運命と出会う瞬間

映画・小説・音楽・・なんでもありの気ままな感想

ユーミンの春と夏

2007年03月11日 21時16分21秒 | Weblog
ベスト盤というのはあまり好きではなくて買わない。しかし、先日出たユーミンの春の曲と夏の曲の自選集『seasons colours』はアルバムジャケットの素晴らしさ(アンセル・アダムズのみたいなモノクロ写真)とうなずける選曲(『花紀行』まで入っている)につい買ってしまった。http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/B000MQ555M/ref=s9_asin_image_1/250-3983980-6773003?pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=center-2&pf_rd_r=1KVZT1N102SXYTM00NFR&pf_rd_t=101&pf_rd_p=70116906&pf_rd_i=489986
 ・・ずーっと、ユーミンが好きだった。
『ひこうき雲』でデビューしたとき、まるで全音のピアノ練習曲集の楽譜みたいな作りのベージュのジャケットの中の歌詩ブックに載っていた『目が醒めてみて、今日が誕生日なのを思う・・・と始まる『誕生日』というエッセイを読んだ瞬間、まるで自分が書いたんじゃないかと(あんなふうに的確には表現できやしない)思ってしまうほど胸の想いを当てられた気がした・・そう感じたのが私だけではなくみんなそうだったから、それからのユーミンの活躍と大きな役があったのだけれど。
              
荒井由実の頃はもちろん、松任谷由実になっても、ユーミンは凄かった。
すべてにオリジナリティがあり、とっても深いことをとっても自由自在に、しなやかに、したたかに操って時代に合わせて見せてくれた。

時は過ぎ、もう少女ではなくなり、結婚だの出産だの、人並みにいろんなしがらみを経験した三十余年後のクリスマスの頃、或る仕事でユーミンと写真に収まった。
場所は、彼女の母校の立教女学館の校舎の中だった。
ユーミンがフィンランドとアフリカのナミビアを旅する音楽紀行のスペシャル番組の制作時に、母校でのユーミンのシーンも入れることになって、私のユーミンファンぶりを知っていた監督が、年季のいった色褪せた私の宝物たちに目をつけた。
そして、かつて何千回も聞いたであろう、我が『ひこうき雲』と『ミスリム』レコードジャケット達が番組に出演することになった。もちろん、その折、撮影に立ち会った私はジャケットの内側にユーミン自らサインをしてもらい一緒に肩を並べて写真を撮ってもらった。・・人生は不思議だ。こんな日が来るなんて。
あの、多感な高校時代、こんな将来を想像だにしなかった。

夜になって、撮影が終わり『15分だけいい?』とスタッフに声をかけたユーミンはひとり、トレンチコートを羽織って、巨大なクリスマスツリーが飾られている母校の校庭を散歩に出て行った。
おそらく、さまざまなことを感じながら木々の中を歩いているのであろうユーミンの後姿を窓からそーっと見た。
静かに、滑る様に歩くユーミン、本当の気高さ、孤独の素晴らしさ、やさしさ、すべてをその身にまとっているようで胸がしめつけられジンとなった。
ずっと、彼女を好きで来れたこと、そして、今日、この場にいられることを神様に感謝した。
はじめて、『ひこうき雲』のアルバムを手にした三十年以上前、あのときにすでに
こんなささやかな一瞬まで、本当はもうきまっていたのだろうか。

 というわけで、万感去来で長くなったけれど、おかえりなさい、ユーミン。
あなたの曲で迎える春は本当に幸せです。