ここに来て、今までの篇と第4編の目次を見ておくのも参考になると思われる。
第1編 序論
第1章 一般理論
第2章 古典派理論の公準
第3章 有効需要の原理
第2編 定義と概念
第4章 単位の選定
第5章 産出量と雇用の決定因としての期待
第6章 所得、貯蓄および投資の定義
付論 使用費用について
第7章 貯蓄と投資の意味―続論
第3編 消費性向
第8章 消費性向(1)―客観的要因
第9章 消費性向(2)―主観的要因
第10章 限界消費性向と乗数
(いまここです)
第4編 投資誘因
第11章 資本の限界効率
第12章 長期期待の状態
第13章 利子率の一般理論
第14章 古典派の利子率理論
付論 マーシャル『経済学原理』、リカード『政治経済学原理』、その他に見られる利子率について
第15章 流動性への心理的誘因と営業誘因
第16章 資本の性質に関するくさぐさの考察
第17章 利子と貨幣の本質的特性
第18章 雇用の一般理論―再論
第4編は付論を含めると全9章から成り立っており、他の篇に比べると異常に長いと言える。前章で触れたように「豊かな社会」においてなぜ投資が不調となり経済が停滞していくのかという問題はつまるところ投資誘因の探求に向かうから当然といえば当然だ。
資本の限界効率とはそもそも何ぞや。ケインズ利子率理論は第13章から第17章に及びかつ「難解」である。ケインズは株式市場をどう見ていたのか。ケインズはあまり「本質」という言葉を使わないが「利子と貨幣の本質的特性」とは?
それぞれの概念は緊密につながっており、独立しては成立しない。全部をまとめて一般理論となる。読み解くのはなかなか厳しい挑戦となる。
さらに残りを挙げると以下のようになっており後は応用編であることが分かる。一般理論の理論展開は第4編で終わっているのだ。
第5編 貨幣賃金と物価
第19章 貨幣賃金の変化
付論 ピグー教授の『失業の理論』
第20章 雇用関数
第21章 物価の理論
第6編 一般理論の示唆するもの―短い覚書
第22章 景気循環に関する覚書
第23章 重商主義、高利禁止法、スタンプ付き貨幣および過少消費理論に関する覚書
第24章 一般理論の誘う社会哲学―結語的覚書
一般理論のここまでの検討では、雇用量、すなわち産出量を決定するのは投資量である。この結論は新古典派・現代正統派も一般理論も変わらないと思われる。ではその先はどうだろうか?解決策はあるのだろうか?
極端な新自由主義は、経済の自律的回復以外に途はなく人為的なあれこれの政策はかえって有害だ、と説くが、そういう「信仰」は全ての経済学の否定であり、さらに言うなら国家の役割を否定する無政府主義=リバタリアニズム につながる。
では投資量はいかに決定されるのか?経済の自律的回復=自由放任主義は有効なのか?に答えたのがこの編である。
極めて現代的な意味を持つ、と言わねばならない。