大鵬親方が亡くなった。 双葉山の現役時代を知らない僕にとって、大鵬こそが最強、大相撲の
象徴である。 しなやかな身体・美男ぶり、今は相撲中継など一切見ない僕だが、あの頃の熱狂
は、今でも身体と心の奥底にしっかりと息づいている。
醒ヶ井・梅花藻の川辺
けれど僕には、もう一人の「大鵬」の面影が、まざまざと残っているのだ。
身長5センチの厚紙を二つ折りにして、こしらえた紙相撲の力士たちの面々である。
最高作を大鵬にあてた。次位を、好きだった「栃の海」。その次の会心作は「信夫山」である。
ふと目覚め呼吸しており雪の音
独りみる冬の星座をひとり聴く
今闘病中の、二所の関親方・ホラ吹きクレイこと、「金剛」なんて、両腕の上げ・下げまでを
はっきりと覚えているんだ。 力士の力量・得意技を把握しながら、腹のでっぱりや、両腕の
塩梅を考えながら、ひとりひとりのお相撲さんを創っていったのである。
「豊山」は、腕が長く、しかも左右の曲がり方が違った。だからして、上手投げ、下手投げが
見事に決まり申した。 わずか5センチの紙の力士に、それぞれの個性があったのだ。

土俵はシングル盤ほどだったかな。細めの縄を回して、四隅には「徳俵」も設けていましたよ。
座布団に乗せて、右手で左手で微妙な力加減で叩くわけだが、贔屓の力士には、叩きかたに
力がこもったものでした。 星取表をこさえてね。 背の高い「明武谷」がつり出しで決めた1番
なんて、快心でござったものだ。 褐色の弾丸・房錦、りゃんこの鶴ヶ峰、怒涛の柏戸・・・・・
現実の力士の顔よりも、紙の相撲さんの顔の方が・・・今もはっきりと思い浮かぶのです。