新型インフルエンザをひかえるまでもなく、(ヒト)インフルエンザはおろか、通常のカゼまで含め、手洗い・うがい・咳エチケットは飛沫感染のリスクを下げる基本中の基本です。 お子様のいる家庭では、ぜひ自信をもってしつけてください。
先日、管理人が担当している新聞の医学相談で、やや過度な清潔を求めるお子様の相談があり、手洗いやうがいを厳しくしつけたのが原因ではないかと悩んでおられました。 もちろん、そんな事は有り得ないわけですが、百万人単位の新聞読者に誤ったメッセージが伝わったら大変なことになるので、(本来、ここは新型インフルの話をする場所じゃないんですが)ちょっとだけ新型インフルエンザに言及してみました。
というわけでメッセージ
手洗い・うがい・咳エチケットのしつけを原因としてメンタル不調ということは有り得ません。 外から帰ったらうがい、外出・トイレ・手洗い忘れず、のどイガイガしだしたらマスクに咳エチケット。
http://mainichi.jp/life/health/QandA/news/20090207ddf012070020000c.html
からだと心相談室:異常に清潔さを求める息子
中学生の息子は最近、自分の使うはしやフォークを熱湯で消毒するなど、異常に清潔さを求めます。親の使ったものを「汚い」と言うようにもなりました。学校の部活動や勉強は普通にし、学校から注意を受けたことはありません。手洗い、うがいを励行してきた影響かと悩んでいます。どうしたらいいですか。(40代・女性)
◇思春期現象の可能性も、温かく見守って
はしやフォークの熱湯消毒など、過度の清潔さを求めるとのことですが、程度や広がり、受け止め方により病的といえるかどうか異なってくると思います。食器類に限らず、文具類や机などの家具についても何度も磨き上げなければ触れない、手にばい菌が付着しているような気がして何度も何度も手を洗い続ける……と拡大してくるようなら「強迫性障害(強迫神経症)」の可能性も検討しなければならないかもしれません。この場合、ご本人はその考え(はしやフォークが汚い)が合理的でないと分かっているのに頭から振り払うことができないというつらい状態にあります。治療は専門医を受診し、精神療法(認知行動療法や森田療法など)や薬物療法(SSRIなど抗うつ薬の一部)が有効です。ただ、ご相談のケースでは学校では特に異状が見られないとのことです。先生がどの程度注意深く見てくれているかにもよりますが、本当に何の問題も無いのであれば可能性は低めかと思います。
また、病的とは言えない、思春期に見られる一過性の現象の可能性も大いに考えられます。思春期は、大人へと独立してゆく過程で、親の傘から出るべく、もがき揺れ動いているサインの一つとして「親の使ったものは汚い」等のせりふはよく耳にされます。
したがって、今後温かく見守りつつ、本人の考える「不潔」の範囲が拡大するか否か、本人が「実際には不潔ではないこと」をわかっていながら考えを振り払えず苦しんでいるのか否か、学校での適応状況などを総合的に観察してゆくことをお勧めします。
なお、いずれの場合も「手洗いやうがいの励行」とは無関係です。これから新型インフルエンザ等も控え、手洗い・うがい・咳(せき)エチケットは誰もが徹底せねばならない生活習慣です。自信をもってください。<近畿医療福祉大学教授・勝田吉彰先生(精神科)>