姫路に出張してきました・・・・。
仕事とはいえ ここに来るのはもう何回目でしょうか?
私にとって 姫路といえば姫路城・・・・姫路駅に降り立つと駅前通りの真正面に位置しており その風貌が素晴らしい・・・・未だ この街を治めている・・・といった風格が感じられるものです。 お城のある街って良いものですね。
そんな私は・・・・実のところ姫路城には一度しか行った事がありません・・・・・・・・。
それは小学校時代からの鉄仲間だった N君と関西方面に「乗り鉄」をした時の事でした・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
N君が所沢に引っ越してきたのは 確か小学4年の時だったと思います。
当時は 特に知り合いという訳ではなかったけれど 5年生の夏休み・・・宿題に自由研究っていうのがあって 僕は好きだった「電車の走るしくみ」について 図鑑を見ながら 模造紙いっぱいに研究発表を書いてみました。
夏休み明け・・・・自由研究発表ということで学校の廊下にみんなの研究の成果が貼り出されました。みんなが書いた自由研究は昆虫や植物など・・・・正直言って「みんな 凄いな!」というものばかりでした。 そんな時、僕の書いた模造紙を熱心に読んでいる知らない子の姿が・・・・・そう、彼がN君だったのです。
「これ・・・君が書いたの?」 とN君が話しかけてきました・・・・・僕は正直・・・・自分の書いた模造紙を読まれるのが恥ずかしくて 他人のふりをしようと思っていましたが、N君が「僕も鉄道が好きなんだ・・・・良かったら今度、一緒に遊ばない?」 と言ってくれたのです。 当時・・・僕の周りには鉄道好きの友達が居なかったこともあって、僕には その言葉がとても嬉しく感じられました。
僕らはすぐに友達となり、それからというもの・・・・勉強も程々に 一緒に良く遊びました。
やがて中学に入り、もちろん2人は同じ中学校・・・・今までと同じ環境で交友を深めました。
彼とは一度も同じクラスになった事はありませんでしたが 休み時間の度に 鉄道雑誌を回し読みしたり、次の休みは どこで写真を撮ろうか・・・? などと話していたものです。
中学では 僕は剣道部、N君は体が弱かった事もあって 美術部に入部しました。
部活動が本格的になってくると 次第にお互い 時間が合わなくなっていき、一緒に遊びまわるような事は少なくなりました・・・・・高校進学についても 2人とも 別々の高校に進学する事になりましたが それでも鉄道趣味を介して疎遠になることはありませんでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中学卒業の記念に! ということで 2人で関西方面への鉄道旅行をする事になりました。
高校への進学が決定した2月の下旬・・・・二人は別々の進路を歩むことを決めたのですが 受験勉強からの解放と今まで我慢していた鉄道趣味の再開を記念して 青春18きっぷを使って旅をする事にしました。
当然ながら・・・二人とも未だ子供・・・・大金なんか持っていません。そんな時、N君がこう切り出しました。
「僕の親類が和歌山に住んでいて お寺の御住職をやってるんだ・・・・こちらに来るならお寺の御堂に泊めてあげるよ!」 という事でした・・・。
そんな話をうちの両親にしたところ・・・「大変御迷惑な話と思うけど、行くのであれば お寺でいっぱい働いてこいっ!」という条件付きで 2人だけの卒業旅行に行ける事になりました。
東京駅で3時間ほど並んで 大垣行きの夜行列車に乗り込んで 一夜を明かし、大垣から米原・・・・大阪・・・天王寺・・・・そして和歌山へ・・・と 写真を撮りながらの楽しい「乗り鉄」の旅を満喫しました。
そして・・・和歌山の御住職のところへ向かい その日はお寺の御堂の中に布団を敷いて休む事になりました。
広い御堂の中で・・・・僕らは色々な話をしたっけ・・・・・これから始まる高校生活の話・・・当時好きだった女子の話・・・・もちろん鉄道の話等々・・・・・。
翌日は早朝から早起きして お寺の掃除を手伝いました。
御住職さんに深々とお礼を言って 2人は和歌山を後にしました・・・・
この日の目的は・・・・新快速に乗って西へ行けるところまで行ってみよう! という事になり、天王寺を経て大阪駅へ・・・そして大阪駅から 念願の新快速・・・(当時は117系電車)に乗る事が出来ました。
関西の鉄道・・・・・東京の住民にとって それは憧れの的でした・・・・。
複々線区間を豪快に飛ばす新快速電車に感動しながら 辿り着いたのが姫路駅・・・・・。
「ここまで来たんだから姫路城でも見に行こうか?」という事になり、駅を出て姫路城へと向かいました。
傍で見上げる天守閣に感動・・・・子供ながらに その風貌に感動したのを憶えています。
そして・・・・夕暮れを待たずして 二人は姫路を後して・・・・そのまま帰路につきました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この卒業旅行の後・・・・二人は別々の高校ということもあって 互いに会える機会はめっぽう減ってしまいましたが それでも 彼の高校の文化祭に遊びに行ったり 冬には厳寒の信州路へ鉄道撮影に行ったりしました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
高校2年になると・・・さすがにお互いに多忙となっていき 二人で一緒に出かける事も無くなってしまいました。
そんな中・・・・その日は突然訪れました・・・・・。
僕が学校から帰宅するや否や、母から信じられないような言葉を聞かされました・・・・
「N君が一昨日、亡くなったんだって・・・・」
僕は 正直・・・何を言っているのかも解らないまま 母の話を聴いていました・・・
「本当なのか・・・? この間・・・電話で話したばかりじゃないか!」・・・・
その日の夕方・・・・僕は母と二人で N君の自宅へ向かいました。
既に葬儀が執り行われた後の事で・・・・N君の家は閑散としていました。
母と一緒にN君の家にあがり、焼香を済ませ、N君のお母さんの話を聴いていました・・・・。
N君は その日の朝、通学のため自宅を出ようとした時に、倒れ・・・・そのまま亡くなってしまったそうです。
元々心臓が弱かったN君・・・・彼の成長も考えて この地に越してこられた事など・・・・。
僕は 只々そんな話を聞くのが精一杯でした・・・・あまりのショックで涙も流せなかったっけ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからしばらくして N君の家は また何処かに引っ越して行ってしまい その後の事は良くわかりません。
僕にとっての姫路の思い出・・・・・・
悲しい事ではあったけど あの日、二人で将来を語り合った一晩の出来事など 二人にしか判らない思い出が残っています。 あれから もう20年が過ぎ・・・・僕自身、大人になってしまったけれど N君には 今の自分がどのように見られているのだろうか・・・?
あの時の約束どおり・・・・僕は今でも鉄道趣味を続けているよ・・・!
今、こうしてN君の事を思い出してあげる事が 彼への最大限の感謝に繋がるのだと信じています。
鉄道にかける熱い思いは・・・・あの当時の二人と同じ・・・・。
姫路城を眺めるたびに・・・・僕の脳裏には あの時の事が鮮明に蘇ります・・・・・。