CNNの報道によりますと、2月22日に民間宇宙船として初めて月面着陸に成功した宇宙企業の米インテュイティブ・マシンズ社が記者会見で、同社の無人月着陸船「オデュッセウス」が月面で横倒しになっていることを明らかにしたそうです。記事によりますと「同社のスティーブ・アルテマス最高経営責任者(CEO)は、その後のデータを見ると、オデュッセウスは月の石につまずいて横倒しになった可能性が高いとの見解を示した(中略)・・・アルテマス氏はまた、オデュッセウスは安定した状態にあると強調。太陽光パネルには日光が当たっており、バッテリーの充電は全く問題なく行われていると説明した。既に米航空宇宙局(NASA)が搭載した実験的技術の試験が一部始まっていて、ミッションの主な目標を確認している状況だという」とのことです(注1)。これには驚きましたが、思えば1月20日に月面着陸に成功した日本の無人探査機「SLIM」も上下逆さまの状態で月面にいるわけですから、ありうることなのでしょう。ただしSLIMは最初から条件の悪い傾斜地への着陸に挑戦していたので、ある程度は予測された事態だったと思われます。
そこで思い出したのは、55年前の1969年7月20日に人類史上初の有人月面着陸を試みたアポロ11号の着陸寸前の逸話です。着陸船イーグル(上の写真です 注2)に搭載された航法コンピュータLGC(LM Guidance Computer)が、月面まであと少しという高度で過負荷のため機能不全を起こし、アームストロング船長が直ちに手動制御に切り替えて無事着陸を果たしたという逸話です。当時の技術では着陸地点の正確な地勢が完全に把握されていた訳ではないので、このような事態は想定されていたそうです。アポロ11号から55年経っても、人間の判断力と同程度の信頼性が、まだコンピュータには備わっていないのだなと思いました。
(注1)https://www.cnn.co.jp/fringe/35215669.html
(注2)NASA