私は言語聴覚士として、訪問してリハビリを提供する仕事をしています。
リハビリの卒業には3種類あります。
① リハビリの必要がない程度まで回復する
②亡くなる
③リハビリを希望されなくなる
よくあるケースは②③です。
今日、レアケースの①を経験させていただきました。
その方は新型コロナウイルスに感染して入院されました。89歳の男性です。
入院中に弱り食事が摂れなくなり胃瘻(胃にチューブを入れそこから栄養を入れる)を造設されました。
入院中にリハビリによりミキサー食、お粥は少し食べられるまで回復されましたが、栄養の中心は胃瘻のまま退院されました。
自宅に帰り、私が介入する目的は3つあります。
①口から食べる量を増やして、形態も普通食にもどす
②胃瘻からの栄養注入を減らす→なくして奥様の負担を減らす
③誤嚥性肺炎、窒息を予防する
①が達成できれば②も自動に達成となります。
退院されてから3ヶ月で目標を達成することができ、私の介入は卒業となりました。
目標達成できた1番の要因は
私の訓練効果ではなく、本人様の努力ではなく(もちろん努力の結果でもあります)、
胃瘻から栄養を入れるようになった事だと考えられます。
メカニズムは以下の通りです。
病気で食べられなくなる→飲み込む筋力が低下→更に食べられなくなる
この悪循環の最中にいくら訓練をしても効果はありません。訓練=カロリー消費を促すので逆効果になる可能性もあります。
ここで胃瘻からの栄養注入によりこの悪循環を断ち切り改善に至りました。
今回はご本人、ご家族の希望があり病院と在宅医療の連携が図れたので上手くいきました。
しかし、入院中に胃瘻を造り、口からは食べられないと言われたまま退院されて在宅医療に繋がらなかった方は口から食べることができないままとなります。
そういう方は沢山います。
長々と書いてしまいましたが今回の話をまとめます。
胃瘻=口から食べられない人が行うものではない
→口から食べるために胃瘻を造る場合がある
→胃瘻を造ったはいいが、そのまま退院して口から食べられるかどうか分からない状態の方が沢山いる。
今回の方のように高齢者で普通食を病前と同じように食べられるようになる方は正直少ないですが
カレーやプリン、水分など楽しみ程度の経口摂取が可能になる方は沢山います。
“胃瘻まで開けて生きていたくない”と言う方がいますが、
胃瘻から栄養を入れて元気になり経口摂取にチャレンジするケースもある事を覚えておいて欲しいです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます