エコミュージアムの町、山形県朝日町を初めて訪ねる機会を得た。
持続可能な地域づくりのチェックリストを作成して、その試行を朝日町役場に相談するための訪問であった。
朝日町は、1991年に策定した町の総合計画で、町づくりの基本テーマを「楽しい生活環境観、エコミュージアムのまち」を掲げた。
この計画の策定時期、日本列島はバブル景気、リゾート開発ブームが全国各地で志向されていた。
その中にあって、朝日町は、物や金の豊かさではなく、自然と人間の共生、ゆとりを重視し、「都会の幻想にとらわれることなく、自分たちの町の固有の生活を楽しみ、自分の町について学びながら、よく理解し、誇りを持って生活していこう」(注)という考えたわけである。
エコミュージアムは、1960年代にフランスのアンリ・リビエールという人が提唱した博物館の新しい考え方。単なる野外博物館ではなく、地域にあるものに住民が学び、地域の未来を創造するという考え方である。今日の住民主導の地域づくりの奔りともいえる。
つまり、従来の博物館は過去の遺物を専門家がショーケースの中で見せる施設に過ぎないが、エコミュージアムは「未来に向けて、今あるものを住民が暮らしや生業の中で活かし、そこから学ぶことで未来を創造しよう」とする地域づくりの運動である。
そのエコミュージアムの思想を町の総合計画に取り入れた朝日町は、現在どうなっているのか。
今回の訪問では、エコミュージアムのその後を十分にヒアリングできたわけではないが、エコミュージアムの拠点となる施設や運営機構は現在もなお、健在の様子であった。
象徴となる空気を祭る世界初の神社「空気神社」も維持管理がきちんとされていた。
では、住民の意識はどうか。今回のヒアリングでは、「現在、地域の宝さがしなど、エコミュージアムの考え方で実施している事業があるが、住民はそれとエコミュージアムと同じものだと思っていないではないか」という声も聞かれた。
答えを急がず、再度、訪問をしてみたい。
注)環境庁「里地からの変革」時事通信社、1996年より