戦後間もない頃のお話です
兵庫県豊岡と京都丹後を結ぶ
宮津線という列車は
私らの通学列車でした
私らは豊岡の学校にかよっていたのです。
まだまだ食べ物もなくて
疎開家族の私らは
毎日毎日
飢えておりました
が
列車の中はいつも
若い声、若い空気でいっぱいでした。
憧れの先輩がいたりして。
そんな中に一人
元軍人の娘で
同級生のAさんがいました
美しく聡明な少女でした
私は間もなく
遠いところに引っ越したので
彼女とはそれっきりに。
70歳になったころ奇跡が・・・
偶然彼女と再会したのです
女医さんになっていました
いや、もう引退した女医さんでした
が・・・
間もなく被害妄想のようになって
音信が途絶えました
会うんじゃなかった・・・
と思いました
あの美しい少女の面影のまま
私の記憶を彩っていてほしかった
けれど
現実はそういうもの
なのでしょうか。