夫の実家へお手伝いに行った。
今日は、義母がいる居間のラグを、夏用に換えて欲しいとのこと。
ラグを取り換える…。
それ自体はとても簡単なんだけど、
そのためには、冬用ラグの上にある諸々のモノを全部どかさなければならない。
…けっこうな重労働かも。
ため息が出そうになるのを、慌てて飲み込んだ
義母はただでさえ具合が悪いのに、一向に良くならないことで、かなり凹んでいる。
私たちが、病状のことを、何か隠しているんじゃないか…と勘ぐるほどに。
何も隠し事はしていない。
だけど確かにこんな雑然とした部屋にいたら、
悪いほうへと思考が流れるのも無理はない。
よし!では、お掃除しましょう
風通しをよくして、動けなくても、せめて気持ちが和むように…。
普段から片づけも掃除もあまりされていない部屋。
モノと埃がいっぱいだ。
古い雑誌、古い本、古いブラシ、古い座布団、古いマット。
本人が横にいるので、「これ、いりますか?」といちいち尋ねる。
ヨガの教本。
「腰の痛みにいいポーズが載っとるから」
歩くのも難儀しているのに、ヨガはやめた方がいいのでは?
黄ばんだ新聞の切り抜き。
「いいことが書いてあるから、また読むこともある。」
情報も古すぎると、逆に毒になるかも。
ツボ押しの本。
「痛い時、これを見て、ツボを押さんなんから。」
1989年発行の雑誌…、もう何年も開いていない感じ。
それにツボの本ばかり、3冊もいらないでしょう?
大量の折り紙。
「ひ孫が来たときに必要。」
ひ孫は一人、東京在住。そんなに頻繁に遊びには来れない。
でかいマッサージチェア。
「お見舞いの人が来た時、座ってもらう。」
どうか他人のことより、自分の快適を優先して!
主治医にもマッサージはダメと言われているのだから、
場所塞ぎのチェアはここにはいらないのでは?
何十冊もの野菜作りに関する書物。
畑仕事が生きがいだったのは、よく知っている。
でも…、可哀想だけど、これからは、今までのように畑にはいけない
いくらなんでも、こんなに大量の本は必要ないと思う。
開封済みの野菜の種。
発芽保証期間は3年前。
「紫蘇は丈夫やから、古い種でも生きとる。」
本当ですか~~?
一事が万事この調子で、疲れるったらありゃしない。
お義母さんは、捨てたくない人なんだなぁ…。
だけどひでこ先生は、戦時中を生き抜いてきた人たちの心境は、察してあげなければいけない…と仰っていた。
モノがない時代、食べる物も明日の保証も何もない。
乏しい中、ひもじい思いに耐えながら、気力で生きてきた。
気合や根性だけではどうにもならない窮乏を、無理やり埋めてきたのだ。
計り知れないトラウマを負っている。
この部屋が心身を蝕んでいることは明らかだが、
「すっきりさせなきゃ、ダメですよ!」と上から目線で言ってはいけない。
じれったい…とは思ったけれど、根気よく確認を取りながら、
OKが出たモノだけ、気が変わらないうちに…と大急ぎでゴミ袋に詰める。
冬用ラグを引っぺがし、丹念に掃除機をかけ、
ついでにソファもマッサージチェアも移動させて、
裏にこんもり積もった埃を取り除く。
家具の裏とはいえ、こんなに大量の埃と暮らしていたら、良くなるものも良くならない。
夫と2人、取り憑かれたかのように掃除をしていて、ふと気づいたら…、
な、なんと
義母が杖をつきながら寄ってきて、古い手紙や書類を自ら捨て始めた。
それも今までの抵抗は何だったの?…と思わせるほどの潔さで、ズバズバ断捨離している。
籐のラグを敷いて、座卓を元に戻したら、夏用の部屋が整った。
本日の戦利品は、ゴミ袋3袋、ダンボール2箱の不要物。
2時間の掃除で、居間はびっくりするくらい片づいて、気持ちの良い空間になった。
帰り際、「また来るね」と振り向いたら、義母が泣きだした。
心細かったんだな、きっと。
体が思うように動かなくて、先のことを考えると、いろいろと不安で…。
物が堆積して流れが淀んだ部屋で、山のような不安を抱え、背中を丸めて座っているしかなかった。
病気のことは、主治医に任せるしかないけれど、
部屋がきれいになったら、気持ちも晴れるし、気力も快復するはず。
流れがよみがえれば、きっと何かいいことも流れ込んでくるよ。
…そういう思いも込めて、拭き清めた座卓の上に、「断捨離入門」をそっと置いてきた。
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