ご飯の粘り
今日の朝日新聞24面の『お米と私たち』という連載記事の中で、山形県庄内町で行われた「あなたが選ぶ日本一おいしい米コンテスト」の決勝大会で、北海道で生産された「ゆめぴりか」が最優秀の金賞に選ばれたことが報じられていた。このほかメジャー部門6人のうち5人が北海道の生産者で、そのうち4人が「ゆめぴりか」を作っていたという。
現在の北海道米の市場価値からすれば驚くほどのことではないかもしれないが、北海道米の昔を知るものにとっては夢のような話である。
北海道で稲づくりが始まったのは明治に入ってから、北海道の農業技術者は低温に強い耐冷性品種の育成に努め、耕作前線を北進させ、新潟県に並ぶ米生産地に北海道を押しあげた。
しかし、北海道米には宿命的な問題が付随していた。夜間の低温である。
米の品質を決める大きな要因は飯米の粘りである。米の澱粉にはアミロペクチンとアミロースの2種類があり、アミロースの含量が高くなると飯米は粘り気が少なくなる。穀粒に澱粉が蓄積する夜間の低温はアミロースの含量を多くさせる。北海道米は必然的に、高アミロース米となり、まずい米という評価を受け続けてきた。
北海道では、1980年以来米の品質向上に本格的に取り組み、アミロース含量を低く抑える遺伝子源を探し、1988年「きらら897号」という品種を発表した。
この品種のアミロース含量は「コシヒカリ」並みであり、北海道米の評価を一変させた。
以来、2001年には「ななつぼし」、2008年には「ゆめぴりか」という良品質米品種を登場させ、北海道米の地位を確立した。
温暖化による夜間低温の軽減ということも手伝ったかもしれないが、わたしは北海道の農業技術者に心からの敬意を表したい。
この新聞記事に、日本でも長粒米の品種が育成されていることが紹介されている。
そのうちの一つ、「サリークイーン」は1991年に農水省作物研究所から発表されたもので、本来インディカ米を材料としていた料理用にと開発されたものである。なかなか面白い着想だと注目していたが、収量が低く、倒れやすいということもあり、需要もそれほど伸びなかった。
インディカ米はアミロース含量がジャポニカ米に比べると高く、また炊飯方法も炊きこぼすやり方なので、飯米は日本のご飯のように粘り気がなくさらさらしている。(余談だが、わたしはこのさらさらした炊きあがったご飯に牛乳をかけて食べるのが好きである。)
日本に来た東アジアからの留学生が、日本のご飯は手で食べると指にくっついてきて食べにくいとこぼしていた。
「サリークイーン」のアミロース含量は「コシヒカリ」と同程度らしいが、アミロース含量を下げた長粒米品種を育種し、日本人向けの工夫を付加して、パエリャやピラフなどに使うことを考えたらどうだろうか。
寒空の下で
ピラカンサ
サザンカ
STOP WAR!