俺は、今、海釣りに来ている。
小さな港の防波堤で2本の釣竿をセットして引きを待つ。
仕掛けの長さを変えて、あたりをみる…そう俗に言う二刀流だ。
「つれますか?」
いつの間にか、後ろにいた見知らぬ少女が話し掛けてきた。
夕日の逆光で顔はよく見えないが、若い感じがする。この近くに住んでる娘かな?
そんな事を考えていると、少女が右手を上げて、竿の方を指差した。
「みぎの竿、ひいてますよ!」
おっと!本当だ!
俺は釣竿を素早く掴むと浮きに合わせた。
「あはは!釣れましたね~!」
クーラーボックスの釣果を見て、少女は笑った。
「なんてお魚なんでしょう?」
ん?…漁港の娘なら、自分の港で釣れる魚を知らないわけはないから、この辺に遊びに来た旅行客かな?
「ねぇ聞きました?」
そんな事を考えていると、少女は再び話し掛けてきた。
「このさきのえじまって所で、死体が打ち上げられたらしいの。」
ああ!朝、ここに着く寸前に、珍しく数台のパトカーとすれ違ったのは、その事故のせいかも?
「のろいのせいだって、もっぱらの噂よ。」
え?
少女の台詞に我にかえって、振り向いた時、少女の姿は消えて…
…いたら、怖かったけど、そんな事はなく、漁村の方へ走り去っていく姿が見えた。
少女なりの怪談話をしてくれたんだろうか?
唐突過ぎて、あまり怖く無かったけど(笑)
俺は釣りを続ける事にした。