人は行き詰まったり、思っていた結果が出ないとき、なんとか現状を変えようと努力します。
しかし、行動を変えるだけでは、いい結果に向かい始めても、すぐまた、もとの木阿弥に戻ってしまうことがほとんどです。
それは、行動を変える前に、まず考え方自体を変えなければもとの行動に戻ってしまうからです。
また、ベストセラー「7つの習慣」を著したスティーブン・R・コヴィー博士は、パラダイム(ある時代に支配的な物の考え方・認識の枠組み。規範。)の転換の例として、次のようなエピソードを交えて解説しておられます。
日曜日の朝、静かな地下鉄の車内に一人の男性と子どもたちが乗り込んできたときのこと。
子どもたちがひどく騒ぎ始めたのに、男性は目を閉じたままその状況にまったく気づかない様子だった。
しびれを切らしたコヴィー博士が男性に子どもたちを大人しくさせるように控えめに促すと、彼はこう返事をした。
「たった今、病院から出てきたところなんです。
一時間ほど前に妻が・・・
あの子どもたちの母親が亡くなったものですから、いったいどうすればいいのか・・・」
その瞬間、イライラした気持ちは一瞬で消え去り、同情や哀れみの感情が自然にあふれ出て、コヴィー博士はこう申し出た。
「それは本当にお気の毒に。
何か私にできることはないでしょうか」
このようにパラダイムが変わることで、男性に対する考え方や行動が一瞬で全て変わったというのであります。
私たちは、これまでに獲得した情報や考え方、立場などの枠組みでモノゴトを見ます。
そのため、同じものを見ても個々人で見え方はさまざまです。
しかし、パラダイム次第でモノの見方は変わり、考え方が変わるのです。
そして、考え方が変われば行動が変わり、最終的な結果が変わります。(これを「変化のサイクル」といい、野志松山市長もこのフレーズを引用しておられます)
また、小さな変化を望むのであれば、私たちの行動や考え方を変えればいいとも。
しかし、劇的な変化を望むのなら、私たちの持つパラダイムそのものを置き換えなければならないと言われています。
特に現在のように先行き不透明な環境の中では、従来とは異なった行動や考え方が求められます。
パラダイムを置き換え、まったく違った視点からモノゴトを変えていかないと、望む結果にはつながらないというのです。
つまり、今の自分を大きく変えたいなら、自分の持つパラダイムそのものを置き換える思考と、しなやかな視点からモノゴトを多面的に見る目を育てながら、迅速に行動に移すということでしょうか...
(参考)「PRESIDENT 2011.08.15 号」より