「唯一無二」の門仲天井ホール
門仲天井ホールを知る人で、それを「唯一無二」の場所だと評する意見は多いと思います。
が、唯一無二である理由は、一人ひとり違っているかもしれません。
ふと思いつくだけでも、空間のユニークさ、柔軟な運営、多種多様なプログラム、等々が挙げられます。
しかし、私は唯一無二であることの根本は、労働組合が所有・運営するスペースであるということだと思います。
言い換えると、そこを所有・運営するのは、行政や為政者でもなく、企業や資本家でもなく、アーティストでもなく、個人でもない。
汗を流して「働く人びと」の自治によって所有され、運営されている。
「働く人びと」自身が、文化や芸術が生活に必要不可欠だという共通認識のもとに生まれた場所なのです。
このことは、現在の日本社会において、とても重要な意味を持っています。
文化や芸術は、誰の手で担われるのか。誰のために、存在するのか。
もちろんその回答は一つではないけれども、
門仲天井ホールに現れている回答は、東京の中で、いや、もしかしたら日本の中で、唯一無二かもしれません。
そういう意味において「オルタナティブスペース」という言い方がこれほど当てはまる場所を、私は他に知りません。
また、そこでは大衆的なものから芸術的なもの、
子どもの発表会から超一流のアーティストのもの、ローカルなものからグローバルなもの、
まさに多種多様なプログラムが展開されていて、
その一つひとつがユニークです。
そこに集まる人びとの年齢も、地域も、職業も、本当に多様性に富んでいます。
そういう意味において「パブリックスペース」という言い方がこれほど当てはまる場所を、私は他に知りません。
その、オルタナティブでパブリックな「唯一無二」の場所が、
労働組合によって所有・運営してきたという事実を、
労働組合そのものが大いに誇りに感じるべきだと思うし、
私は、そのことを大いに讃えたいと思います。
そして、門仲天井ホールが今後も存続していくことは、
働く人びとが自治を行うことの「生命線」だと思います。
大澤寅雄:研究者(文化政策/アーツマネージメント) . . . 本文を読む