昨年来、経団連等を中心に”国際競争力を強める為”として法人税の引下げが主張されていますが、当然にも国税の基幹税の一つである法人税を引き下げれば財政に穴が開きその分、①他の税の増税か、②支出切下げが要求されます。現段階では衆議院の委員会も通っていませんが、又震災の影響で新たな財源が求められている現在、棚上げ状態とも言うべきですが、この引下げは新たな”他国の競争”を招き際限ない引下げ競争になる可能性があるというべきでしょう。
現に今年1月の朝日新聞の報道ではオバマ大統領が日本への対抗を意識し法人税引下げを考えているとの報道がありました。http://www.asahi.com/international/update/0113/TKY201101130607.html
1980年代以降、欧州、日本、アメリカでは法人税、所得税の引下げ競争が行われてきた結果、支出削減が一定困難な中、特に債務比率的には日本を中心に(海外からの債務の多いギリシャ等とは異なりますが)財政危機を招いています。又それらニ税の減税の穴埋めとして消費税の増税が行われてきました。これらの税構造は全般的に国内消費の低減につながり実物経済の低成長状態、更にそこから波及して株価等低迷の大きな一つの要因とも思われます。
尚、このような”法人税引下げ競争”は、19世紀には資本主義諸国が恐慌時に自国への資金引付の為に”金利の引上げ競争”を行っていた事(結果としてそれが国内企業へ響き不況を悪化させていたであろう事)を想起させます。(今見れば、愚かしい事と思えますが)
参照、当ブログ”景気政策史”
▼▼▼世界法人税率の動向分析(KPMGインターナショナル)
http://www.kpmg.or.jp/resources/research/r_tax200611_1.pdf
▼▼▼各国法人税の値下げ競争の朝日新聞記事
http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201102120272.html
そういった中6月17日、日銀から2011年第一四半期の資金循環統計の速報が出されました。参考図表http://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf
この中で図表2-2(部門別資金過不足)を見て頂きたいと思うのですが、これは簡単に言って
①一般政府、②家計、③民間非金融法人企業、④海外、の各主体が各年でどれだけの”資金過不足”があったかをフローで示したものであり、
”資金余剰主体が、資金不足主体に貸し付けたかを示す”ものであると言う事です。
この統計では基準となる1980年から示されていますが、90年代半ばまで資金の捕手であった、民間非金融法人企業がそれ以降、粗一貫して資金余剰となっており、結果的にそれを一般政府が使っている形になっているということです。
(因みに統計の基準が異なる80年以前でも法人企業は一貫して資金不足(借り手)であり家計が資金余剰となっていました)
ここまで言えば投稿者が何を言いたいかお分かり頂けると思うのですが、このような一国の金融構造は、法人企業への一定の税負担と
又過去最高75%(正確には戦後一時85%の時も有りましたが)あった所得税(現在40%)への一定の負担増により(高額所得者の方の助力により)復興財源ないし今後の我が国の財政再建の力、更には経済の安定的成長の力として欲しいと言う事です。
参照
80年以前の資金過不足の図表説明(政府 平成11年度 年次経済報告)
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je99/wp-je99bun-1-9-2z.html
80年以前資金循環統計(総務省 統計局)2ページ目CJ欄(法人企業)
http://www.stat.go.jp/data/chouki/zuhyou/04-05-a.xls
日本経済の資金循環 石田定夫