4月半ばの、よく晴れた日、取材カメラがやってきた。
この日の朝一番に東京から飛んできたとのこと
遠路はるばる、ようこそいらっしゃいました。
カメラマンのカオルさんは、番組のディレクターでもある。
取材、撮影、荷物持ち…と、一人で何役もこなすのは、経費削減のあおりかな?
今はどの業界も、大変なのね…。
前日まで、ちょっとピッチを上げてお掃除したが、
如何せん、付け焼刃的な取り繕いなので、行き届かないことだらけだが、
ここまできて見栄を張っても仕方が無い。
もう全部、包み隠さず、さらけ出そうと…覚悟を決めた。
ひでこ先生がやってきて、呼び鈴を鳴らす。
ちょうど水仙とヒヤシンスと忘れな草とクリスマスローズが花盛りで、
玄関へのアプローチが春爛漫な感じだったのが、せめてもの救いだ。
「いらっしゃいませ~~~」
「久しぶりね」
…的な絵を撮ってから、室内へ。
ひでこ先生が我が家を訪問するのは、実は初めてのこと。
現状をご覧になって、どう思われたかな?
え…、まだこれだけ?…とがっかりしていなければいいけど。
2人で会話をしている間も、カメラは回っている。
…と、突然、ひでこ先生が「ガラスクリーナー、ある?」。
えっ?クリーナーですか、はい。
すると、やおら立ち上がって、食器棚のガラスを磨き始めた。
「こういうのって、そこに暮らしている人には、なかなか見えないものなのよ。」
「ガラスが曇っていると、印象が暗くなるから。」
ひでこ先生がマメなのは知ってるけど、
尊敬してやまない師匠に、ガラス拭きをさせる私って、どうよ?
でも先生は楽しそうに、軽快にガラスを磨く。
「この中のモノ、全部使ってるの?」
「いいえ…、普段使う食器はキッチンにあるので、ここはほとんど飾りです。」
「ワイングラスもいっぱいあるけど、よく飲むの?」
「いいえ…、最近は滅多に。
ペアグラスが4種類もあって、断捨離対象だなと常々思っていますが、
どれも綺麗なので、捨てられません。」
「うん。じゃ、捨てなくてもいいよ。
その代わり、中が見えない下段の棚に仕舞おう。」
「捨てないんですか?」
「そう、だって大事なんでしょ?
この食器棚は雰囲気があって、とても素敵だから、
これ自体を1枚の絵画のようにディスプレーしましょう。」
つまり、見える収納は5割の量的ルールは守っているけれど、
そこから一歩進めて、ただ雑然と入れられているモノの配置を、美に焦点を当てて考えようということ。
そう言われてみれば、いろいろ入っている。
空っぽの段があるかと思えば、薬や日焼け止めの類が丸見えになっていたり、
和洋も用途も入り乱れ、ガンダムのフィギュアまである。
ひでこ先生は、中身をさらに間引いて、どんどん並べ替えていく。
「私、こういうこと、大好きなのよね~~」
確かに、すごく楽しそうですね、先生。
かくて、雑然を絵に描いたような食器棚は、
ひでこ先生のゴッドハンドにより、一幅の絵画に変身するのだった。(つづく)
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