差別の根拠
今朝の天声人語氏は、人類進化の話から、グイド・バルブイアーニ著『人類の祖先に会いに行く』から「人類は異なるグループに分割されない」の文を引いて、人類の差別に科学的根拠はないと言い、「差別や偏見に意味はないとわかる」としている。
ひねくれた見方といわれるかもしれないが、わたしはどうもこの言葉に引っかかる。
わたしはこの本を読んでないが、著者の言うのは分類学的には人類は一つの種であって亜種のようなグループには分けられないということではないだろうか。あえて言うならば、「区別」を言っているのであって、天声人語氏のいう「差別」とは次元が異なっている。
また、差別の「科学的根拠」という言葉も腑に落ちない。何をもって「科学的根拠」というのか。それがあれば差別してもいいというのか。
確かに、ダーウィンの進化論に派生する優生学の歴史には、人種によって知的能力に差があることを証明しようとする誤った試みがなされた例がいくつかある。しかし、社会的に問題とされる「差別」には優生学を越えた問題が含まれているのではないだろうか。
自分を他より上位に位置づけようとするのは、進化の結果動物そして人類に備わった性質だということを本で読んだ記憶がある。とすれば、人は差別する傾向を内包しているということになる。
『天声人語』を読んだ後、12月30日にNHK1チャンから放映された『クローズアップ現代』をビデオで観た。昨年の朝ドラ『虎に翼』に題材を求めて「住みにくさ」を取り上げ、ゲストにドラマの脚本を担当した吉田恵里香さんが招かれていた。
吉田さんは、このドラマを、法の下の万人の平等を唄った憲法第14条を思い描きながら書いたという。そして、憲法の前後で人を住みにくくする差別は世の中であまり変わっていないのではないかということを描きたかったという。
吉田さんは言う。「自分がマジョリティーでいる以上、だれかを傷つけている。」だから、差別に自分が関係ないと思わないことが大切である。
わたし自身も、マジョリティーの側に立ち、そのことでホッとする傾向があるのは否定できない。
吉田さんの指摘はわたしにとっても極めて重要である。
STOP WAR!