サントリー美術館で開催されている「若冲と蕪村」展に行ってきました。
伊藤若冲と与謝蕪村。
実はこの展覧会で見るまで、与謝蕪村は俳句の人だとしか知りませんでした。
俳句はもちろん、絵も素晴らしい、多彩な方だったんですね。
きっちり描き込まれた人物、風景、花鳥図もすばらしいのですが、
心惹かれたのはどことなくユーモラスな表情の絵。
雄々しい鳥の目がひょうきんでいたずらそうだったり、
ササっと描いたような柔らかい線のほほえましい人物だったり。
蕪村の人柄まで覗けるような素敵な作品がたくさんありました。
人柄と言えば…。
蕪村はたくさんの書簡を残していたのですが、それも公開されていました。
中には、有名な俳人に「作品はこっちで用意するから名前だけでも貸してほしい」と無心するものや「夜明けまで遊び歩いていたから翌日の句会は疲れていた」ことを詫びる手紙、「自分の描いた絵はみんながほしがったけど、‘あなたに’お譲りするんですよ」と暗に高値で買ってほしそうに匂わす手紙。
まさか、こんなものまで見られてしまうとはご本人も思ってなかったでしょう。その分、飾らない‘蕪村らしさ’が出ていて面白いです。
若冲の作品に関して言えば、やはりブレがない。
鶏の絵に代表されるような、細部まで描き込んだ精密な絵。
伏見人形のような柔らかい温かみのある絵。
どれも‘若冲らしさ’がほとばしり出るすばらしいものでした。
一気に描きあげたような強い線の水墨画。
同じ水墨画でも、筋目書きを使った繊細なものも。
探究心を持ち続けた若冲だからこその多彩な作品たち。
「花鳥版図」というのを、今回初めて見ました。
全部で6枚ある鳥と樹木の版画なのですが、
これが何とも言えない不思議な魅力のあるものでした。
ただの版画とは思えない、立体的に浮き上がって見える絵で、
色味も鉱物のように光り輝いていました。
作品自体は小さなものなのですが、妖しい魅力にあふれていて
なかなかそばを離れられませんでした。
今回の図録は1枚1枚の絵が大きく見やすかったので
かなり重かったのですが買って帰りました。
でも、この花鳥版図の不思議な美しさは図録では伝わらず、
絵ハガキでもわかりませんでした。
やはり、本物だけが持つ‘力’なんですね。
そもそも、こんな拙い文章で美術品のすばらしさを伝えきれるのかというところからして怪しいものですが・・・。きちんと勉強したわけではない全くの素人が見ても、強く惹きつけられるものがある。それだけ芸術の持つ力は強いんですね。
若冲と蕪村 サントリー美術館
この展覧会は展示替えがけっこう細かく分かれています。
3月18日~5月10日までの間に6期に分かれています。
今回見れなかった「素絢帖」「玄圃瑤華」(ともに拓版)は
場面を変えながら後半で見られるようです。
でも、そちらが始まると花鳥版図は無くなってしまう。
‘枡目描き’で描かれた「白象群獣図」は最後2期に登場ですね。
う~~ん、悩ましいところです。