あれは、数年前の事だった。当時、大学生だった私は親友と二人で某所の心霊スポットへ足を運んだ。
なんでも、『必ず不思議な事が起こる』というのだ。
「あ~……これが噂の……」
そこは所謂廃病院というやつで、いかにもといった感じだった。人気スポットという事もあってか、病院の前には既に一台車が停まっていた。
私達は早速中に入る事にしたのだが、
「かなり荒らされてるわね……落書きも酷いし」
持参した懐中電灯で照らすと中は荒れ放題だった。
「流石にこれは無いわね」
恐らく前にここを訪れた人達が捨てていったのであろう。空き缶やら菓子の袋が散乱している。
「確かに……」
「無いわね、これは」
壁の落書きもそうだが、いくらなんでも酷い。酷すぎる。
「ハァ……」
せっかく涼みに来たというのに余計に熱くなってしまった。
「まあ良いわ……帰りましょ」
怪奇現象どころか物音一つしないなんて、とんだデマだ。
それでも『もしかしたら』という淡い期待を込めて院内を一周してみたが、何も起きなかった。
「やっぱり、噂は所詮噂なのよ。あ~あ、来なきゃ良かったこんな場所」
つい不満を口にしてしまった。
「来年は違う人でも誘って」
そこまで一息に言って、親友を見る。彼女はムッとした表情をしていた。
「悪かったわね、もう誘わないわよ。ふんっ」
しまった、と思った時にはもう遅かった。帰り道も終始無言のまま、謝るタイミングを逃し、それきり彼女とは疎遠になってしまった。
心霊スポットなんて、行くんじゃなかったと今でも思う。