よみがえるケインズ

ケインズの一般理論を基に日本の現代資本主義を読み解いています。
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3-02:洒落にならん状態の家計:家計の可処分所得と消費・貯蓄

2021年09月26日 | 日本経済分析
 前回、家計の所得は1997年と比べてマイナス5%、16.64兆円の減少であることを見た。稼得所得中の可処分所得はさらに減少しておりマイナス13.45%、31.1兆円の減少であった。それは所得が伸びないうえに、「財政再建」や社会保障費の増大の負担を家計に負わせているからである。

 それに対する筆者の考え方は、雑に言えば、「眠らせている金融資産」を原資に成長を図れというものである。

 今回扱う「可処分所得」という概念は国民経済計算の定義どおり、年金等を含む所得に対する可処分所得である。

 その可処分所得と家計消費の経過を追ってみよう。

 消費性向の推移からみて家計はこれ以上の負担に耐えられない



 2020年度に可処分所得が急激に伸びているのは一律10万円給付のためである。ただし家計消費は大きく落ち込んでいる。

 2013年度から家計消費が上昇しているが、これは2014年度の消費税増税に対する消費の前倒しを表しており、2014年度以降もその水準を維持しているのは、消費税が家計消費に含まれるからである。

 それに比べて2019年10月からの消費増税時には消費の前倒しも増税後の押し上げ効果もほとんど見られない。右の消費性向(家計消費÷可処分所得)を見ればわかるように家計がほとんど余裕をなくしているからだ。数字を上げると下記の表になる。



 2013年の消費の前倒し、2014年消費増税で消費性向は100を超えている。家計全般としては貯金を取り崩した(マイナスの貯蓄)ということになる。

 2019年の消費増税時には、前倒し消費もあまり見られず、もっと悪いことに増税の2%分は家計が「節約して」吸収してしまった。家計全般では可処分所得と消費の間に1%前後の余裕しかないので節約志向に走るのは当然である。担税力という言葉があるが、家計全般ではこれ以上の税と社会負担には耐えられないということだ。

 もっとも年金受給世帯が貯蓄を取り崩しながら生活していくのは自然の成り行きであって(そのための貯蓄であろうから)、取り崩す貯蓄のある世帯は幸いである。年金を受給していない世帯を含めて貯蓄の乏しい世帯がどのような状態になったか容易に想像できる。雇用者、個人事業主も先にみたように所得は横ばいまたは減少している。余裕のないのは同じであろう。

 直接税の累進性も緩和され、金融資産からの利得に対する税率も低く、なおかつ社会保険料は定額部分があるために強い逆進性を持っている。そこへ消費税という最も逆進性の強い税制を入れたのだから、所得も増えない中で家計消費が伸びるはずはないのである。

それでも所得の減少以上に減少する家計消費

 そうはいっても日本は「豊かな国」である。最低生計費を上回る世帯の方がはるかに多いだろう。ということは、容易に消費を減らすことができるということである。2019年の消費税10%、コロナ禍による消費不振がそれを示している。日本の家計消費は所得という上限を持ち、なおいくばくかは節約できるという、増えはしないが容易に減るという、いわば「上方硬直性」を持っているのだ。



 家計の貯蓄は20世紀に入って大幅に減り2013年以降さらに減って今に至っている。2019年、2020年の金額については既に説明したように家計が「節約」したためである。

 20世紀に入って家計の貯蓄が大幅に減った理由は企業部門の項目で分析する。

 2013年以降毎年度2~3兆円の貯蓄ということは世帯(5400万世帯)当たり30万円から60万円である。筆者が社会人になってすぐでも(44年前)毎年50万円の貯金ができたことを考えると、日本の家計全般がいかに貧困かということがよく分かる。全体でこれだから貯蓄ゼロないしはマイナスの世帯も多いことだろう。困窮している世帯が増加するのも当然だ。

 今回は、このままの停滞が続くと次々と破綻する世帯が出てくるであろうこと。停滞からの脱却には家計消費に頼るわけにはいかないこと。成長によって家計の所得を増やすこと以外に方法はないことを主張しておく。

 次回は家計消費の内実を分析する予定である。

 GDP統計担当者たちはなぜこの「参考系列」を作成したのか。担当者は警鐘を鳴らしているのだ。気づかれていないが・・・

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