繁 殖 干 渉
6月2日付の朝日新聞に「繁殖干渉」という用語の解説が出ていた。
本来は交雑することのない別種の間で交尾や受粉が生ずることを言う。近縁の種が混じっている集団でこれが起きると,本来的な交雑が妨げられる。
AとBという種が混じっている集団で,Aの個体数がBよりも多いと,AはA と出会う確率がBと出会うより高いが,BはAと出会う確率の方が高くなる。AとBの間の子どもは育たないか不妊/不稔であるため,次世代でBの数は減少し,世代とともに,Bは集団からいなくなる。
記事では,高知大学の鈴木紀之教授らが観察した例を報告している。ナミテントウはいろいろな植物にいるアブラムシを食べるのに対し,近縁のクリサキテントウはマツの上で特定のアブラムシを食べている。
これは,生態学でいう「食い分け」という,異なる種が異なる餌を食べることによって,種の共存が図られる現象に見える。
しかし,クリサキの食性を観察すと,マツにいるアブラムシより,ナミが食べているアブラムシの方を好むことが分かった。つまり,二つの種の隔離は,「食い分け」では説明できない。
さらに二つの種を一緒にして観察すると,ナミの雌は同種の雄と交尾する傾向が強いが,クリサキの雌はナミの雄を受け入れやすいことが分かった。
つまり,クリサキは繁殖干渉を避けるために住み分けて,おいしくもないマツのアブラムシを食べていることが考えられるのだ。
こうした現象は,他の動物や植物でも存在することが分かってきて,学説の見直しが必要になっているという。
蛇足を付け加える。
植物ではこの異種/属の間の交雑から新しい種が生まれている例が結構ある。
パンコムギは,染色体が42本あり,これは7対の3つのグループに分けられる。そして,それぞれのグループは異なる3つの種に由来することが分かっている。つまり,パンコムギは3つの異なる種の間の交雑から生まれたということなのだ。
自然の中で,こうした異種/属を親に持つ雑種がどのような過程で生じたのかは謎である。しかし同じことがコムギの仲間や,ナタネの仲間にみられる現象で,繁殖干渉が植物の進化の一つの手段となっているといえる。
そこで,自然に起きる異なる種/属間の雑種を人為的に作り出して,品種改良に利用しようとする試みがなされてきた。
この種/属間雑種の成功例としては,ハクサイとキャベツ(甘藍)の雑種のハクラン,コムギとライムギの間のライコムギが挙げられるが,多くの場合は思うように行っていないようだ。
ダイコンとキャベツを交雑して,地下部と地上部が利用できる作物を目指したが,地下部,地上部とも思うようにならなかったらしい。
有名な話だから,ご存知の方が多いと思うが:
ある女優が劇作家のバーナード・ショーに出したラブレターに,「私たちが結婚すれば,あなたの知性と,わたしの美貌を兼ね備えた素晴らしい子供が生まれます。」と書いた。ショーは返事に,「あなたの知性とわたしの容貌を持った子供ができると困る。」書いた。
アジ サ イ
STOP WAR!