理科離れが顕著な昨今、それだけ多くの人々が相対性理論に興味を持つということは文句なしにいいことです。いいことなのですが怪しげな疑似科学の本に興味が向かってしまうのは残念です。なぜこういうことになってしまうのか。私なりに考察してみました。
一つは相対性理論が予測する様々な現象は日常生活の感覚からすると突拍子もないものが多いです。光の速度に近い速さで飛行する宇宙船は船体の長さが縮む(ローレンツ短縮)とか、船内の時間の流れる速さが遅くなる(SFでいうところのウラシマ効果)とか、宇宙船の質量がどんどん重くなる(光速度に達した所で無限大になる)とかですね。強い重力が光の進路を曲げる(重力レンズの理論的裏づけ)とか、質量とエネルギーが変換可能である(原子力の理論的基礎)などの予測もあります。
どれも私たちの日常感覚では経験できないことばかりです。物理の実験では大型加速器の中で素粒子を光の速度に近い速度に加速して実際に質量が増大するかどうか調べます。速度が上がると時間が遅れるかどうかはジェット機に原子時計を搭載して地球を一周させて時間の遅れ(極めて微細な)を観察します。おそろしく大掛かりな実験ばかりでちょっと私たちが気軽に経験できないことが多いです。
ここに理由があるような気がするのです。
例えば相対性理論が登場する以前のニュートン力学は、作用反作用や万有引力や慣性など日常生活になじみやすい分かりやすくて、誰でも観察可能な現象を説明するものでした。作用反作用は、野球やスケートやブランコなどで、その理論が示すものを実感できます。そのため人々もニュートン力学に疑問を持つということは余り無かったのでしょう。実際にニュートン力学の批判本なんて見たことありません。一方、 相対性理論の理論的予測は突拍子も無くて面白い。でも本当かどうか良く分からないで気持ちが揺らいでいえるところに疑似科学理論家は付けこむのではないでしょうか?彼らの書くことは分かりやすいのです。何しろ数式を使う論者が少ないですから。一方きちんとした物理学者は数式で説明しようとします。そうでないときちんとした説明ができませんから。その結果、一般市民には分かりにくくなります。そして多くの人は分かりやすい方を好みます。その結果、書店には疑似科学本が溢れてしまうという悪循環を起こしているのでしょう。これはいかにも残念なことです。ベストセラーとなった『ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで』(ハヤカワ文庫NF)の後書きか前書きに、こんな話があります。 ホーキングが本書を執筆するにあたって編集者からきつく言われたことは数式を使わないようにしてほしいということだった。数式がひとつ出てくる度に読者が半分(このへんうろ覚えです)に減ると言われたそうです。そこでホーキングは苦心して同書を執筆したとか。そんなエピソードが実際にあります。 (続く)
一つは相対性理論が予測する様々な現象は日常生活の感覚からすると突拍子もないものが多いです。光の速度に近い速さで飛行する宇宙船は船体の長さが縮む(ローレンツ短縮)とか、船内の時間の流れる速さが遅くなる(SFでいうところのウラシマ効果)とか、宇宙船の質量がどんどん重くなる(光速度に達した所で無限大になる)とかですね。強い重力が光の進路を曲げる(重力レンズの理論的裏づけ)とか、質量とエネルギーが変換可能である(原子力の理論的基礎)などの予測もあります。
どれも私たちの日常感覚では経験できないことばかりです。物理の実験では大型加速器の中で素粒子を光の速度に近い速度に加速して実際に質量が増大するかどうか調べます。速度が上がると時間が遅れるかどうかはジェット機に原子時計を搭載して地球を一周させて時間の遅れ(極めて微細な)を観察します。おそろしく大掛かりな実験ばかりでちょっと私たちが気軽に経験できないことが多いです。
ここに理由があるような気がするのです。
例えば相対性理論が登場する以前のニュートン力学は、作用反作用や万有引力や慣性など日常生活になじみやすい分かりやすくて、誰でも観察可能な現象を説明するものでした。作用反作用は、野球やスケートやブランコなどで、その理論が示すものを実感できます。そのため人々もニュートン力学に疑問を持つということは余り無かったのでしょう。実際にニュートン力学の批判本なんて見たことありません。一方、 相対性理論の理論的予測は突拍子も無くて面白い。でも本当かどうか良く分からないで気持ちが揺らいでいえるところに疑似科学理論家は付けこむのではないでしょうか?彼らの書くことは分かりやすいのです。何しろ数式を使う論者が少ないですから。一方きちんとした物理学者は数式で説明しようとします。そうでないときちんとした説明ができませんから。その結果、一般市民には分かりにくくなります。そして多くの人は分かりやすい方を好みます。その結果、書店には疑似科学本が溢れてしまうという悪循環を起こしているのでしょう。これはいかにも残念なことです。ベストセラーとなった『ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで』(ハヤカワ文庫NF)の後書きか前書きに、こんな話があります。 ホーキングが本書を執筆するにあたって編集者からきつく言われたことは数式を使わないようにしてほしいということだった。数式がひとつ出てくる度に読者が半分(このへんうろ覚えです)に減ると言われたそうです。そこでホーキングは苦心して同書を執筆したとか。そんなエピソードが実際にあります。 (続く)