☆☆★ ピンチの友人
久しぶりに友人が訪ねてきてくれました。
なにやら浮かない顔をしています。
ある順調に進んでいたプロジェクトが思わぬ結果となり、どうしていいのか迷っている雰囲気でした。
話を聴いていると彼が悪いわけではないということは、すぐにわかりました。
そして、彼がプロジェクト・リーダーとして様々な人たちを巻き込んでいる手前、後に引けないということも。
心中穏やかでないことは、「ただ、最近お会いしていなかったものですから近況報告に着ただけですから。」と言う言葉を会話の中に何回も挟まれたことからも察することができました。
おそらく、この窮地を察し、なんとか力になってほしいという相談に来られていることも。
☆★☆ 過信からきた油断
実は、同じような立場にも立ったことが私もありますから、誰よりも痛いくらいわかるのです。
その時の私は、「もう大丈夫だ。」という過信がありました。
でも、蓋を開けると残念な結果になっていました。
後で聞くと、私が安心をしていた間、さまざまな政治的動きが水面下で起こり、熾烈な展開があったということです。
にもかかわらず、私はというと、自分の力や提案した内容の先駆性、独創性に酔いしれて安穏としてしまったのです。
理不尽だと、その不条理さを恨みました。
でも、それからの私は誰よりも慎重かつ細やかなネゴを行いながら、提案する時の内容に拘(こだわ)りました。
そして、常に「絶対はない。」と肝に銘じることにしました。
★☆☆ 聞く耳ができました
そうすると、私のために情報を入れてくれる人たちが多いことに気づきました。
それまで煩わしいと思っていた人の話が、実はどの情報よりも有効な情報だということに気づいたのです。
それらの情報をすべて実行するようにしました。
そして、必ず、情報をいただいた方には忘れないよう御礼と途中経過を入れるように努めるようにしました。
これがなかなかやっかいなのですが、その人から、今度は「こうしたらイイですよ。」とアドバイスをいただけるようにもなりました。
そうすると、うまくことが運ぶようになって来ました。
私は、別に難しいことをしたわけではありません。
★☆★ 格好をつけなくなりました
その時の私は、少しばかり力がついてきたことを過信し、その結果は自分が満身創痍(まんしんそうい)になってしまったのです。
それから、自分の限界点を早々に見出すことにしたのです。
そうすると自分の足りないものが何なのか不思議なくらい見えてきました。
そして、いとも簡単に弱音を吐くことができるようになりました。
そうすると、楽になります。
新しい糸口も見つけることができるようになりました。
★★☆ 当たり前の難しさ
その友人から、「まるで綱渡りのようです。」と弱音にも近い言葉が吐かれました。
その時に思い出したのが、NHKのプロフェッショナルで放映されたお菓子職人(パティシェ)の杉野英実さんの言葉です。
「綱渡りのような仕事の中に最高がある。」と
そして、彼が店舗展開をしない理由をこう述べています。
「お客様はわからないではなく、毎日食べているからこそ誰よりもわかるのです。油断はできません。ですから、他に店を出せば自分の手から離れてしまうことになり、自分の味でなくなります。職人が楽をすればろくなものは出来ない。
当たり前を積み重ねると特別になるのです。
ですから、当たり前が一番難しい。」