ことばで遊んでます

yuri
に、改名しました。
詩や短歌をかいています。
内容は、フィクションだとおもってください^^

~アロスコンレチェの香~

2013-07-12 15:28:00 | ポエム(童話)
巡る風に連れられてきた蝶が、わたしの掌でパタパタと、今日の分だけ鱗粉をさしだす


それは星のボウロ


遠い国


お箸を上手に使えた兄が
わたしを摘まんでた頃


わたしの朝の庭は、
カスミソウを
一面
薄く
張ってて
そのしたに
紺色の空を
幾つも
重ねて
閉じこめてて
そのうえ
に、
星たちが
落っこちて
いるのでした


わたしは早起きをして
その星たちに
蝶の黄色い鱗粉
ボウロを
あげます


それは薄いスウェニョ


星たちは
おっぱいをのむように吸いこんで
丸あるく
黄色く
膨らんで
ほんのりと
欠伸をして
ひゃくって
鳴いて
(それは星たちのおやすみなさいで
夜が点火にくるまで
眠るのです


するとあなたがあらわれます


空からやってきたパン屋さん
わたしの掌のなかの鱗粉をみつけると
高い塀からヒラリ
髪を金色の網にして
わたしを捕まえようとする
けれどほんのすこし
わたしが話したそうにしただけで
ぴぃーって口笛鳴らして
(アロスコンレチェの香
かけつけた空に飛び乗って
空の脇腹蹴って
いってしまう


光みたいに


影みたいなパン
ころんて
落として


飛んでいけない高すぎる天


あの遠い


わたし

兄が
お箸で摘まんで
きゃーきゃーと
わたしを
鏡に映したように
真似てもう
戻れない


わたし

坂に引っ張られて
おおきく
カーブ


したら、
ねころんだ地球のひろーい弧
のうえで
ぶるぶるしてる離陸寸前の学校
ぶるぶる
ふるふる
空のパン屋さんの急ぎ足


わたし、

いっぱいに
広げて
鱗粉
全部
みせた
のに、


山盛りのパンに
鞭打って
素知らぬ顔で
いって
しま




そのしばらく後


高い塀の上に尖った鎖が張られて
しまったその日から、
空のパン屋さんは
こなくなってしまいました


(もこもこと広がってた金髪の働いてた少女
こんなに年を経てもまだ忘れられない少女
(ぞろっておとなの洋服着て働いてた少女


その日から


蝶も鱗粉をさしださなくなりました
星たちももうやってこなくなりました


飛んでいけない高すぎる天


あの遠い


アロスコンレチェの香のする
わたしの子どもの頃の
お話です