“さるかに合戦”  臼蔵 と 蜂助・栗坊 の呟き

震災や原発の情報が少なくなりつつあることを感じながら被災地東北から自分達が思っていることを発信していきます。

旧日本軍慰安所、上海に160箇所超

2014年10月27日 14時59分15秒 | 臼蔵の呟き

<レコードチャイナ>旧日本軍慰安所、上海に160箇所超

11日、中国慰安婦問題研究センターのセンター長を務める上海師範大学人文伝播学院の蘇智良院長は、「旧日本軍が上海に設置した慰安所は160カ所を上回ることが判明した」と話した。

2014年8月12日、中国新聞社によると、中国慰安婦問題研究センターのセンター長を務める上海師範大学人文伝播学院の蘇智良(スー・ジーリャン)院長は11日、「われわれが21年間にわたり調査した結果、旧日本軍が上海に設置した慰安所は160カ所を上回ることが判明した。上海は旧日本軍の『慰安婦』制度が最も完備されていた都市と言えよう」と話した。
上海市政治協商会議の主催による「第2次上海事変77周年記念座談会」が11日、上海で開催され、蘇智良院長は、「慰安婦」制度と上海との深い関係性という点から、旧日本軍の「性奴隷制」という重罪について論じた。
 世界的に有名な専門家である蘇院長は、旧日本軍の慰安所が世界で初めて設置された都市は上海だったとの認識を持っている。旧日本海軍陸戦隊司令部は1932年1月、「大一沙龍(サロン)」や小松亭など虹口にあった日本の風俗店4軒を、海軍の特別慰安所に指定した。その後すぐに第1次上海事変が勃発、旧日本軍上海派遣軍の岡村寧次副参謀長は、海軍のやり方をまねて、関西地方から女性を募集して初の陸軍「慰安婦団」を設立、呉淞や宝山などの前線の陣地に次々と慰安所を開設した。この時の「慰安婦団」は、日本陸軍が初めて「慰安婦」制度を導入、構成した組織で、その後の旧日本軍全体の「慰安婦」制度の見本となった。中国東北部を占領した旧日本軍は、東北の各地にも慰安所を続々と設立した。

蘇院長は、「日本軍国主義は、中国に侵略する過程で、軍隊の性奴隷制である悪名高き『慰安婦』制度を作り上げた。しかも、非人道的なこの戦争犯罪は、上海という土地と密接な関係がある。1937年に日本の中国侵略戦争が全面的に始まった後、『慰安婦』制度も急速に普及、上海には旧日本軍のための『合法強姦センター』が続々と誕生した」と指摘した。

旧日本軍の性奴隷制は、数十万に上る中国人女性に耐え難い苦難をもたらした。蘇院長は、1910年に小崑山で生まれた女性の事例を取り上げ、詳しく紹介した。1928年に結婚した朱(ジュウ)さんは、上海商務印書館で製本工として働いていた。1932年、旧日本軍が商務印書館を爆撃、破壊したため朱さんは失業、崇明廟鎮に疎開し、「永興館」という小さなホテルを経営して生計を維持した。1938年春、旧日本軍が崇明を占領、現地の女性7人に「慰安隊」のメンバーになるよう強制した。不幸にも旧日本軍の「性奴隷」となった朱さんは、1939年に旧日本軍が崇明から撤退するまで、慰安所で働かされた。旧日本軍の野蛮極まる行為によって、朱さんは深刻な婦人病を患い、精神的にも深い傷を負った。2005年2月20日、朱さんは崇明の自宅で、病気で息を引き取った。享年95歳だった。

「慰安婦」問題が浮上したのは、1990年代初めだった。各国からの圧力を受け、1993年8月4日、河野洋平内閣官房長官(当時)は談話を発表、「慰安婦」制度によって、数多くの女性が心身にわたり癒やしがたい傷を負ったことを認め、日本政府からの心からのお詫びと反省の気持ちを表明した。この「河野談話」は、「慰安婦」問題に対する日本政府の基本的な立場を代表するものとなった。だが、その後、日本政府の一部の右翼的な官僚は、さまざまな場所で、理解しがたい談話を発表し、「慰安婦」という歴史的事実を否定し、史実を捻じ曲げようとしたため、「慰安婦」問題は、日本とアジア近隣諸国との間に残された歴史的問題となった。

「日本が今もなお、旧日本軍が作った性奴隷制という非人道的な犯罪行為に対して、深く反省している様子が見られないことは、本当に残念なことだ」と蘇院長は語った。

 


アメリカの空爆とテロ集団

2014年10月27日 12時59分10秒 | 臼蔵の呟き

テロ事件、テロリストによる内戦状態は、誰が作ったのかを改めて問わなければなりません。この主張で言うようにイスラム過激派が女性差別の言動と行動を取ったとしても、イラク、シリア、アフガニスタンの内戦状況は、アメリカブッシュ政権が行った政権転覆の軍事作戦によって引き起こされたことは歴史的事実です。その相手国を軍事的に攻撃し、政権転覆を行う行為を断罪し、再発を防ぐ国際的な世論形成こそが重要な政治課題なのだと思います。

テロの温床は、貧困であり、先進国が原油、資源を収奪し、アジア、アフリカの経済的な発展を考慮しなかったことから発生しています。その中の1つに、教育の問題もあるのは事実でしょう。貧しすぎて、教育に予算を割くことができない。教育を受けさせることが出来ない。それが実体なのではないかと思います。

<東京新聞社説>教育は空爆よりも強し

 イスラム国が恐れるものとは空爆より教育なのかもしれません。とりわけ女性への教育。過激主義はおかしいと考えさせることこそが最大の敵なのです。

 思い出してもみてください。二年前の十月、パキスタンで起きたことを。学校帰りのバスの中で、マララ・ユスフザイさんが、乗り込んできたタリバン運動の男たちに頭めがけて銃撃されたのです。その時まだ十五歳の少女。ただしほかの子と違って、子どもたちに教育を、学校へ行こう、とネットで発信していました。

 だが、それだけのことでなぜタリバンは襲わねばならなかったのか。殺そうとまでしたのか。

◆タリバンの怖いもの

 それは、タリバンにとって、教育こそが自分たちの存在を、将来を危うくするからです。

 マララさんがノーベル平和賞に決まる少し前、米紙(ニューヨーク・タイムズ国際版)に著名な政治コラムニスト、ニコラス・クリストフ氏が書いていました。コラムの題は「過激主義者たちが私たちに教え得るもの」。

 ちょうどイスラム国がイラクのモスルに侵攻し、その地の女性運動家サミラ・アル・ヌアイミさんを拷問の末、公開処刑した直後でした。タリバン同様、イスラム国も女性の教育と権利を恐れたのです。彼女は拷問でも意志を変えなかったのでしょう。

 コラムの要点は、

・過激主義者たちは戦闘のため短期的に武器を使うが、長期的には西欧の教育と闘い、女性に権利を与えないようにする。なぜなら女性が読み書きできず、無学のまま抑圧しておくことが過激主義の増殖に役立つ。

・イスラム国攻撃に使う米国の軍事費は、少なくとも年間二十四億ドル。またその数倍か。それなのにオバマ政権は公約でもあった二十億ドルの世界向け教育基金をいまだ支出していない。

・少女への教育は少年への教育より効果的。出産する子どもの数が減り、将来テロリストになりやすい若者の過剰な増加を防ぐ。

・シリア内戦で、トルコ、ヨルダン、レバノンに脱出した難民は約三百万人。今はその子どもたちへの教育の好機である。

 クリストフ氏はコラムニストらしく米国よりもイスラム国の方がよほど教育の効果を知っているじゃないか、と皮肉ったのです。空爆の効果を否定しないが、教育の力を忘れるな、というのです。

◆女性指導者はどこに

 教育の効果というと、気の長そうな話に聞こえるが、米国などの軍事行動でイスラム国を壊滅させるには早くて三年、長ければ十年以上ともいわれます。

 しかしもしその十年の間、子どもらに教育の機会がないのなら、少年は学ばずに成人となり、銃を構えるテロリスト兵士になっているのかもしれない。その意味で教育はじつは即効的なのです。

 もちろん教育を受ければテロリストにならないということでもない。過去の日本赤軍、またアルカイダのビンラディンやザワヒリ容疑者は大学教育を受けている。しかし知識や自分で考える力はテロを退けようとするはずです。

 コーランには、偶像崇拝者には容赦するなという章句があり、同時に人を殺すなという章句もあります。過激派は自分らに都合のよい部分を神の命令のように言っているだけなのです。

 女性に話を戻せば、イスラム識者はよくこんなふうに言う。

 米国ではまだ女性大統領の当否が議論になるが、イスラム世界ではもう女性の指導者が出ている。パキスタンのベナジル・ブット首相、トルコのチルレル首相、インドネシアのメガワティ大統領。

 西洋はイスラムの族長、家父長制を封建遺物のようにいうが、実は、米国の方がずっと遅れているのではないか、というのです(欧州では英国サッチャー首相、ドイツのメルケル現首相がいますが、日本にはさて、まだいません)。

 マララさんが身につけているスカーフ、またベールはアラビア語ではブルク。覆い隔てるという意味。男性を刺激させない、また砂や日差しよけともいいます。

◆宗教を利用した強制

 顔や髪をどれくらい隠すのか、布は黒か色柄か、それらは国々で違います。つまりその地の歴史や文化の反映でもあります。それらを権力支配のため、宗教にことよせて強制するのが過激派です。

 イスラム国は西欧の過去の植民地主義の否定を大義とするが、それを訴えるのに暴力は果たして正しいのだろうか。教育はそれを教えます。考えさせます。だから過激主義者は怖いのです。

 テロの増殖を防ぐには、国際的な交渉も結束もまた武力も必要になるでしょう。しかし、教育の力もまた忘れてはなりません。


福島県知事選 選択肢奪った責任重い

2014年10月27日 10時59分07秒 | 臼蔵の呟き

「十二万人を超える福島県民が今なお、県内外で避難生活を余儀なくされている。厳しい現実は原子力災害に起因していることを福島県民のみならず、すべての日本国民が忘れてはならない。」

 原発事故後初の福島県知事選。県政の継承を掲げた前副知事が勝ったとはいえ、各党相乗りにより「脱原発」という重要な争点がぼやけてしまった。有権者から選択肢を奪った県知事選挙と政党の責任は重い。

<東京新聞社説>福島県知事選 選択肢奪った責任重い

 原発事故後初の福島県知事選。県政の継承を掲げた前副知事が勝ったとはいえ、各党相乗りにより「脱原発」という重要な争点がぼやけてしまった。有権者から選択肢を奪った各党の責任は重い。

 六人の立候補は福島県知事選では過去最多だが、論戦は盛り上がりを欠いた。国政では激しく角突き合わす自民、民主両党が相乗りしたためにほかならない。

 初当選した内堀雅雄氏(50)は、民主党参院議員から転じた佐藤雄平現知事の下、副知事を務めた。三選立候補を見送った佐藤氏から事実上、後継の候補に指名され、民主、社民両党がまず支援を決め、自民党が相乗りした。

 自民党は、県連が擁立決定した候補を、安倍晋三首相率いる首相官邸と党本部が引きずり降ろして相乗りを決める異例さである。

 七月の滋賀県知事選では党推薦候補が敗れた。十一月の沖縄県知事選でも、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への「県内移設」容認に転じた、自民党が推す仲井真弘多県知事の劣勢が伝えられる。

 福島で敗れれば、知事選三連敗の可能性も出てくる。消費税率再引き上げ決定や安全保障法制整備を控える政権運営や来年の統一地方選への打撃を、有力候補への相乗りで避けたかったのだろう。

 十二万人を超える福島県民が今なお、県内外で避難生活を余儀なくされている。厳しい現実は原子力災害に起因していることを福島県民のみならず、すべての日本国民が忘れてはならない。

 今回の知事選は県民自身が「原発との関わり方」をどう考えているのか、意思表示の好機だった。

 六候補が県内の原発全十基の廃炉で一致していたが、内堀氏が県外の原発の是非に踏み込むことはなかった。再稼働を進める自民党の相乗りが影響したのだろう。

 自民党は連敗を逃れた上に原発政策が明確な争点にならず、安堵(あんど)しているのだろうが、有権者から選択肢を奪った責任は重い。

 相乗りを認めた民主党側も同様だ。政権奪還に向けた反転攻勢の好機を自ら放棄したに等しい。

 内堀氏は医療、ロボット、再生エネルギーなど先端産業の集積を進めると公約した。復興推進や被災者の生活再建、賠償実現とともに応援したい。

 選挙戦では「言うべきことは言う」とも強調した。官僚出身ではあるが、政府に遠慮せず、県民の思いをぶつけてほしい。それが県民の負託に応え、国内外に「福島の今」を発信する道である。

<河北報道>福島県知事選挙 原発収支踏み込まず

 福島県知事選は、自民、民主、公明、社民4党が相乗り支援した前副知事の内堀雅雄氏(50)が圧勝した。内堀氏は、引退を表明した佐藤雄平知事の後継候補。県民は県政刷新よりも、副知事2期の実績を踏まえた県政の安定を選んだ。
 内堀氏は主要政党に加え、連合福島、県農政連、県町村会など「集票マシン」と呼ばれる組織・団体から手厚い支援を受け、組織力で圧倒した。
 自民党福島県連は一時、「打倒・佐藤県政」を目指し、独自候補を擁立した。しかし、党本部の圧力に屈し、9月に擁立を断念。この時点で既に勝敗は決していた。
 自民党党本部が県連の主戦論を退けたのは、7月の滋賀県知事選で党推薦候補が敗れ、最重要と位置付ける11月の沖縄県知事選に「2連敗」で臨む事態を避けたかったからだ。
 原発問題の争点化を回避したい安倍晋三政権の思惑も働いた。「争点ぼかし」は奏功し、原発再稼働問題や原発輸出の是非が、「レベル7」の原子力災害に見舞われた福島の知事選で争点に浮上することはなかった。
 県内の原発10基については、内堀氏を含む全候補が全基廃炉で一致。福島の知事選とはいえ、地方選挙で国政課題を問えるのかという問題も横たわる。
 ただ、福島第1原発事故で飛散した放射性物質は県境でとどまったわけではない。宮城県では、汚染物質の最終処分場建設をめぐり、住民が激しく反発する事態になっている。
 一度、原発事故が起きれば、影響は県境を越え、広範囲かつ長期に及ぶ。逆もまた真だが、福島県への影響が懸念される東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)や東北電力女川原発(宮城県)の再稼働問題に、内堀氏が言及することはなかった。
 復興のステージに入ったとされる岩手、宮城両県に比べ、福島県はいまだ復旧途上にある。除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設問題、震災関連死、子どもの健康管理など新知事の政策実行に猶予は許されない。

<福島県知事選>論戦遠く結論は「棄権」

 離郷を強いられた人たちに候補者の訴えは遠かった。26日投開票が行われた福島県知事選で、前副知事の内堀雅雄さん(50)が初当選した。福島再生の針路を決める重要な選挙だったが、政策論争は低調。投票率は45.85%と低迷した。とりわけ県外避難者4万6000人に論戦は現実味が薄く、古里の将来像を描けず、棄権した人も少なくなかった。

◎県外避難者、疎外感/判断材料乏しいまま

<県政に不信感>
 「誰がどこで演説しているのか、何を訴えたいのかもよく分からない」
 飯舘村から栃木県上三川町に避難する会社員男性(44)は、一票を投じることができなかった。
 選挙公報は届いたものの、舌戦は直接耳に入らない。インターネット選挙も解禁されたが、自宅はネットに接続していない。
 「選挙がこんなに遠いとは。自分のたった1票では、きっと何も変わらないだろう」
 判断材料が圧倒的に乏しいことに気付いた時、諦めと疎外感を感じずにはいられなかった。
 川内村から千葉県東金市に身を寄せる武田敏さん(71)も迷った末に棄権した。「どの候補もその場しのぎの言葉だけ。期待できる人がいなかった」と打ち明ける。
 根底にあるのは県政への不信感だ。県からアンケートは何度も届くが、現況を確かめる内容ばかり。避難者の声をくみ取ってもらえているとは思えない。以前の田舎暮らしに戻るのは無理だと思っている。

<「国と対等に」>
 一方、南相馬市小高区からさいたま市に避難する農業横田芳朝さん(69)は、介護をしている93歳の母親が体調を崩し、不在者投票の機会を逃してしまった。「母親もおり、わざわざ南相馬に戻って投票するわけにもいかない。恥ずかしながら今回は棄権してしまった」とため息をついた。
 南相馬の自宅には果樹園と田んぼがある。「除染をしても放射線量は高い。でも、いつの日か農業を再開して復興を支えたい」
 横田さんは古里をずっと思い続けてきた。福島の地元紙を購読し、知事選では候補者情報を毎日かき集めた。だが、今回ばかりは、南相馬と埼玉と間に横たわる「距離」の前に投票を諦めざるを得なかった。
 「国は東京オリンピックのことで被災者のことを忘れている。新しい知事は、福島のことを考えて国と対等に交渉してほしい」。横田さんは無念さを口にした。

<薄い政治の影>
 県内の避難者にとっても政治の影は薄い。
 浪江町から福島市の北幹線仮設住宅に避難する80代女性も、投票所に足を運ばなかった。
 「今まで選挙のたびに期待したけれど、選挙が終わったら約束を忘れる人ばかり。仮設住宅に暮らしてもう3年以上。惰性で生きる私にとって、知事選なんて遠い話」


貿易赤字拡大 甘かった円安シナリオ

2014年10月27日 05時32分53秒 | 臼蔵の呟き

当たり前の話です。まともな経済学者がアベノミックスを批判し、そのような経済対策で日本経済の再生などはできないとしていたことが事実を持って証明されつつあります。

円高は、日本経済が国際的な競争力を持ったことによってもたらされた1つの結果であり、その実体から目を背け、人為的に作り出す為替相場、円安で日本経済の再生ができるはずがありません。実体は何も変わらないのに円安だけになれば、輸入に頼る食料、原油・ガス、工業製品の原料などが円安分だけ価格が上昇するのは当たり前のことです。

二つ目は、日本のデフレ、景気低迷要因は、円高要因ではなく、非正規労働の拡大と貧困格差による購買力の低下が大きな要因です。その対策は非正規労働をやめること、労働者の収入増加、最低賃金の改善です。その対策を政治の責任として行わずに円安、非正規労働の更なる拡大を行うなどは見当違いもはなはだしいと言わざるをえません。

三つ目は、多国籍企業が他国に生産拠点を移行するのは、製品の販売先の国で生産することで、貿易摩擦を防ぎたい。その国の賃金水準が日本よりも相対的に低いことが大きな要因としてあります。また、為替レートの変動を受けないように相手国に生産拠点を移行させています。したがって多国籍企業が円安になったからといって、日本に生産拠点を移す、輸出を増やせるのかと言えば、年、月単位の短期間でそのような変化に対応できるわけではありません。そのく位のことは多国籍企業、経済学者であれば誰であっても分かっていることです。

<北海道新聞社説>貿易赤字拡大 甘かった円安シナリオ

 2014年度上半期(4~9月)の貿易赤字は約5兆4千億円に上り、上半期では過去最大の赤字額となった。年間を通してみても、13年まで3年連続しての貿易赤字だった。日本経済に貿易赤字が定着したと言っていいだろう。

 安倍晋三政権の経済政策アベノミクスは円安を「てこ」に輸出を後押しし、企業収益を賃金上昇につなげる青写真を描いていた。

 だが頼みの輸出は伸び悩み、貿易赤字の早期脱却は見通せない。

 政府は経済構造が転換しつつある実態を直視した上で、産業競争力を高める知恵を絞るべきだ。

 貿易赤字拡大の主な要因は、原発の稼働停止で火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)などの輸入が高水準にあるためだ。コスト削減に向けて、電力会社や商社などが連携してLNGを共同購入したり、調達先を多様化したりする工夫がより重要になる。  

 円安で輸入価格が押し上げられていることも見逃せない。

 問題は輸出の低迷で景気のけん引役が不在に陥ることだ。

 円安が進めば時間の経過とともに輸出数量が増え、貿易収支も改善に向かう現象がこれまで言われてきたが、現状ではその効果は表れていない。背景にあるのは、製造業などが相次いで生産拠点を海外に移転させている産業の空洞化だ。円高のリスクに対応したもので、多くの先進国で見られる動きでもある。円安が進行しても生産拠点の国内回帰が起こるとみるのは早計だろう。

 円安による輸出品の価格競争力の高まりも、政府の想定通りに進んでいるわけではない。

 輸出企業は低価格で競い合う戦略を避け、現地での販売価格を据え置くなどして利益の確保を優先し、輸出数量の増加にこだわらない傾向を強めているからだ。

 貿易赤字は本来、企業活動や個人消費が活発になり、内需が盛り上がった結果の反映でもある。

 とはいえ、企業が海外で稼いだ利益を内部留保に回していては、経済の好循環をつくり出せない。研究開発や設備投資に積極的に振り向け、賃金の改善や雇用の拡大にも役立てるべきだ。

 円安は輸入物価の上昇を招き、家計を圧迫している。

 このままでは円安誘導による景気回復シナリオの修正を迫られるのは確実だ。政府は直面する課題を謙虚に見直し、新たな戦略を練り直す覚悟が要る。