競馬の祭典、第79回ダービーが終わった。私の本命馬「テ゜ィープブリランテ」は、見事に
一着だったのだが、二着馬がノーマークだった。 競馬の口座の残額がゼロになってしまった。
祭りの終わった虚脱感に、ふらふらと庭に出て、斜めに生える芝生に寝転がった。
流木を五月の湖水濡らしけり
湖蒼しせんだんの花こむらさき
伸び放題の雑草を、けだるく抜いていた時、和裁の仕事に疲れた母が、庭に出て、
雑草を抜いていた姿を、ふと、思い出したのだった。
今は亡き両親が、残してくださった私の「小天地」である。いつか、芝生に寝転がり涙していた。
大げさに言うと、戦火を抜けて故郷・タラへ帰ったスカーレットが、土を握り誓った言葉を思い出して
いた。 母がみまかって土地・建物を引き継いだ訳けだが、背中に感じる土の温もり、芝生の
感触に初めて、「ここは、俺の土地なんだ」と、思い至ったのである。
ふと見ると、去年、ゴーヤときゅうりが成っていた場所に、さやえんどうが成っていた。
えっ、母が植えたのかしらん? 10莢ほどのお豆さんを収穫。
若葉雨競馬新聞まだ来ぬか
桐咲いてすこし華やぐ峠道
一個残っていたジャガイモをサイコロにして、水から煮る。別の鍋でお豆さんとしめじを煮て、
じゃがいもに投入。甘辛く煮上げて、負けた競馬を思いつつ、母の「遺産」に舌鼓を打ちつつ、
ホークスとドラゴンズの、ナイターに一喜一憂している初夏の夜である。