昨日のNHKアーカイブスという番組で、岩手県の沢内村という小さな村立病院行政の、貧困と戦いつつ、村民への医療のあり方を問う記録を観た。
昭和30年代前半、冬期間は交通も杜絶する奥羽山脈ふところの貧しい農村では、病気だと分かっても簡単に医者にかかることができなかった。診てもらう金が無いので、病になってもじっと我慢するしかなく、以前は新生児の死亡率が全国で一番と不名誉な村だった。
そこで中央から田舎に戻って村長になり、そのあまりのも悲惨な現状をみた正義感溢れる若い村長は、沢内村を全国に先駆けて、新生児と老人の健康保険10割給付を断行し、村民の医療を第一に、財政の困窮にも、必死に耐え ながら存続し続けた。その結果、乳幼児の死亡率ゼロを達成、全国一番と汚名挽回を果たした。その村長の遺志を継いで、次期村長と、病院長も財政難と村民の医療の低下との狭間で国へ陳情しながら、村民とどうすべきか議論を交わした。
多くの患者に利用してもらうために、診察費をできるだけ軽減、必要最低限の検査と投薬をかたくなに守り、他の病院との診療費の比較で3割程度節減した。
更に、来院できない患者のために、院長自ら700円程度での往診や、日本有数の地帯のため、家で面倒を看られないお年寄りの”越冬入院”を半年余も受け入れ続けた結果、病院の収入が減少し結果して、村の財政を逼迫させて、医師のなどの職員の整理を余儀なくされた。
病院長の、「自治体病院は金儲けるためにやるのではない、単に採算を考えるなら、必要かどうかの検査を増やし、たくさん薬を出せばすむことだ、しかしそれは患者の負担と併せて国家の医療費増大につながる」との言葉は重い。民間の病院がメリットがないと進出してこない僻地では、こうした自冶体の医療機関が住む人の生命線だ。
病気になってから金をかけるよりも、病の予防こそ医療費抑制に効果的と、保険医療費増加に音を上げる行政に、真っ向から挑んでいる。院長先生は往診を通じて、医者は、その患者さんの来院したと姿だけでなく、どんな生活をしてきてそうなったのか、その住まいに出かけて実際に見ることが最も大事だと説く。 現代版あかひげ先生を見た。
遅まきながら、今は、病院の隣に老人福祉施設ができ、今まで担ってきたお年寄りの、”越冬入院”を肩代わりしてくれている。
本当に患者を考えてくれる病院は?みなさんのかかっているところはどうですか?。