<北海道新聞社説>産経記者起訴 言論の自由脅かす行為
これでは言論の自由を認めないと言っているに等しい。
韓国のソウル中央地検は産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(48)を情報通信網法上の名誉毀損(きそん)罪で在宅起訴した。加藤氏が産経新聞ウェブサイトに掲載した朴槿恵(パククネ)大統領の動静に関するコラムが大統領の名誉を傷つけたという理由だ。報道の自由を保障しているはずの韓国で、外国メディアの記者が報道をめぐり刑事責任を問われるのは極めて異例だ。加藤氏は容疑事実を否認している。
朴政権の意向が強く働いているようだ。これでは三権分立が機能しているとはとても言えない。
国内外から批判が出ており、民主主義国家である韓国のイメージダウンは避けられない。報道の自由は、国民の知る権利を守るうえで欠かせない。在宅起訴の撤回を求めたい。
コラムの掲載は8月上旬だ。
旅客船セウォル号が沈没した4月16日、朴氏が男性と密会していたのではないかとのうわさを朝鮮日報などから引用して伝え、政権のレームダック(死に体)化が進んでいるなどと指摘した。
市民団体の告発を受けた地検は加藤氏を3度にわたり聴取した。同氏には東京本社への異動が発令されたが、出国禁止状態が続いている。沈没事故は修学旅行の高校生ら多くの犠牲者を出した。最高権力者の当日の動静を伝えることには公共性があるだろう。産経新聞の報道は朴政権に批判的だ。だからといって在宅起訴するなら、言論の統制である。
日本新聞協会は捜査段階で「報道の自由が脅かされる」と談話を発表した。韓国メディアも今回の司法手続きに疑問を呈している。
「被害者」の朴氏は起訴を拒否できる立場だったが、事実上容認した。言論には言論で反論できたはずなのに残念だ。韓国が民主化運動の末、言論の自由を勝ち得たことを思い出してほしい。
検察が朴政権の意向を反映したのも韓国大統領は国家元首として絶大な権力を握るからだ。だからこそ一層の自重が求められる。
日韓両国は11月の首脳会談実現に向け調整を進めている。
辛口の批判でも報道の自由は民主主義国家共通の原則だ。韓国政府はぜひ理解してもらいたい。日本政府は韓国側に事態を深く憂慮すると伝えた。だが、今回の件をもって関係改善の動きに水を差すことがあってはならない。
<信濃毎日社説>支局長起訴 韓国政治の信用損なう
韓国の検察当局が産経新聞の前ソウル支局長を在宅起訴した。同紙のウェブサイトに載せた記事により、朴槿恵大統領の名誉を傷つけた罪である。
メディアによる政治家の言動のチェックは、民主政治の健全な運営に欠かせない。前支局長が処罰される展開になれば、韓国は「報道の自由を制約する国」との評価を受けるだろう。
国の信用を守るためにも、当局は起訴を取り下げるべきだ。
問題とされているのは、サイトに8月3日付で掲載した「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」と題する記事。旅客船セウォル号が沈没した4月16日に7時間にわたり、大統領の所在が不明だったとされていることを取り上げた。
国会での議論や韓国紙コラムの紹介に加え、「証券街の関係筋」の情報として、「大統領と男性の関係に関するもの」との表現で男女関係に言及している。
この記事に対し韓国の市民団体が名誉毀損(きそん)の疑いで告発。検察当局が支局長を出国禁止にして事情聴取を続けてきた。
記事はうわさ話を基に構成されている。真偽の確かめようがない情報を「産経」の名を冠したサイトに載せたのは、軽率だったと言われても仕方ない。韓国の大統領は直接投票で選ばれる。国家と国民を代表する元首である。記事にするときは、たとえ批判的に取り上げる場合でも節度があってしかるべきだ。記事にはその点でも疑問が残る。
以上を割り引いても、今度の起訴には問題が多い。外国メディアが国外のサイトに載せた記事に対し国内法を適用して罪を問うのは無理がある。権力の乱用だ。
日本新聞協会、日本ペンクラブ、パリに本部を置く国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」など、世界のジャーナリスト団体から「懸念」や「憂慮」の声が出るのは当然である。
韓国では1980年代まで、クーデターで実権を握った軍人出身の政権が続いた。民主化運動は弾圧され、メディアの報道も当局の制約の下に置かれた。 その後、直接大統領制を導入した民主化宣言(87年)、民主化運動リーダー金大中氏の大統領就任(98年)などを通じ、政治の改革とイメージ転換を着実に進めて今日に至っている。
今度の訴追は韓国政治に強権的な体質が根強く残っていることをあらためて世界に印象づけている。残念なことだ。
<レコードチャイナ>産経新聞前ソウル支局長が在宅起訴、米メディアも大きく報じる=報道の自由を脅かす韓国の動向を注視
9日、産経新聞の前ソウル支局長が韓国で在宅起訴されたことが、米国メディアでも大きく報じられている。
2014年10月9日、産経新聞の前ソウル支局長が韓国で在宅起訴されたことが、米国メディアでも大きく報じられている。
韓国検察は8日、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長を、朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を毀損(きそん)したとして在宅起訴したと発表した。検察によると、同社ウェブサイトに掲載されたコラムの内容が、朴大統領の名誉毀損に当たるとしている。米メディアもこの処分に注目し、大きく取り上げている。
米ウォール・ストリート・ジャーナルは8日、8月に加藤前支局長が事情聴取を受けたことに始まるこれまでの経緯と背景を報じている。韓国では1980年代までは報道の自由が抑圧されていたものの、自由民主主義へと移行してきた。だが政権を批判する報道を抑えこむ韓国の姿勢に対して米国がこれまでに批判してきたことにも触れている。
また、国境なき記者団が毎年発表している、今年の世界報道自由ランキングで、韓国は180カ国中57位であることも伝えている。米FOXニュースも8日にこのランキングを伝えているほか、問題となったコラムの引用元である朝鮮日報は事情聴取されていないことも報じている。