打点が低いほうが有利なスパイクの話（その２・・・ゴールが床にあるから打点が低くても勝負できる）

はじめに
「身長が高く、打点の高い人が有利そうに見えるバレーボールだけど、実はそうとばかりは言えないぞ」と中学生に持ちかけたことがあるのです。
子供たちは「また、変な話を始めた」「背の低い選手を部活から辞めさせないために、いい加減なこと言いよる」等と疑いますが、この話、結構喜びます。

通常のスパイク
打点の低い黒シャツの選手と、打点の高い赤シャツの選手がスパイクしています。
ネットにかからないようにスパイクするには、黒シャツ選手の場合、ちょっとふんわりと打たないといけません。
赤シャツ選手の場合、鋭角に思い切ってスパイクできます。

これを見ると、どう考えても打点の高いアタッカーのほうが有利な気がします。
しかし、ちょっと観点を変えると、それが逆転するというお話です。

さて、打点の低いアタッカーが有利な場合があるっていったいどういう場合でしょうか。
ちょっと考えてみてください。

っということで昨日記事アップいたしました。本日その種明かしのお話です。


ノーブロックなら打点が低いほうが有利
さて、その種明かしなんですけど、下図を見て下さい。
黒シャツと同じ打点の選手が青シャツ位置でスパイクしています。

このスパイクは、赤シャツの選手のスパイクの弾道上でスパイクしています。
この位置でなら打点が低くてもスパイクできるのです。
しかも、そのスパイクの弾道は赤シャツ選手のスパイクの弾道より短いのです。
っということは床に落ちるまでの距離も時間も短く、それだけ有効なスパイクが打てるということになります。
これは、もちろん、ブロックがなければという条件付きですよね。
また、下図のとおり、赤シャツの選手がネット際でスパイクすれば、もっと鋭角に厳しいスパイクが打てるという話にもなります。

中学生は理屈だけは一流ですからね。私がこの話をすると
「はい、はい、はい、はい、意見があります。赤シャツ選手もネット際で打てば青シャツ選手よりも有利なスパイクを打てるでしょ。それにブロックが来たら青シャツのスパイクはブロックされますけど、それはどうなるんですか？」と口を尖らせて意義を唱えます。
そこで、皆に私は訴えるわけですね。
「なかなかいいところに気がつくな。さすがだ。そこでだな、いいか、相手チームにはできるだけネット際で打たせないようにする。サーブで崩す、チャンスボールを返さない、そんな風にして相手のアタッカーにはいいトスを打たせないようにする。その上で俺たちのチームは、しっかりとレシーブやパスを練習し、セッターの力で巧みなコンビネーションを使って、青シャツ位置からノ―ブロックに近い状態でスパイクできるようなトスを上げて行くわけだ。それができれば、背が低くても決して大型チームには負けないという話だよ。」
と言って聞かせます。

スパイクはアタッカーが一人で打つのではなく、皆でボールをつないで、そして作り上げるのだという意識を持たせるのですね。実際、スパイクというのはそういうものなんですね。
これを言いますと、皆、レシーブやトス、サーブにも一生懸命取り組むようになります。

おわりに
実は、この背が低くてもバレーボールでは勝負になるという話は、私の案ではなく、かの有名なミュンヘンオリンピック全日本男子バレーの監督松平康隆氏が言っているのですね。
松平氏は
「日本のバスケットボールがなぜ大型の外国選手に太刀打ちできないかというと、それは、ゴールが高いところにあるからなんですよ。高くするなら外国人も届かないような１０ｍくらい、もっと高い位置にゴールを持って行くと日本人でも勝負できる。それに対してバレーボールは最終的に床がゴールなんです。床にボールが着いたところでポイントが入る。だから、小さな日本人が外国の大型選手とでもまだ勝負ができるわけです。」
私は、この話を聞いて、さすがだ・・・・と思った次第です。
これは、その後のバレーの戦術を考える上で、私に大きな勇気を与えてくれた話でした。
本日、ここまで、明日に続きます。

 

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