わが家の道路を挟んだ向かいの安アパートは、
ワシが大阪で大学生活を始めた時の部屋にそっくりじゃ。
学校から紹介された部屋で、共同トイレで風呂、キッチンなし。
3畳の狭い部屋の1畳分がベッドのように一段高くなっており
ベッドの下が物入れになっとった。
当時でもワシはそれがイヤで3ヶ月もせん内に引っ越した。
アルバイトを始め、1Kの部屋を探した。
それからはずっとその部屋がワシのねぐらじゃった。
今の時代にそんな暮らしをしとる人がすぐそばにいる。
全部で8部屋位あるように見えるが、人が住んでいるのは
たぶん2部屋じゃないかと思う。
近くに大学があるんで、かつては学生さんも住んどったが、
今はおっちゃんがそれぞれ住んどるんじゃと思う。
1つの部屋は1階なんで夏は窓を開けとるんで外から見える。
もう一人は2階なんで全然様子が分からんがおっちゃんじゃ。
1階のおっちゃんは以前は交通誘導員をしとるのを見かけたが
最近は仕事がないのかポケモンでもするんか
スマホを片手に近所をブラブラ歩く姿を頻繁に見かける。
この熱帯夜が続く戦後一番暑い夏といわれる今を
エアコンなしで寝ておられる。
ワシは今、エアコンの効いた部屋でパソコンに向かうとるが
何か申し訳ないような気持ちになる時がある。
まだホームレスじゃないが、一歩手前のように思え、
このおっちゃんの人生を遡って見てみたい。
これって上から目線の自分なんじゃろうか?
イヤ、ワシも一度東京へ家出したことがある。
ワシもひょっとしたら東京でホームレスになっとったかもしれん。
ワシは甘えて情けないことに親元に戻ったけど
このおっちゃんは、強い意思で頑張り続けたんかもしれん。
結果は、おっちゃんは夢破れ今の暮らしぶりかもしれんが、
夢を追い続けた結果がそうであるなら、ワシは負けとるじゃん。
ワシは夢を諦め、妥協して今がある。
人生の満足感はおっちゃんの方があるかもしれん。