今回の一連の熊本地震で重要な防災上の教訓がたくさん得られたことと思います。その中で一つだけ書いておきたいことがあります。鹿児島の川内原発の防災体制です。現状では原発が被害を受けて放射能汚染が発生した場合、周辺住民は何らかの交通手段で遠方へ避難することになっています。今回の熊本地震では、九州自動車道と九州新幹線は丸2週間不通になりました。一般道も寸断され物資搬入や避難も滞りました。今回は津波がなかったので船舶での川内原発周辺からの避難はありえますが、津波があった場合は不可能になります。以上の事実から地震・津波で川内原発災害が起こった場合、住民が安全圏へ通常の交通手段による避難は不可能だということです。したがって避難は交通手段によらない方法を考えなければなりません。
対策としては、住民が避難できる屋内シェルターを整備することでしょう。薩摩川内市内の学校体育館などで災害避難所指定施設を厳重に耐震化し、屋内にプラスチック・ビニールなどを素材として圧縮空気で膨らませて内部を陽圧化できるシェルターを設置することです。内部の空気の換気設備には放射性物質を除去するフィルターを設置することが必要です。ガイガーカウンターも常時設置しておく必要があります。もちろん建物全体を気密化できればより望ましいですが。この中に最低でも3~4日はいないといけないでしょうから水や食料、簡易トイレも備蓄する必要があります。また移動可能になった場合に施設から出た際の放射性降下物遮断のためのマスク・コートなども人数分用意しておく必要があります。
問題は96,000人の薩摩川内市民全員を収容できるだけの設備を用意できるかということですが、原発から離れた市周辺部住民で避難可能な方は避難するなどで最低施設数を試算する必要はあると思います。おそらくは原発に近接した圏内だけでも、こうした設備があればよいのではないかと推測しています。このあたりの試算は専門家によるシミュレーションが必要でしょう。
いずれにせよ、原発災害発生時に交通手段による迅速な避難が困難になることを前提とした避難計画はぜひ必要であると考えます。