須坂市内の創業100年を超える業者でつくる「信州須坂老舗百年会」の設立を呼び掛け、会長を務める。2013年の発足時は23社(創業100年に満たない賛同企業を含む)だったが、現在は40社(同)まで増えた。「会員が互いに協力して魅力を発信し、須坂の活性化に結び付けていきたい」と話す。
江戸時代に須坂藩の城下町として栄え、明治以降には製糸業で栄えた須坂市には、長い歴史を持つ店や工場が今も多く残る。同会に所属する企業も、みそやしょうゆの醸造業、製糸業から発展した電子機器製造会社など、多種多様だ。県が昨年11月、創業100年以上を対象に表彰した「県百年企業信州の老舗」で、同市は19市で5番目に多い17企業が選ばれた。
1869(明治2)年に創業したみそ、しょうゆ醸造販売「糀屋(こうじや)本藤醸造舗」の4代目。東京農業大(東京)で醸造関係を学び、実家に戻った。子どものころから家業を手伝っていたため、「将来は店に戻ることを自然と思い描いていた」と言う。26歳の時に父親で3代目の守信さんが亡くなり、店を継いだ。
自社の歴史をもっと知ってもらおうと、1999年に店舗に多目的ホールを設置。コンサートや料理教室を開くなど、地域の活性化に取り組んできた。同時に、一般的に老舗に多い醸造業などで後継者不足により廃業する店が各地で増えていると感じ、「何とかしたい」という気持ちが強くなっていった。
09年に家族で金沢市へ旅行した際、金沢老舗百年会が手掛ける「金沢市老舗記念館」に立ち寄った。商品が並ぶギャラリーを見て、「須坂でも、歴史ある企業が互いの力を合わせて刺激し合えば発展していける」と感じた。
信州須坂老舗百年会はこれまで、加盟店を巡るウオーキングイベントや講演会などを開き、今年10月には金沢老舗百年会の活動を視察した。同会は84年に設立して昨年30周年を迎えたこともあり、「各企業が自身の商売に誇りを持ち、全員で盛り上げていこうという意気込みを感じた」と振り返る。
須坂でも、金沢と同じように、商品を紹介するギャラリー設置を検討している。場所は、改修中の明治期の木造住宅「旧小田切家」(須坂市春木町)を想定。「会の拠点をつくることができれば活動の幅も広がる」
老舗と後継者不足の問題は切っても切り離せない課題と指摘するが、「子どもが親の仕事に魅力を感じられれば自然と解決する。互いが自身の商売にプライドを持って取り組めるようにしていきたい」と力を込めた。