戦争の気配がまだなかった頃
私の家の門を出ると
右側の空に
姫路城が聳えていました。
お城を背にして
幼稚園への道を歩いて行きました。
ベーカー幼稚園と言いました。
そこでの記憶といったら・・・
おばあさん先生が
「満州の国旗を塗りましょう」
と
見本を見せて
私らは横何本かに引かれた
線と線の間を
5色だったか7色だったかの
クレヨンで塗って
いきました。
そんな時代だったのですね。
覚えているのはそれくらい。
記憶力の乏しい子どもだったのです。
けれどもあの時代
両隣の家族にも子どもたちがいて
まるで
兄妹姉妹のようにしていました。
母親同士もそうでした、
道には子どもの声が溢れ
チョコレートだってあったのでした。
そして私らは間もなく
引っ越して関門海峡を越えました
五歳の私は
「海の底を列車が走ったら
お魚が見える」と
本気で信じておりました。
開戦前のひととき
平和が終わろうとする
時代のお話です。