羽花山人日記

徒然なるままに

『THE DAYS』(映画)

2023-06-23 17:16:30 | 日記

『THE DAYS』(映画)

6月1日にNetflixから世界に配信された,8話8時間にわたる映画を,4夜連続して観た。

2011年3月に起きた福島第一原子力発電所の事故に題材を得た,事実に基づく,西浦正記・中田秀夫監督による劇映画である。

門田隆将著『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』を基底にしているので,事故への対処をめぐる人間ドラマとなっている。

場面として,福島第一原発事故現場,官邸,東電(映画では東央電力),および事故に遭った東電社員の家族の4つが,時系列的に写し出される。しかし,話の中心は事故現場である。

2011年3月11日午後,福島第一原発は地震と津波に襲われ,全電源喪失という未曽有の事態に襲われる。対処のマニュアルなど存在せず,吉田所長(役所広司)や1・2号機当直長の前島(竹野内豊)らは,手探りで原発の暴走を抑える手段を講じていかなければならない。

東電副社長の村上(光石研)は現場の作業が進まないのにいらいらし,東首相(小日向文世)は東電の煮え切らない態度に癇癪を起こす。

事故の局面ごとにこのやりとりが繰り返され,劇は進行する。

ベントによる燃料格納庫の気圧低下,海水の注入などをめぐって,それぞれの立場の利害関係があり,しわ寄せは結局現場におしつけられる。

電源喪失で人力による手作業で操作しなければならず,高線量の放射線の中でそれは行われる。時々鳴る線量計の警報音がそれを知らせる。

2名の行方不明の東電職員について,巷ではこの2名が事故を起こして逃亡したのが惨事につながっているというデマが流され,テレビのコメンテーターはこの二人を徹底的に糾弾せよと絶叫する。それをテレビで見た母親は,むしろそうであった方がいいとつぶやく。

現場は戦場である。水素爆発があり,危機的状況の中で,東電や関連会社の職員は必要最小限の要員を残して退避する。残った職員は,任務に就く前に,家族に向けてメールで遺言を送る。

懸命の注水によって,原子炉の温度と圧力は低下し,事態は沈静化に向かう。しかし,吉田所長は,なぜ沈静化したのか分からないと述懐する。

もし,福島第一原発の全てが暴れ出したら,日本列島は太平洋から日本海に至る高線量ベルトによって分断され,崩壊に至るという専門家のシミュレーションが劇中示される。その瀬戸際にわたしたちは置かれていたのだ。

あれから12年。当時のテレビのニュースで見た場面は覚えている。しかし,この映画はその時にわたしたちはどれだけどんな危機にさらされていたかを教えてくれる。

ウクライナ危機の中で,原発の安全性や核兵器の使用が不安視されている現在,この映画の意義は一層重要である。世界中の人たちに観て欲しい。

 

散髪の帰り道で

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コメント (5)
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