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地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

飯田市民アンケート結果(地域における環境施策の積み重ねと地域環境力の形成・蓄積)その1

2010年05月09日 | 環境と教育・人づくり
この連休中は、昨年晩夏に実施した飯田市のアンケート調査の集計・解析をしていた。ようやく報告書をとりまとめることができた。解析データ等は今後、学会に発表していく予定。ここでは、考察の要点を紹介する。


1.飯田市の環境政策への示唆

 飯田市で実施した住民アンケート調査は、飯田市がこれまで積み重ねてきた環境施策の成果を、住民の意識・行動の側から捉えるものとなった。今後の飯田市の環境政策に、次のような示唆を得ることができる。

(1)これまでの環境施策等の効果

 飯田市のこれまでの環境施策等は、住民に影響を与え、住民の環境配慮行動を促してきた。この結果、飯田市の環境先進性は、住民の意識・行動面にも現れている。環境基本計画、地域ぐるみISO等、おひさま進歩エネルギーの活動が各々、異なる年代に影響を与えてきた。

 こうした時期や対象を変えた環境施策等の効果が十分に現れている。行政施策、企業活動、環境NPO等が各々の訴求対象を持ち、対象に応じた普及啓発、環境教育等を展開してきた成果である。

 地域の環境施策等の積み重ねの成果が地域住民の意識・行動に明確に現れている地域は、全国でも稀ではないだろうか。飯田市が誇るべき点である。

(2)社会関係資本の強さと環境配慮度

 飯田市では、結合的な社会関係資本の程度が強い層(高齢者層)ほどに、環境意識・行動が高い傾向にある。この構造から、飯田市の高齢者の環境配慮行動の実施度は全国と比較して、圧倒的に高い。

 つまり、地区毎の自治公民館活動の活発さを基盤とする結合的な社会関係資本の上に、環境配慮意識・行動が形成されているものと考えられる。

 環境先進地・飯田の面目は、創意工夫に満ちた独創的な施策だけにあるのではなく、地域づくりの取組みにより継承・強化されてきた伝統的な社会関係資本を基盤とした「地域環境力」が形成されている点にある。

 ただし、結合的な社会関係資本だけに依存しては、時代の移り変わりに遅れる可能性もある。企業やNPO等を介したコミュニケーションや社会関係資本の形成を、引き続き積極的に行う必要がある。

 この際、「おひさま進歩エネルギー」の活動は、よいお手本である。同NPOでは、保育園等での父兄を巻き込んだ環境教育等を実施し、30歳代に強く影響を与え、30歳代の太陽光発電の設置意向を高めている。

 公共施設での太陽光発電の設置を環境教育に結びつけ、一般の太陽光発電の設置を促すという戦略は、各地域の計画で描かれることが多いが、それが実際に実践され、形になっている。

 この成果は、環境先進地飯田市における多様な取組みに中でも、特に注目したい点である。今後も、従来の自治組織等との関係が希薄になりがちな対象に対して、おひさま進歩エネルギーを始め、地域NPOが普及啓発の役割を果たすことが期待される。

(3)若年層の課題と解決方向

 こうした中、飯田市の20歳代は、これまでの環境施策等の影響を受けていなく、環境配慮度が低い傾向にある。これら次世代にも影響を与えていくような環境施策等を創出していくことが必要となる。

 20歳代は、結合型社会関係資本(地域活動との関わり)が弱く、従来のローカルなコミュニケーション・チャネルの影響も希薄なことから、環境施策等の影響が届きにくい。しかし、一方で、20歳代は、地球温暖化問題の問題認知や太陽光発電の設置意向が強い。

 こうした特徴を踏まえ、従来型の環境施策等とは異なるアプローチを創出していくことが考えられる。

 20歳代は、就職や結婚等といったイベントもあり、住宅、電気製品、自動車等のハードウエアの購入に関心がある年代である。これらのハードウエアを契機にした環境配慮の普及啓発を行うことが考えられる。


その2に続く。
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