■不祥事とガバナンス改革のいたちごっこ
企業の不祥事とコーポレートガバナンス改革は、
久しくいたちごっこを続けてきた。
21世紀初頭、取締役17人のうち社外取締役が15人を占めた
巨大エネルギー企業エンロンの巨額の不正経理問題は、
一大スキャンダルとなった。
日本では企業内不正の防止を目的としたJ-SOX法が2008年に導入された後、
大王製紙、オリンパスなどの不祥事が明らかになった。
ごく最近でも、ガバナンス先進企業と目されていた
東芝の巨額の不正会計が発覚するなど、企業不祥事が後を絶たないのが現状だ。
会社法やその他法制で内部牽制のための仕組みを義務付けても、
完全にうまく機能する保証はない。
この視点に立ち、新たな枠組みを作る試みが進められている。
2014年2月、英国発祥のスチュワードシップ・コードの日本版が作成され、
投資信託や投資顧問など200を超える機関投資家が採択した。
その基本的な考え方は、機関投資家は対話を通し企業の問題点を改善し、
議決権の行使によって経営に規律を与えるというものだ。
そして、昨年6月に導入されたコーポレートガバナンス・コードによって、
東証1、2部上場企業は2人以上の社外取締役選任、
株主との対話を求められることになった。
コーポレートガバナンス・コードは、義務付けではなく企業に強く推奨し、
社外取締役を置かない場合にはその理由を説明させる。
監督官庁が細かな義務付けをする細目主義ではなく、
具体的な手法を企業にゆだねた原則主義、
「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守せよ、または説明せよ)」
を基本スタンスとする。
機関投資家、企業ともに
いわば大人の対応を求められるようになったわけだが、
特に企業側には少なからず戸惑いがあるようだ。
■「攻めの経営」のための手法となるか
今年4月にかけて注目を集めたセブン&アイホールディングスの人事騒動で、
カリスマ会長による人事案に待ったをかけたのは、
同社が備えた企業統治システムだった。
指名・報酬委員会が絶対的権力者と見られた会長の人事案に不賛同で、
取締役会の決議でも却下。結果、会長は退任を余儀なくされた。
また、燃費データの不正で顧客離れを招いた三菱自動車は、
ライバル企業だった日産自動車の傘下に入った。
三菱東京UFJ銀行、三菱商事、三菱重工業などの三菱グループ主要企業が、
株主からの責任追及を慮り旧来型の救済に動けなかったと推察される。
こうした変化はあるが、社外取締役をとっても、
単に人数合わせだけではうまく機能しない。
経営トップの親しい人物を据えたお仲間クラブでは、
何ら牽制作用は期待できないからだ。
社外取締役には資質、気概が求められるのは言うまでもない。
いかなる仕組みも、
トップ主導の不正をシャットアウトすることはできないからだ。
コーポレートガバナンスは、不祥事対策だけのためにあるわけではなく、
ここ数年「攻めの経営」のための手法としての注目度を高めている。
社外取締役、あるいは株主との対話を
外部からの知恵を取り入れるための機会とするというものだ。
日本の株式市場は企業間の持ち合いや系列など、
海外投資家にとって不透明な要素が少なからず存在した。
しかし、上場企業の株式持ち合い比率はバブル期のピーク50%超から低下し、
直近では15%水準まで低下している。
その一方で、
外国人株主の持ち株比率が5%足らずからすでに30%台に達している。
世界的な潮流を見ると、投資家の理解を得る経営を行い、
株主以外のステークホルダーの利益も考慮した経営を求める傾向が強まっている。
この本は、コーポレートガバナンスを取り巻く動きを、
世界的な視点から示している。
アップルがスティーブ・ジョブズ追放後に危機的状況へと陥った時、
ジョブズの復権に奔走したのが
社外取締役・元デュポンCEOのエドガー・ウーラード氏だった。
その後の同社の快進撃は周知の通りだ。
そ
れからおよそ20年を経たいま。
日本企業のガバナンスへの取り組みが、世界的な尺度で試されようとしている。
.
ジャーナリスト 山口邦夫=文
-プレジデント 7月31日(日)18時15分配信-
コーポレートガバナンスという統制し、監視する仕組みは
今後の企業活動に大きな統治機能をもたらすことになるだろう。
記事のように不祥事などの具体例を示しながら、
その必要性と現状を示し、
世界の潮流とリンクし、
背を向けてはいられない環境になっていることを示唆している。
巨大企業になればなるほどその重要性は増すようだが、
マイナス面もあることを指摘しておきたい。
コーポレートガバナンスが創る潮流は、
あくまで企業活動による利潤の追求にある。
しかし利潤の追求は、得てして企業の自己都合による利己主義に陥りやすい。
社外取締役を実質的に常駐させることや、
機関投資家による対話を通し企業の問題点を改善し、
議決権の行使によって経営に規律を与えることは、
透明性のある取締役による決定環境の醸造や、
「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守せよ、または説明せよ)」
といった株主など関係者の納得のいく経営に役立つが、
企業とはそれだけのためにある訳ではない。
企業は企業理念が存在し、
創設時の初心など、起業の動機が存在する。
起業時に創業者が掲げた理想の実現が
その企業の第一の存在意義だと私は思う。
二つ目の存在意義は、
そこで働く人の生活を保障・支援することにある。
雇用を維持し、社会貢献をする。
それが企業に課せられた使命であり、
国などが支援する所以である。
そういう視点も守りつつ、透明性・コンプライアンスの整った
企業経営が求められていると思う。
このことは企業に限らず、国や自治体にも云えるのではないか?
昨日東京都知事選挙の結果、小池百合子氏が当選したが、
今後の都議会運営が思いやられる。
小池百合子氏に限らず、誰がなっても同じだが、
一部都議会議員の専横による
都政の停滞やよどみを打破することは容易ではない。
都政以外にも、各地方自治体、
国政に於いても同様のことが云える。
特に国に於いては、各省庁の縄張り内での専横。
伏魔殿のような官僚機構の実態を改善し、
風通しの良い行政機関への改善などは、誰も唱えない。
財務省の公表する国の借金の実態など、
一般の国民には知らされていない事項が多すぎる現状に於いて、
やりたい放題の官僚機構に対し、
ガバメント・ガバナンス(政府機関統制・監視)
の必要性が乞われているのではないか?
小中学校のPTAですら、同様の問題を抱える現状を見るにつけ、
人が二人以上集まる所は常にガバナンスを意識し、
人間関係を維持しなければならないのかと、
多少面倒くささも感じるオヤジが一句。
ガバナンス 家庭内でも 取り入れて
お粗末。
企業の不祥事とコーポレートガバナンス改革は、
久しくいたちごっこを続けてきた。
21世紀初頭、取締役17人のうち社外取締役が15人を占めた
巨大エネルギー企業エンロンの巨額の不正経理問題は、
一大スキャンダルとなった。
日本では企業内不正の防止を目的としたJ-SOX法が2008年に導入された後、
大王製紙、オリンパスなどの不祥事が明らかになった。
ごく最近でも、ガバナンス先進企業と目されていた
東芝の巨額の不正会計が発覚するなど、企業不祥事が後を絶たないのが現状だ。
会社法やその他法制で内部牽制のための仕組みを義務付けても、
完全にうまく機能する保証はない。
この視点に立ち、新たな枠組みを作る試みが進められている。
2014年2月、英国発祥のスチュワードシップ・コードの日本版が作成され、
投資信託や投資顧問など200を超える機関投資家が採択した。
その基本的な考え方は、機関投資家は対話を通し企業の問題点を改善し、
議決権の行使によって経営に規律を与えるというものだ。
そして、昨年6月に導入されたコーポレートガバナンス・コードによって、
東証1、2部上場企業は2人以上の社外取締役選任、
株主との対話を求められることになった。
コーポレートガバナンス・コードは、義務付けではなく企業に強く推奨し、
社外取締役を置かない場合にはその理由を説明させる。
監督官庁が細かな義務付けをする細目主義ではなく、
具体的な手法を企業にゆだねた原則主義、
「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守せよ、または説明せよ)」
を基本スタンスとする。
機関投資家、企業ともに
いわば大人の対応を求められるようになったわけだが、
特に企業側には少なからず戸惑いがあるようだ。
■「攻めの経営」のための手法となるか
今年4月にかけて注目を集めたセブン&アイホールディングスの人事騒動で、
カリスマ会長による人事案に待ったをかけたのは、
同社が備えた企業統治システムだった。
指名・報酬委員会が絶対的権力者と見られた会長の人事案に不賛同で、
取締役会の決議でも却下。結果、会長は退任を余儀なくされた。
また、燃費データの不正で顧客離れを招いた三菱自動車は、
ライバル企業だった日産自動車の傘下に入った。
三菱東京UFJ銀行、三菱商事、三菱重工業などの三菱グループ主要企業が、
株主からの責任追及を慮り旧来型の救済に動けなかったと推察される。
こうした変化はあるが、社外取締役をとっても、
単に人数合わせだけではうまく機能しない。
経営トップの親しい人物を据えたお仲間クラブでは、
何ら牽制作用は期待できないからだ。
社外取締役には資質、気概が求められるのは言うまでもない。
いかなる仕組みも、
トップ主導の不正をシャットアウトすることはできないからだ。
コーポレートガバナンスは、不祥事対策だけのためにあるわけではなく、
ここ数年「攻めの経営」のための手法としての注目度を高めている。
社外取締役、あるいは株主との対話を
外部からの知恵を取り入れるための機会とするというものだ。
日本の株式市場は企業間の持ち合いや系列など、
海外投資家にとって不透明な要素が少なからず存在した。
しかし、上場企業の株式持ち合い比率はバブル期のピーク50%超から低下し、
直近では15%水準まで低下している。
その一方で、
外国人株主の持ち株比率が5%足らずからすでに30%台に達している。
世界的な潮流を見ると、投資家の理解を得る経営を行い、
株主以外のステークホルダーの利益も考慮した経営を求める傾向が強まっている。
この本は、コーポレートガバナンスを取り巻く動きを、
世界的な視点から示している。
アップルがスティーブ・ジョブズ追放後に危機的状況へと陥った時、
ジョブズの復権に奔走したのが
社外取締役・元デュポンCEOのエドガー・ウーラード氏だった。
その後の同社の快進撃は周知の通りだ。
そ
れからおよそ20年を経たいま。
日本企業のガバナンスへの取り組みが、世界的な尺度で試されようとしている。
.
ジャーナリスト 山口邦夫=文
-プレジデント 7月31日(日)18時15分配信-
コーポレートガバナンスという統制し、監視する仕組みは
今後の企業活動に大きな統治機能をもたらすことになるだろう。
記事のように不祥事などの具体例を示しながら、
その必要性と現状を示し、
世界の潮流とリンクし、
背を向けてはいられない環境になっていることを示唆している。
巨大企業になればなるほどその重要性は増すようだが、
マイナス面もあることを指摘しておきたい。
コーポレートガバナンスが創る潮流は、
あくまで企業活動による利潤の追求にある。
しかし利潤の追求は、得てして企業の自己都合による利己主義に陥りやすい。
社外取締役を実質的に常駐させることや、
機関投資家による対話を通し企業の問題点を改善し、
議決権の行使によって経営に規律を与えることは、
透明性のある取締役による決定環境の醸造や、
「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守せよ、または説明せよ)」
といった株主など関係者の納得のいく経営に役立つが、
企業とはそれだけのためにある訳ではない。
企業は企業理念が存在し、
創設時の初心など、起業の動機が存在する。
起業時に創業者が掲げた理想の実現が
その企業の第一の存在意義だと私は思う。
二つ目の存在意義は、
そこで働く人の生活を保障・支援することにある。
雇用を維持し、社会貢献をする。
それが企業に課せられた使命であり、
国などが支援する所以である。
そういう視点も守りつつ、透明性・コンプライアンスの整った
企業経営が求められていると思う。
このことは企業に限らず、国や自治体にも云えるのではないか?
昨日東京都知事選挙の結果、小池百合子氏が当選したが、
今後の都議会運営が思いやられる。
小池百合子氏に限らず、誰がなっても同じだが、
一部都議会議員の専横による
都政の停滞やよどみを打破することは容易ではない。
都政以外にも、各地方自治体、
国政に於いても同様のことが云える。
特に国に於いては、各省庁の縄張り内での専横。
伏魔殿のような官僚機構の実態を改善し、
風通しの良い行政機関への改善などは、誰も唱えない。
財務省の公表する国の借金の実態など、
一般の国民には知らされていない事項が多すぎる現状に於いて、
やりたい放題の官僚機構に対し、
ガバメント・ガバナンス(政府機関統制・監視)
の必要性が乞われているのではないか?
小中学校のPTAですら、同様の問題を抱える現状を見るにつけ、
人が二人以上集まる所は常にガバナンスを意識し、
人間関係を維持しなければならないのかと、
多少面倒くささも感じるオヤジが一句。
ガバナンス 家庭内でも 取り入れて
お粗末。