来月の13日に初日を迎える今公演の「おたふく・氷解」。
稽古も残すところ一ヶ月。
役者の自分創りも佳境を迎えようとしています。
順調な者、苦戦している者。それぞれの立ち位置がありますが、この時期の役者の自分創りの到達点が、その役者の台本の読み方の深浅と大きく関わっています。
十九回を数える劇団芝居屋の公演稽古を考えてもその傾向は顕著です。
苦戦している者の原因はハッキリしています。台本の読み方がアバウトであり、台詞の入り方がいい加減だからです。
台本を読み方は大きく二つに分かれます。
初めての台本を手にした俳優は、まずどんな内容なのかを把握する為に全体を読みます。
(この時自分の出番しか読まない様な者を私は俳優とは言いません。ただの素人です)
そして筋立てと自分の役の位置を把握します。この時把握したものは書かれてある抽象です。それは「だいたい」の世界であり、「こんな感じ」の世界です。私はこの状態を「読者の読み方」と定義しています。この世界からは役者の具体的感情の動きや行動は生まれません。
次に「役者の読み方」に至ることが必要なのです。
俳優が役者としての読み方を手に入れる為には大づかみの「読者の読み方」で手に入れた客観的な事実を元に次の段階に進まなければなりません。
その次の段階が「役者の読み方」です。
「役者の読み方」に必要な事は、役の視線で世界をみることです。俯瞰する「読者の読み方」からの転換が必要なのです。
ここでの要点は「知らない事を知る」ということです。「知らない事を知る」という事は「初めて」を創ることです。
劇中に登場する者は、どんな状況であれ、その時初めてであるべきです。私達の一見繰返される日常でも、その日その時は初めてなのです。その予測不能さの危うさを内包していなければ芝居は面白くありません。
この事知るためには、周到な準備が必要になります。しかし特別な事をする必要はないのです。台本をしっかり読む事と台詞をしっかり入れることです。
とにかく残った時間を大切に使うことですよ。
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