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考現学(考古学が過去を研究対象とするように、現代社会の一側面を研究しようとする学問)の提唱者、今和次郎の著書『日本の民家』を読みました。この本を東京の書店で購入したのが平成元年。何と四半世紀積読状態だったのでした。書店のカバーの背表紙が茶色く変色していました。そして例によって出張の行き返りの列車の中で面白くて読了というパターンとなりました。内容は今和次郎が大正11年(1922年)に当時の農商務省の委託を受け、民俗学者柳田国男も加わった白茅会という研究グループと一緒に行った民家調査の集大成です。青森家から鹿児島まで日本全国の農山漁村を訪問し、その土地の特色ある民家の間取りや土地利用、住民の生活用具等を豊富なスケッチと共に後世に遺しています。すごいと思ったのは当時としては何の変哲もない民家を題材に取り上げたということです。「古民家」を取り上げたという訳でもないのです。現代で仮に同じことを私がするとしたら高度成長時代の団地や建売住宅を対象に取り上げるという感覚に近いかもしれません。ちなみに「民家」という言葉が社会に広まったのは、解説者の藤森照信先生の記述によれば本書刊行がきっかけだったそうです。