割とキツめの上り坂の途中の出来事
吸い込まれるように…
文字どおり
吸い込まれるように!
蓋板の隙間から歩道の側溝の中へ
左耳のイヤホンがはずれ
吸い込まれるように直接入っていった
その吸い込まれて行くわずかな間の一部始終
あたかもスローモーションのように見えたが…
あっ!
という驚きの声を上げる間もなく…
イヤホンは側溝の中へ
瞬時に吸い込まれていった
いつかはそういう事態になるかもと
コードのないBluetoothのイヤホンに
前から不安に思ってはいたけれど…
まさか
まるで絵に描いたように
そのとおりになるなんて…
吸い込まれた蓋板の隙間から
目を凝らして中を覗いてはみたが…
雨上がりのあと
勢いよく流れている側溝の水の中
イヤホンを見つけることはできず…
蓋板を開けるため
手を差し込んで持ち上げようとしたものの
蓋板はビクともせず…
たとえ持ち上げることができたとしても
おそらく速い水の流れの中
すでに下りの方へ流されてしまって…
半ば呆然としつつ
側溝の蓋板を恨めしげに見遣るだけだった
残った右側のイヤホンからは
何もなかったように
ずっと音楽が流れていたが…
そのうちピッという発信音が鳴ったのは
たぶんステレオからモノラルに変わった
その合図だったのだろう
つまり
左のイヤホンが流されて
Bluetoothの圏外になってしまい
自動的にステレオからモノラル再生へと…
走り出して
やがて6キロになろうとしていた地点
せっかく調子が出てきて
急な上り坂もさほど苦にならず
軽やかに上っていたのに…
調子の良さに高揚し始めた思いは吹っ飛び
いつものコースと変えたから?と
大きな後悔の念が押し寄せていた
以前のように
コケたりぶつかったりして
ケガをしたわけじゃないし
ひどい捻挫や肉離れを起こして
走れなくなったわけでもないけど…
たかだか数千円出せば
また新しいイヤホンを買うことはできるけど
素人ランナーで年金暮らしのジジイには
その数千円すら贅沢な感覚で…
そんなに贅沢に思うなら
タバコもお酒もやめれば十分にお金が浮いて
簡単に解決するとは思うが…
タバコとお酒は生活必需品?で…
というより
ジジイにとってはガソリンそのもの
Bluetoothのイヤホンは贅沢品?なのだろう
あってもなくてもいい…
要は余分なもの?
余分な?
いやこのジジイ自体こそが不用品か?
役目をとっくに終え…
いてもいなくても
もうどうでもいい…
誰も買い取ってはくれそうにない…
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