決意を以って皇帝の寝所へ向かう

いつものように 自分が眠るまで 書を読んでくれるのだと…

そう思い込むタファンだったが 現れたヤンの美しさに目を見張る

 

「そなたの方から 手を差し伸べてくれる日まで 待つとしよう」

 

ヤンの心が自分の方に向くまで… そう決めていた

それが今夜なのだと気づき 優しく迎え入れるタファンであった

 

それから1カ月後 ペガンとタファンは

 

ワン・ユに会い 都の守備隊を率いてほしいと申し出ていた

丞相を支えている資金力と軍事力

この2つを崩さねば 丞相の勢力を削ぐことは不可能である

その片翼である“都の守備隊”を どうしても掌握する必要があるのだ

 

ワン・ユの求めに応じ 丞相ヨンチョルは すんなり承諾する

 

絶対的な協力で 此度の窮地を逃れたことを思えば当然だと言えるが

それにしても あの疑り深い丞相が… と訝しむペガン

丞相は 現隊長ウォンジンを降格させてまで ワン・ユの願いを叶えた

 

ここに ヨンチョルの狙いがあった

ウォンジンに忠誠を誓う兵士らが 隊長の不当な降格を受け

黙ってワン・ユに従うはずがないと どうせ逃げ出すことになると

そう確信するからこそ 申し出をあっさりと承諾したのであった

 

タルタルは なぜ真実を話さないのかと ワン・ユに問う

皇帝と才人キ・ヤンの命を救ったのは 紛れもなくワン・ユなのに

裏切り者と誤解させたまま ヤンに恨まれているのだ

 

『誤解が重なり 恨みが募れば憎しみとなります』

『憎まれた方が… むしろ楽になれる時もあるものだ』

 

そこへ 偶然にも 才人キ・ヤンの行列が…

無表情のまま 挨拶もせずに通り過ぎるワン・ユ

ヤンは 瞳の奥に冷たい炎を燃やし その背中を見送るのだった

 

皇太后殿では

 

朝のあいさつに訪れたヤンが いつになく暗い表情の皇太后に気づく

聞けば 皇室の財政が 今にも底を突きそうなほど困窮しているという

 

帳簿を見て 瞬時に財政を圧迫している原因を突き止めるヤン

皇太后はしきりに感心し ヤンに 財政の見直しを任せるのであった

 

財政見直しの手始めに 後宮において 質素倹約の政策を打ち出す

さまざまな行事を縮小し 事によっては廃止すると宣言した

 

※後宮:后妃や女官たちが住む宮中の奥御殿

 

また 衣服を仕立てる部署を閉鎖し 修繕の部署を大きく活用するという

さらには 食事の品数を減らすことで 食材の浪費を防ぐことに

 

これに反発し 抗議する皇后タナシルリ

本来 皇后こそが率先して行うべき任務を 才人であるヤンが行っている

それさえ気づかず 皇子の讃仏会を廃止され 激怒するタナシルリ

 

※讃仏会:春秋の悲願に仏の功徳を称える法会

 

『皇子が仏の功徳を受けることが 妬ましいのであろう!』

 

あまりにも次元が低い話に ヤンは 口も利きたくない思いであった

一体 誰の浪費のおかげで 財政がひっ迫しているのか…!

 

『皇后様が あまりにお金を使い過ぎるせいなのです』

『黙らぬか! 讃仏会を開くのだ!』

『出来ません! おやりになりたければお父上に頼んだらいかがですか!』

 

冷たく立ち去ろうとするヤンの背中を 力任せに押すタナシルリ!

ヤンは咄嗟のことに身構えられず 石段を転げ落ちていく…!

 

気を失ってしまったヤンを パク・ブルファが背負って走り去る

その無様な姿を 高笑いで見送るタナシルリだった

 

寝所に担ぎ込まれたヤンは 気絶したまま動かない

驚いたタファンは すぐに侍医を呼び脈診させる

すると 侍医の口から思いがけない言葉が…

 

『王様 ご懐妊でございます!!!』

『何?本当か?!』

 

あの生意気なヤンを突き飛ばしてやったと 父親の前で話すタナシルリ

ヨンチョルは 気の強い娘の“武勇伝”を 目を細めて聞いている

同席するタンギセは どうにも妹の話に納得がいかない

あのキ・ヤンが 妹に押されたから転げて気絶した? あのキ・ヤンが…

 

そこへ ヨン尚宮が 蒼ざめて駆け込んでくるなり

才人キ・ヤンが 懐妊したと叫んだ…!!!

 

都の守備隊の演習場では

 

ワン・ユが 隊長就任の挨拶をするが 従う兵士はひとりもいない

副隊長に降格したウォンジンの命令にのみ 従う姿勢を見せる

隊長とは名ばかりなのだと 鼻で笑うウォンジン

 

ワン・ユは 命令に背くウォンジンを捕え 軍律で処罰するという

しかし兵士たちは 一斉に剣を抜き ワン・ユたちを取り囲む!

 

『私に従えぬ者は 直ちにここから去れ!

去らずに背く者がいれば 即刻首を撥ねる!!!』

 

この命令にも怯むことなく 兵士たちが全員去って行く

それでも動揺せず ならば兵士を募るだけだと言い放つワン・ユ

資格はただひとつ! 命令に従う者であること…!

 

『名誉ある守備隊を 烏合の衆にするのか!!!』

 

同じ時 才人キ・ヤンは “婕妤”に任命される

懐妊したことで 4人の才人の中から ひとり抜きん出たことになる

 

※婕妤:後宮の階級 三妃九嬪のうち九嬪7番目の位

 

たとえこの先 婕妤キ・ヤンが皇子を産もうと

我が息子マハが 次期皇帝になるのだと 信じて疑わないタナシルリ

しかし… ヤンの懐妊を手放しで喜び 付きっ切りの皇帝が

嫡男のマハに ただの一度も会いに来ないことに 不安がよぎるのだった

 

そこへ 皇帝がみえたと 大はしゃぎで報告するヨン尚宮…!

やはり陛下は… と期待に胸を膨らませ迎えるタナシルリ

しかしタファンは マハに視線を移そうともせず タナシルリを睨む!

 

『パク・オジンの時のように 皇后が嫉妬するのではと心配でならぬ!

マハも これから生まれる子も 同様に私の子である 仲良くするのだ』

 

立ち去ろうとするタファンを 呼び止めずにはいられない

同じ我が子と言うなら なぜ視線すら移さないのか… なぜ抱かないのか!

しかし タファンも黙ってはいなかった

マハには 実にたくさん抱いてくれる人物がいると…!

この国で最も偉大なお父上や 最上の地位にいる伯父上たち

 

『しかし これからヤンが産む子には 私ひとりだけなのだ

私がこの腕に抱き 守ってやらねば 他に頼る者がいない』

 

『ヤンに男児が生まれても 皇太子の地位はマハのものです!』

 

『もう権力争いを始めるのか! 皇后… あまりに哀れである

あまりに哀れで… 見ていられない』

 

タナシルリは 悲し気なタファンの表情に 強い衝撃を受ける

それは憎しみの視線よりも辛い 実に哀れみに満ちた同情の視線だった

 

打ちひしがれるタナシルリに寄り添い “犬蠱術”の話を持ち出すソ尚宮

それは 人を死に至らしめる呪術のことである

 

ソ尚宮にそそのかされ “犬蠱術”に長けた妖術師と会うタナシルリ

妖術師は うまくいけば呪った相手を殺せるが

失敗すれば 呪いは自身に撥ね返ると説明する

 

キ・ヤンの生年月日を見た呪術師は “息子がいる”と告げた

タナシルリは ヤンの産む子が息子であるとの予言だと解釈する

さらに “その息子は皇帝になる運命”だと…!

 

『何を言う! 皇帝になるのはマハ皇子様だ!』

 

ソ尚宮の叫びを無視し 今度は タナシルリの生年月日を見る呪術師

すると… 表情を変えることなく “お子様はいないはず”と告げた

 

『私には マハという息子がいる!』

『…… それは妙なこと』

 

呪術師は 深く追求しようとはせず 依頼の“犬蠱術”に話題を移す

術をかけるには 対象者の下着が必要だという そして新鮮な犬の血

あとは 宮中に祭壇を設けねばならないと…

 

ただひたすらに キ・ヤンの死を願うタナシルリには 大いに自信があった

この切実たる思いが ヤンの気に負けるはずはないと…!

そして “犬蠱術”の儀式が始まった!

 

その夜 婕妤キ・ヤンは 悪夢にうなされ苦しみもがく

猛り狂う犬に噛まれる夢で目が覚めた…!

悲鳴を聞き 駆けつけたイ・ホンダンが ヤンの腕の“噛み傷”に気づく!

 

呪術師は 30枚の“呪い札”を差し出した

毎晩1枚ずつ使えば いずれ対象者は死に至るという

そして“キ・ヤン”と書かれた木札を差し出し その者の居所に埋めよと…!

 

犬蠱術に必要な物を揃えたのは ヨン尚宮である

そして ヤンの居所に木札を埋めたのも ヨン尚宮であった

 

呪術師の言う通り ヤンは次第に食欲を失い 衰弱していく

毎晩のように悪夢が続き 思い余ったヤンはタルタルに相談する

この異様な状況が お腹の子に影響しないかと それだけが心配であった

 

タルタルは それが“犬蠱術”によるものだと すぐに見抜く

漢の高祖の妃“呂太后”も その術により亡くなったという記録があると!

 

『呪いを説く方法はありません 自らの気で勝つしかないのです

極めて難しいことではありますが もし勝てば 呪いはかけた者に返ります

ヤン様を呪うとしたら…』

 

『タナシルリ… ですね』

 

呪いをかけているのはタナシルリであると確信した以上

ヤンは 悪夢に苦しみながらも 必死に打ち勝とうともがく…!!!

 

(そなたごときの呪いで この私を倒せるものか!

タナシルリ… 私こそが呪いの化身となろう…! 全てをお前に返す!!!)

 

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奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- 第33話 ゆがめられた事実

2018-04-20 07:00:00 | 奇皇后 -ふたつの愛 涙の誓い- あらすじ

  “散る花と咲く花がいつもここにある”のブログより移行しています

1話~11話はこちらで公開しています

 

※このドラマは実在した奇皇后の物語ですが 架空の人物や事件が扱われ
史実とは異なる創作の部分があります

 

 第33話 ゆがめられた事実 

 

皇帝タファンは ヤンの心がここにないことを知っていた

抵抗もせず ただ皇帝の命じるままにしているヤン

ただ欲望だけで ヤンを自分のものにしても それは真実の愛ではない

タファンは 静かにヤンから離れた

 

『そなたの方から 手を差し伸べてくれる日まで 待つとしよう』

『陛下は今 ただ権力を手に入れることだけに 集中してください』

 

ヤンは 乱れる心をタファンに気づかれぬよう 自分の天幕へ戻る

宦官ブルファは ヤンを護衛しながら 初めて気弱な姿に触れる

 

こんな狩場に来てまで 皇帝はタナシルリを無視し 側室と過ごす

怒りが収まらないタナシルリは 兄たちの天幕へ…!

そんな悔しさも 今宵限りだと慰めるタンギセ

 

『キ・ヤンを… 殺すのですか?』

『あの者だけではありません 両者を始末します』

『え?まさか… 皇帝も殺す?! そんな…』

『父上の命令には従わないと』

 

ヨム・ビョンスは 親衛隊を率い 夜中のうちに陣営を出発した

それをパン・シヌたちが尾行し 怪しげな行動を探っている

どうやらビョンスは 兵士たちに穴を掘らせ「落とし穴」の罠を…!

そればかりか いくつもの罠を 入念に仕掛けている

たかが狩場の獣に ここまで?と疑問を抱くシヌたち

 

(あいつらがいなくなったら 罠を壊そう!)

(もうすぐ夜明けだ 全部は壊せないだろ?)

(だからって あんな不正を許していいのか!)

 

ビョンスが仕掛けた罠は 30にも及ぶ

タンギセは 妹に 明日は狩場に出ない方がいいと言うが

タナシルリは 憎いキ・ヤンの死にざまを見なければ!というのである

 

そして一夜明け

 

ヤンとタファンは 今日こそ獲物の大きさで勝負しようと張り切っていた

侍従コルタと宦官ブルファは 2人を見失わないよう必死に走る…!

 

タンギセとタプジャヘは 窪地に隠れ 罠の方を見張っていた

しかし ことごとく失敗する罠に 苛立っていく!!!

 

シヌたちの報告により ワン・ユは 罠を見張る親衛隊を偵察し

獣を捕獲するための罠にしては 手が込み過ぎているという

それに 獣を狙うのに 見張りがいるのはさらにおかしいと…

 

丞相ヨンチョルは 驚くような獲物を仕留めて見せると豪語していた

それはひょっとしたら… 人間なのかもしれない

不吉な予感がよぎるワン・ユ

 

『この先の罠の場所は 皇帝とスンニャンの狩場になる』

『え? どういうことです? …まさか!』

『すぐにペガン将軍を呼べ! 私はスンニャンのもとへ行く!』

 

タファンとはぐれたヤンは 森の中で方向を見失う

ただならぬ気配を感じ 弓を構えて辺りを見回す…!

その背後に タナシルリの一団が潜み 狙いを定めている!!!

 

次第に近づいてくるヤンを確認し 罠の縄を引くが何も起こらない

このままでは 潜んでいるところを発見されてしまう!

タナシルリは自ら姿をあらわし 至近距離から矢を放つ!!!

矢は 僅かに的を外れ ヤンの頬をかすめた!

 

タナシルリは ヨン尚宮に 援軍の兵士を呼んで来いと命じた

何が何でも ここでしくじるわけにはいかない

いかに皇后とて 側室を殺そうとしたことが知れれば問題になる

 

ヤンは 追っ手の親衛隊をひとりずつ仕留めながら逃げていた

その様子を 他の側室たちが目撃し 皇帝に知らせねば!と走り出す!

 

キ・ヤンの危険を察知し 助けようとして狩場を駆け抜けるワン・ユ

皇帝タファンもまた ヤンのもとへ急ぐ

 

キ・ヤンは 親衛隊を始末し ひとりになったタナシルリと対峙する…!

 

『本当に私を 殺せるのですか?』

『ここならば誰も見ていない 誰の仕業か分かるものか!』

 

『どうぞ 殺したいのなら殺してください』

『お前…死にたいのか? そう楽には死なせぬ!』

 

『ここで死んだとしても本望です

陛下が 夜ごと私を抱きながら こう仰いました

“お前こそ この国の皇后に相応しい

タナシルリのことなど 女と思ったこともない あれはただの飾りだ”と』

 

弓に関しては 後宮でいちばんだと自慢していたタナシルリ

その腕前で毒矢を放たれては 完全にこちらの不利となる

すでにヤンの矢は無くなり 小刀だけで応戦しなければならないのだ…!

 

(動揺させればそれだけ 命中率が下がるはず…)

 

『皇帝から完全に無視されるなんて 皇后様はあまりに惨め過ぎます』

『黙れ黙れ黙るのだ!!!』

『私を殺しても 皇帝の心は戻りません

いいえ はじめから皇后様のものだったわけでもありません

ただの一度も愛されず 寂しさと屈辱を枕に死ぬだけですね』

 

タナシルリの 最後の矢は 大きく的を外した

互いに小刀で斬り合うとなれば タナシルリに勝ち目はなかった

 

『皇后に向かって…! こ… 皇后を殺したら大罪に問われるぞ!』

 

『“ここならば誰も見ていない 誰の仕業か分かるものか”

そう仰ったのは 皇后様ですよね』

 

情けなく命乞いするタナシルリに 怒りを抑えられなくなるヤン

無残にも たくさんの者を殺しておきながら…!

 

『このままここで殺すなんて… お前には軽すぎる!!!

死んで終わりになどさせない 死より過酷な苦しみで復讐してやる…!』

 

狩場の野営地に 丞相ヨンチョルがやって来た

皇帝と才人キ・ヤンを 確実に仕留めるため 指揮を執るという

事を起こすからには 決して失敗することは出来ないのだ!

 

放心して座り込んでいるタナシルリのもとへ 援軍が駆けつける

タナシルリは ひとり山を下りていったヤンを 何としても殺せと命じる

 

ヤンもまた放心し 来た道を引き返していた

ヨム・ビョンスとチョチャムが 罠の方へ歩いてくるヤンに気づく…!

シヌたちは すべての罠を壊せてはいない

 

今にも罠の領域に差し掛かるその時…!

ヤンの名を叫びながら 皇帝タファンが走って来る!

ビョンスは 息を飲んでその瞬間を待つ!!!

 

タファンのもとへ駆け寄ろうと ヤンが足を踏み出したその位置こそ

頭上から網が落ち 毒矢が一斉に飛び出す罠の場所であった!!!

 

まずは網が落ち ヤンを体ごと覆ってしまう

それを外そうとして 駆け寄ったタファンが網を引っ張る

カチッと怪しい音がした次の瞬間! 毒矢がタファンの腕に突き刺さった!

 

『陛下ーーーっ!!!』

 

侍従コルタが 部下の兵と共に親衛隊と斬り合う!

その隙にヤンは 負傷したタファンを連れ 安全な場所を求めて走り出す!

 

遅れて現れたワン・ユが 親衛隊の前に…!!!

親衛隊が 皇帝と側室を襲うとは…!

いかに丞相の命令だとしても ワン・ユには受け入れられない光景だった

 

ヨンチョルの身内となったワン・ユが 親衛隊に斬りかかる

この場にいる親衛隊を 全滅させなければ 裏切りが露呈してしまう…!

 

一方 ヤンと共に逃げるタファンは 次第に毒が回り目が翳み始める

悪寒がし 体が震えはじめ 歩くのもままならない

毒を吸い出そうとするヤンを 必死に止めるタファン

そんなことをすれば ヤンまでが毒に冒されてしまう…!

しかし構わず ヤンは タファンの腕の傷口を吸い続けた

 

『陛下 負けてはなりません! 負けないでください…!!!』

 

ヤンを逃がそうと 必死に戦うワン・ユは 腹部を刺されてしまう

そこへ現れたタナシルリが 血まみれになって戦うワン・ユに気づく

裏切りを知り 怒りが込み上げたタナシルリは ワン・ユに狙いを定める

しかし 射程距離でありながら どうしても矢を射ることが出来ない…!!!

 

タナシルリに気づき ワン・ユが じっとこちらを見つめている

そのまなざしに 弓を持つ手が震えてしまうタナシルリだった

(なぜ… なぜ射ることが出来ないのか!)

ワン・ユに対する 熱い想いは まだ消えてはいなかった

 

チョンバギと チェ・ムソンが やはり血まみれになり戦っている!

3人はたちまち取り囲まれ 絶体絶命となった

たとえここで死のうと 誰ひとりとしてヤンを追わせてはならない!

この王命に 死を覚悟する2人であった

 

そこへ パン・シヌが ヨンビスとチョクホを連れて現れた…!

形勢が逆転し 絶体絶命だったワン・ユは シヌに守られる

今度こそ ワン・ユに狙いを定めるタナシルリだが

見つかれば 間違いなくこの場で殺されてしまうだろう

ヨン尚宮が 早く逃げようと急かし 一目散に逃げていく…!

 

その後姿を見つめるワン・ユ

タナシルリは おそらく父親にすべて報告するだろう

皇帝の側についたことは もはや隠せない事実であった

 

動けなくなったタファンのもとへ 侍従コルタが駆けつける

毒矢と知ったコルタは 宦官ブルファと共に タファンを支える…!

 

一方 ワン・ユの傷も深く このままでは出血多量となってしまう

しかしワン・ユは 自らの命よりも スンニャンが無事かと按ずる

ヨンビスは ワン・ユの想いを 痛いほど感じるのであった

 

やがて日が暮れた

 

ようやく 夜の野営地に辿り着くタファンの一行

そこで待ち伏せていたのは 丞相ヨンチョルの一団であった

毒矢のせいで もうろうとしているタファン

すぐに楽にして差し上げましょう と ほくそ笑むヨンチョル

 

そこへ 将軍ペガンとタルタルが 兵を率いて現れる…!!!

 

皇帝を連れて下山するというヨンチョルに 断固反対するペガン

いかに丞相の命令でも もはや言いなりになるペガンではない

この“謀反”を企てたのは丞相か? 才人キ・ヤンが厳しく問う

 

ヨム・ビョンスが 陛下は獲物の罠でケガをしたと叫ぶ

それが 獲物ではなく人間用に仕掛けられたとしても 表向きには事実だ

 

『丞相が陛下をお連れになり もしも陛下が命を落とされたら

行省の長官たちは 間違いなく丞相の仕業と思うでしょう』

 

キ・ヤンの言葉に 一瞬 黙り込むヨンチョル

狩場での計画が失敗した以上 皇帝の“死に方”は重要である

この状況では 譲るしかないと判断するヨンチョル

 

『なぜ行かせるのですか! ここで殺しましょう!!!』

 

思慮の欠片もない息子を 激怒して殴るヨンチョル

ペガン率いる軍勢と 侍従コルタの兵を この場で皆殺しにせねば

ここで皇帝を始末するという凶行には 踏み込めないということだ

愚かな息子は 優先すべきは証拠隠滅であることを 自ら悟ることが出来ない

 

『親衛隊の死体をすべて片付けろ! 罠も残らず撤去するのだぞ!』

『はい… 承知しました父上!』

 

ヤンが毒を吸ったものの タファンの容態は深刻であった

もし助からねば 皇位はマハ皇子に引き継がれ ヨンチョルの天下となる

自身も毒に苦しみながら ヤンは タファンのもとへ行こうとする

 

その途中 ワン・ユの一行とすれ違う

丞相に呼ばれ ケガを隠して向かう途中である

 

『丞相は 謀反を疑われています 王様まで巻き込まれぬよう…』

『互いに別の道を行くと決めました

私の立場に関心を持つことも また私を按ずることも おやめください』

 

あんなにもスンニャンを按じていたのに そのせいで命を落としかけたのに

パン・シヌは ワン・ユの心中を思い 泣き出しそうになる

 

ヤンの前を通り過ぎ 痛みに顔を歪めるワン・ユ

止血したはずの腹部からは また血が流れ出している

しかし おそらく後姿を見送っているであろうスンニャンのため

ワン・ユは 気取られないよう必死に歩き続けるのであった

 

タファンの傷口から毒を吸ったとはいえ ヤンは大事に至らずに済んだ

しかしタファンは 意識を失ったまま 解毒剤を飲めずにいる

もとはといえば ヤンを庇って毒矢に撃たれたのだ

何とか解毒剤を飲ませ 救わねばならない

 

皇太后は 皇帝の看護を才人キ・ヤンに託し 丞相糾弾の準備を進める

すでに各所の長官らを召集し 話し合いの場を設ける手筈だ

丞相が武力行使することも想定し 大明殿を護衛兵で固めねばならない

 

ヤンは トクマンとコルタにも下がるよう命じ タファンと2人になる

意識のないタファンに 解毒剤を飲ませる方法は これしかない

 

『陛下 どうか生きてください どうか目を覚まして…』

 

口移しに解毒剤を含ませるヤン

この行為が “愛”と呼べるのかどうか… まだヤンには分からない

しかし 生きてほしいと願うヤンの目には あとからあとから涙がこぼれた

 

一方 丞相に呼ばれたワン・ユは この一件の目撃者になれと命じられる

この窮地を脱するためには 真実を語る目撃者が必要だと

 

思わず『ダメです!』と叫んでしまうタナシルリ

命を狙われた才人キ・ヤンは 高麗(コリョ)の出身

同じく高麗(コリョ)の者であるワン・ユでは 目撃者に相応しくないと…!

 

第2の解決策として 身代わりの犯人を仕立て上げるか

そして第3の解決策は 武力行使で突き進むことだというヨンチョル

 

すべての長官らが手を組めば 武力行使は無理だと答えるワン・ユ

協力するかどうか すぐに返答をせず 退室するワン・ユを追いかけ

タナシルリは 父に協力してくれと頼む

才人キ・ヤンを助けるという裏切りを ここで暴露するより

今は 父の窮地を救わねば 皇后としての立場さえ危ういのだ

 

タンギセは ヨム・ビョンスに 今回の件は 親衛隊の独断行動だと宣告する

皇帝暗殺の実行犯になれという命令に どれだけ驚いたか分からない

しかしビョンスは 新たな皇帝のもとで大臣になる夢を描き これに従った

それが今度は 実行犯どころではない すべての罪を被れというのだ

 

ビョンスと共に行動したチョチャムは どっちにしても死罪だ!と嘆く

執行前に逃がしてやるというタンギセの言葉が どれほど信じられないか

これまでのことを思えば 簡単に分かることだ

 

それでも この命令に従い タンギセが逃がしてくれると 信じるしかない

拒んだところで 今殺されるか 処刑台で殺されるかの違いだけだ

 

大明殿において 丞相ヨンチョルの罪を問う皇太后

すべての長官が召集され 丞相への尋問を見守っている

 

『一体 誰に襲われたというのか 当の本人に聞くがよい!』

『親衛隊です 親衛隊に襲われました』

 

才人キ・ヤンの答えに 目を見張るヨンチョル

それだけではない 見たはずのない他の側室たちまでが同じことを言う

ヨンチョルは動揺を隠し その親衛隊を捕えたという

自分も息子たちも 親衛隊の凶行には一切関わっておらず

息子たちこそが 首謀者を捕えたのだと…!

 

皇太后は 黒幕に丞相がいることを証明したかった

一介の親衛隊長に 謀反の企てなど出来るはずがないと…!

ところが ビョンスは 標的は皇帝ではなく 側室だったと白状する

標的が皇帝なら “謀反”であり大逆罪だが 側室が標的なら話は違ってくる

ヤンを庇い 皇帝が毒矢に倒れたことも事実なのだ

 

そもそも キ・ヤンを高麗(コリョ)から連行したのはヨム・ビョンス

それを逆恨みしたキ・ヤンが 側室となって自分に復讐するかもしれない

それを恐れて 殺そうと考えただけのことだと…!

 

あまりにバカげた告白に 声を荒げて遮るヤン

タンギセは さらに2人の過去を指摘し かつての主君に聞くがいいと言う

 

すべては ビョンスの言葉通りであると証言するワン・ユ

 

ここまでの 丞相側の出方は パン・シヌから伝え聞いていた

敢えて丞相側が考えた通りに証言し 意表を突く作戦だった

なのになぜ? ヤンは 驚きの表情でワン・ユを見つめる

 

敢えて情報をくれたのは ここで真実を証言し 全て覆すのではないのか!

長官たちの前で 丞相への謀反の疑いを追及するどころか

いつの間にか 才人キ・ヤンの復讐話にすり替わっている

一件落着だとして 解散を促すヨンチョル

 

しかしここで 皇后タナシルリが前へ進み出る

そして 父親への謀反の疑いは晴れたが これで終わりではないと叫ぶ

陛下を守れず 毒矢に撃たれてしまった罪を キ・ヤンと側近に問うと…!

 

『直ちに才人キ・ヤンを連行せよ!!!』

 

兵士に両腕を掴まれ 大明殿から引き摺り出されるヤン

ワン・ユの横を通り過ぎたその時 憤慨して立ち止まり ギロリと睨みつける

なぜ嘘の証言で丞相に味方するのか…!

なぜそのような冷たい視線で自分を見るのか…!!

激しくワン・ユを睨むヤンの目からは 今にも涙がこぼれそうになる…!!!

 

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