私が芝居の道に足を踏み入れてから、今年でかれこれ43年経ちます。
その間芝居を志した無数の人達が私の前を通り過ぎて行きました。
また今も同様です。
しかし、芝居への関わり方が年代別によって大きく変ってきています。
私が芝居に足を踏み入れた当時は、まさしく日本が戦後からの驚異的な復興を果たす高度経済成長期でした。
金銭的に物質的に豊かになる事が何より優先される世の中でした。
そんな世の中での芝居の位置は非常に低く、歌舞伎の発祥当時のという差別用語が一般の人にも通じるそんな時代でした。
そんな世の中ですから、「芝居をやりたい、役者になりたい」などという事はとんでもない話だったわけで、不良・道楽者というレッテルがすぐに張られました。うるさい世間の眼があった訳です。
当時は芝居の道に足を踏み入れる為の社会的な関門があったのです。
今の様に自分の意思だけで何でも決めることができる世の中ではなかったのです。
その汚名を被ってでもやりたい者は「覚悟」を持って芝居の世界に入って来たのです。
その「覚悟」の内容とは芝居を生活の中の第一義と考えることです。芝居をする為の責任と義務を自覚するということです。
さて、「近頃腹の立つ事」という本題に戻りましょう。
世間的な縛りや世間の眼などというものが機能しなくなった現在、芝居に足を踏み入れる若者の多くに共通する大きな欠陥。それが私を苛立たせ、腹を立たせます。
その大きな欠陥。それは「自己本位」ということです。それがどの様な局面にあっても優先される人間が多くなっています。
「約束」「契約」そういった人間の人間たる、人との間を作る信頼を醸成するための大事なモノを、自分の都合でいとも容易く破棄できる者が多くなっています。
こんな人間が大手を振って芝居の世界にいる。
これは忌忌しきことですよ。
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