私が中学生の頃に初めて鑑賞したシドニー・ポワチエ氏の出演作が上の写真の『駆逐艦ベッドフォード作戦』(ジェームズ・ハリス監督 1965年 アメリカ)でした。東西冷戦の中での軍事的緊張を描いていました。アメリカ海軍の駆逐艦ベッドフォードは、北大西洋のグリーンランドとアイスランドの間にあるデンマーク海峡で哨戒を行っていましたが、ソ連の潜水艦を探知します。艦長のエリック・フィンランダーは、なぜか目の色を変えてソ連潜水艦の追跡を開始します。同艦はポワチエ氏演じる新聞社から取材のために派遣されたマンスフォード記者を乗艦させていました。記者はアメリカの領海を侵犯している訳でもないソ連潜水艦をなぜ執拗に追い回すのかと抗議をします。同艦に対潜行動のアドバイザーとして搭乗していた元ナチスドイツ海軍のUボート艦長だった人物も、危険な行動だと警告しますが艦長は聞き入れません。この艦長の行動が物語の最後に無残な結末を迎えます。
私も艦長の行動が不思議でしたが、後に物語の舞台のデンマーク海峡が「GIUKギャップ」と呼ばれる特別な海域であることを知りました。北大西洋のグリーンランド(頭文字G)、アイスランド(頭文字I)、イギリス本土(頭文字UK)の3つの島に囲まれた海域は北極海沿岸を拠点とするソ連北方艦隊が大西洋に出ていくために必ず通る海域なので、そこに目を光らせておけばソ連艦隊の動きが把握できるということなのだそうです。余談ですが第二次大戦中は、米英の連合国がナチスドイツと死闘を繰り広げていたソ連を支援するための兵器や物資(レンドリース)を積んだ輸送船がこのGIUKギャップを航行しましたが、ドイツのUボートはここで待ち伏せをして、片っ端から輸送船を撃沈していたそうです。上記のUボート元艦長がアドバイザーとして乗艦していた理由もその経験を買われてのことだったそうです。
この映画のような偶発的な衝突が大惨事を招きそうな事態は、今、ウクライナと台湾でも起きるかもしれず、57年前の映画ですが、依然として鑑賞する価値のある映画だと思います。