昨日のブログで日本に陰謀論以上の反ユダヤ主義は広まらなかったということを記述しました。もともとキリスト教信者も少なく、そもそも国内にユダヤ人がほとんどいない状況で陰謀論の枠を超えるような反ユダヤ主義が蔓延るはずがない、とそう思っていたのですが、どうもそうだとは言い切れない事件が起こっています。
6年前の2014年2月に東京都内や横浜市の公立図書館が所蔵する『アンネの日記』とその関連図書が何者かによってページを破られる被害が頻発した事件です。いずれも一部のページをカッターや手でちぎり取るような形で損壊されていたそうです。このため一部の都立図書館では『アンネの日記』の開架を取り止める動きも見られたとのことです。翌月の3月14日に杉並区の区立南荻窪図書館で関連本23冊を破った器物損壊容疑で当時36歳の東京都小平市の無職の男が逮捕されました。男は「アンネ自身が書いたものではないと批判したかった」と犯行動機を語っている。また、2013年の2月や5月にも同様の犯行を行っていたそうです。男は精神科への通院歴があり、逮捕時から意味不明な供述を繰り返し、精神鑑定が実施され、6月20日、東京地方検察庁は被疑者が犯行当時に心神喪失の状態にあったとして不起訴と、「人種差別的な思想に基づくとは認められなかった」とされました。安倍総理は、3月23日にアムステルダムのアンネ・フランクの家を訪問し、今般の事件に際して「大変残念で、二度と起こらないように希望する」と伝えこの事件は終息しました(注)。
一人の精神疾患者の行為ということでこの事件は終わりましたが、男は横浜の事件は否定しているので、模倣者がいたことが示唆されます。私は個人的には、どうも日本人の精神性に反ユダヤ主義が感染してきているのではないかと危惧しています。といいますのは、私の外ならぬFacebook友達(あるいはその友達)に意外と陰謀論レベルの反ユダヤ主義的な言説を素朴に信じている人たちがいることに気が付いたということもあります。彼らは100年も前に偽書と判明している「シオン賢者の議定書」をそのまま信じているようです。なぜそのように素直に信じられるのかさっぱり分からないのですが、そういう人々が一定数存在していることは確かです。(続く)
(注)この事件の事実関係はwikipediaの「アンネの日記破損事件」を参考にしています。