50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「時間を遊ばせてやる時間~自分が守られなければ生きる楽しみもない~」

2015-01-26 19:33:06 | 小説
逃げこむ、とそんなつもりはもちろんない。そう思い、強がり、家路に群がるマンションのまっただ中に帰る。午後で、変則勤務の社が退けてきている。セリアガル窓と窓を高層へと目にぼんやり映す時、男は過去の異性関係とか何かと傷を負いながら、そのカスリ傷が化膿しかねない。窓々は昼寝・・・・・・だがここはぼくの居住区、皆・・・・・・ぼくだけじゃないらしい、過去にいいわけがましく生きている?・・・・・・。
男はそう思うと、とうからあの罪と罰とをしょっている、つまり過去を生きる心因性の傷というやつだ。そして、否そうだから目は裏がえった。そっと小公園に青葉にそれる。
「やっぱり独りがいいか。イチョウの若葉」
で一見のんびりだが、道草という薬が要った。
それを求めながら男は耳にふと捕まえている。
そう、恋に迷う、あるいは夢中の若者が空耳に、『ぼくはメランコリー』とやってきた。
その空耳に男はすがりながら小公園へ向かった。
「知人の息子だった。愛情関係に悩みセックス、いやセクシィな話とその女、さらにその男と今はたわむれていたい。かまけていたい」
そう自分に沈潜したがる男。イチョウの青葉から鳩が飛び立ち、やがて彼の家庭に思い至る。なお男は沈潜していくのだ。

(つづく)

【閑話】シャープになりたいお話

2015-01-25 17:43:11 | 小説
知人の話では、これからは、年金資金の運用は国債から株へ、だそうである。

お金の話に少しうとい私は、何度か聞きなおして少し会得した(つもりになった)。

世の中には、私の未知なことが、もちろん、まだまだたくさんある。
少しでも物ごとをシャープ(クリア)にしていくように、日々過ごしたいと思う。

この連載も、父のことはもちろん、何かを会得し、よりシャープに、との思いも込めて継続しています。

今後ともよろしくお願いします。

次回から、新連載を始めます。

【閑話】親父の口癖その3

2015-01-24 19:17:22 | 小説
「ディテールが大事」
若いころは、そんなことは当たり前じゃん、って思っていた。

いろんな経験を積むにつれて、ああ、そうだ、やはりディテール(細部のこと)だ、と思う場面が増えてきた。

いい音楽に再び出会ったとき、スポーツで決定的な得点が入るとき、寺院や絵画などを何気にふと見入ってしまったとき、仕事で何か成果を出さないといけないとき・・・

「ディテールが大事」

ああ、そうなのだ、ぼんやりとした全体的なイメージの向こう側に、それを具現化する細部の、いわば構造的とでもいうべき論理のような何かの存在に気づいたとき・・・! ディテール、世の中すべてのことは、ディテールなのだ!

まるで呪文のように、
ディテールが大事、ディテールが大事、ディテールが大事・・・

雄吉はおとぎばなしの世界に・・・ (最終回)

2015-01-23 20:29:41 | 小説
雄吉はおとぎばなしの世界に住む父親のように弾み、足が地につかず。待ちに待った幸福の時間のものだから、それは無理もない。笑顔が心からこぼれ出る。そういえば雄吉自身、暮らしにもまた想像裏にもおとぎばなしめく感動が、久しく欠けていたように思われて、
「感動がたよりなかったのね」
英次に教えられたと早速雄吉は感動的に呟きつつ英次の肩を抱き寄せた。一つの影を追って帰る。明日はすばらしい青空が望めることだろう。明日が楽しみです。・・・

<了>


※ご愛読ありがとうございました。

次回は、「時間を遊ばせてやる時間~自分が守られなければ生きる楽しみもない~」を連載します。お楽しみにしてください。

その時同じ町内に住む学生が・・・

2015-01-22 20:29:53 | 小説
その時同じ町内に住む学生が一人、ラジオの曲を流しながら背後にきた、英次の声を傍若無人に断ち切って行く、黒ずむ家々、梢、星空に圧迫されそうな雰囲気を、その曲は壊して行く。木の葉の匂いが鼻についている。
「わかったからに。もういわなくていい。明日からは三人で仲よく暮らせたら私はそれで満足なんだよ、英次よ」
学生の曲が住宅地のまっただ中にどんどん沈み行く。
「はい」
「英次と語りあうのは何より楽しみだな。明日は」
と雄吉の手が伸び、帰ろうかと息子の肩に触れる。

(つづく)