野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

兵庫県のタンポポの秘密

2023-03-14 | 兵庫の自然

兵庫県の在来タンポポ

田んぼの畦や山のへりではタンポポが咲き始めている。早いのがセイヨウタンポポ、寒い冬のなかでもみられた。

そのなかに、白い色のタンポポも、

今回はタンポポ調査から兵庫のタンポポのことについて

 

北のヤマザトタンポポ、南のカンサイタンポポ

タンポポ調査が2015年西日本で行われました。兵庫県では人と自然の博物館が兵庫県のタンポポ調査を集約しました。大阪で1975年にはじまったタンポポ調査は全国各地で広がりました。しかし、90年代に入って在来種と外来種のタンポポの間に雑種が形成されていることがわかりタンポポ調査の意義について疑問が出されたこともあり,あまり行われなくなりました。

タンポポ調査を西日本では継続的に行われ、2014~2015年に行われた調査報告があます。

 

タンポポの花のつくりからカンサイタンポポとセイヨウタンポポを見分ける。

 

タンポポを見分けるポイントになるのは、花の色とこの頭花の下の部分、セイヨウタンポポでは緑色の反り返った部分です。これを「総苞;そうほう」といいます。 

カンサイタンポポではこの部分は反り返らず、頭花に着いています

 

兵庫県にはもう一種類、ヤマザトタンポポがあります。

但馬•丹後•丹波の植物を調べた荒木英一氏が豊岡市出石町東 床尾山で採集した標本に基づいて、京都大学の北村四郎先生が1933 (昭和 8)年に新種として発表したものです。ヤマザトタンポポのタイプ標本(名前をつけた時の証拠(しょうこ)となる標本のこと)は、高知県の牧野(まきの)植物園に保管されており、そのラベルには採集地が兵庫県出石郡東床尾(とこのお)山と書かれています。

ヤマザトタンポポは花弁は黄色で総苞外片が上を向いていて、カンサイタンポポとまち がえられることが多いのですが、頭花が大きいこと、花の色がややうすいこと、そして花粉の形が違うので見分けられます。ヤマザトタンポポは北陸から山陰にかけての範囲に広く分布しており、岡山県北部・広島県東部にもある程度の分布があります。

ひとはく新聞より

この調査をまとめた鈴木 武(自然環境再生研究部)氏は次のような結論を発表しています。

「兵庫県のタンポポ調査データから、驚くべきことがわかってきました。 兵庫県の南部ではごく普通のカンサイタンポポは県北部の但馬にはほとんど なく、逆にヤマザトタンボポは但馬にはわリと分布していることがわかリました(図1)。ヤマザトタンポポは兵庫県RDBでは最も高いAランクでした。

が、この結果を受けて2009年の改訂でCランクとなりました。

図1の①の太線は但馬国の境界です。これを境に、カンサイタンポポは 南に、ヤマザトタンポポは北にほぼ分かれています。このあたりは中国山地ですので、平地に生えるタンポポは山を越えられないのかもしれません。

「タンポポ調査•西日本2010」により、ヤマザトタンポポは日本海側の 山陰地方に広く分布しておリ、山陰を象徴する植物といってよさそうで す。たかがタンポポですがなかなか奥が深いものです。

鈴木武(自然•環境再生研究部)」

参考文献 兵庫県および京都府北西部の在来タンポポの分布(鈴木 武, 菅村 定昌, 武田 義明)


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