とある病院の入口で、お婆さんは立っていた。
白髪混じりで少しウェーブのある髪を束ね、
小さなショルダーバッグを肩からさげ、
地味な花柄のブラウスに紺のズボンを履いていた。
私がお婆さんの前を通ると、丁寧な柔らかい口調でこう質問された。
「○○神社の太鼓祭りに行かれるんですか?」
「いいえ、姪っ子の診察が終わったので、帰るところなんですよ。」と答えると
「それは失礼しました。お大事になさってください。」
これまた丁寧に返答された。
私がお婆さんの訛りのない綺麗な日本語に少し驚いていると、
少し前を姪っ子と一緒に歩いていた母から、
そのお婆さんが痴呆症であることを知らされた。
私もそうだったように、あのお婆さんが痴呆症だと
気がつく人が何人いるだろう?
お婆さんは今日も、あの病院の入口で立っている。
遠い記憶の中の誰かを探して…。
白髪混じりで少しウェーブのある髪を束ね、
小さなショルダーバッグを肩からさげ、
地味な花柄のブラウスに紺のズボンを履いていた。
私がお婆さんの前を通ると、丁寧な柔らかい口調でこう質問された。
「○○神社の太鼓祭りに行かれるんですか?」
「いいえ、姪っ子の診察が終わったので、帰るところなんですよ。」と答えると
「それは失礼しました。お大事になさってください。」
これまた丁寧に返答された。
私がお婆さんの訛りのない綺麗な日本語に少し驚いていると、
少し前を姪っ子と一緒に歩いていた母から、
そのお婆さんが痴呆症であることを知らされた。
私もそうだったように、あのお婆さんが痴呆症だと
気がつく人が何人いるだろう?
お婆さんは今日も、あの病院の入口で立っている。
遠い記憶の中の誰かを探して…。